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2008.06.29

香港 (2-6)新界LRT


【動画】元朗総站駅ホームに入線する610系統の電車
[320×240, 30fps, WMV, 707KB, 13秒]

開業当初からの系統である、610系統の電車で屯門碼頭へ向かう。車内は1+2列配置でFRP製の固定クロスシートが並び、ごく一部を除いて進行方向を向いている。何を隠そう、この車両の運転台は前にしか付いておらず、終端駅はすべてループ線になっているという小型車ならではのレイアウト。また、数駅に跨る大規模なループ線も積極的に路線に採り入れられている。ごく少数の編成以外はオーストラリア製の電車ということで、車両はどことなく大らかというか、大陸的な雰囲気を醸し出しているようにも思える。

*路線図はWikipediaの軽鉄のページに掲載されているものが見易いです。私も印刷して持って行きました。

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《車内のようす。手前が進行方向》

進行方向左側の一人掛け席に座ると、程なく出発時刻を迎える。薄暗い駅構内を抜け出ると、先ほど少し歩いた青山公路の真ん中へ。繁華街を横目に走り、すぐに最初の駅・大棠路に停車する。街の中心だけあってターミナルの元朗総站よりも遥かに多数の乗車があり、単行(=1両編成)の電車は立ち客も一杯の大盛況となった。


【動画】大棠路に到着。ホームの高さにご注目
[320×240, 30fps, WMV, 1.13MB, 24秒]

やがて繁華街も尽き、次第に車窓は郊外の風景へ。線路も併用軌道から専用軌道へと変わる。実は軽鉄が道路を走る区間はわずかで、路面電車という言い方は今一つしっくりとこない。軽鉄を英訳するとLight Rail(というよりLight Railをそのまま中国語に訳したのでしょう)なので、香港島の路面電車と区別するという意味でもライトレール、若しくはLRTと呼ぶのが適当だろうか。なるほど、郊外へ出るとすかさず本領発揮とばかりに高速で走り出す辺り、欧州でいうところのLRTの概念に則っている。

幹線道路に並行しながら、工場や住宅、商店といった低層の建物が立ち並ぶ、緑はわりとあるもののごみごみとした市街地の中を南西へ。日本の地方の郊外のようでもあり、しかし看板の文字は漢字だらけでここはやっぱり中国である。


【動画】郊外区間を走る
[320×240, 30fps, WMV, 2.05MB, 45秒]

車窓に真新しい高層住宅の姿が増え始め、やがて現代的な都市景観の懐へ収まると、西鉄との接続駅でもある兆康に到着。ここから先は高層マンション群のふもとを小刻みなカーブを繰り返しながら縫うように進み、人口密度を反映するかのように駅の間隔も郊外区間とは段違いに狭くなる。広範囲から乗客をかき集めるのが西鉄に代表される大量輸送機関の駅だとすれば、軽鉄は団地やマンションの真ん中へ入り込んでこまめに乗客を集めるタイプ。バスの小回りの良さと鉄道の定時性といった長所を併せ持つ、極めてドアツードアに近い「人にやさしい」交通機関である。こういう手法もあるのだなぁと、羨望を覚えつつ感心していた。

そして比較的路線網がシンプルな兆康以北とは対照的に、分岐が非常に多いのもニュータウンエリアの特徴。平面交差のジャンクションでは小型車両の特性を生かして、車輪を軋ませながら急曲線で電車が離合し、まるで子供の頃に遊んだプラレールのよう。趣味的にもシステム的にも大変魅力のある路線である。


【動画】ジャンクションを通過
[320×240, 30fps, WMV, 1.45MB, 31秒]

ところで軽鉄には駅でも車内でも改札はない、と書いたが、自己申告に任せていては無賃乗車が横行するのは火を見るより明らかなので、時折抜き打ちの検札というのがある。鳴琴という駅で、KCRのロゴが入った濃紺のジャンパーに身を包んだ職員が数人乗り込み、扉が閉まると同時に手分けして乗客全員の検札を開始。ほぼ全員がオクトパスカードを利用しているようで、職員が携帯している端末に財布ごとタッチしている。日常的な利用者にとっては定例行事とばかりに滞りなく進み、いよいよ私の番。そしてポンとタッチした途端に不穏に響き渡る、「ピーッ」というエラー音・・・

頭の中が?マークでいっぱいになりながら、未練がましく何度もタッチしてみるが結果は同じ。とりあえず残った乗客の検札を終わらせた後、私を担当した職員(たぶん20代の男性)が戻ってきて広東語でなにか言われる。ポカーンとしていると外国人と見たかすぐに英語に切り替わり、カードをタッチしながら端末の液晶画面を指し示して、「ほら、入場記録がないんですよ」と。続いて「じゃあ、我々のシステムを説明しますので、次の駅で一緒に降りてもらえますか?」ということで、鳴琴の次の青雲という駅で彼と一緒に下車する。

青雲駅のホームにあったのは、元朗で見たのと全く同じ、オレンジと緑のカバーがかかった入場機と出場機。「乗るときはこの(オレンジの)機械に、そして降りるときにはこの(緑の)機械にタッチするんですよ」と懇切丁寧にレクチャーしてくれるが、私にとっては既知の事実。説明も上の空で、「おっかしいなー、確かに乗る前にタッチしたはずなのに・・・」と途方に暮れている私の視界に入ったのは、オレンジでも緑でもない青の機械。そしてそれに書かれていた文字を見た瞬間、目の前の霧が晴れるように(オーバー?)謎が解けた。

「査閲」。

これだ。

オクトパスの残額チェック用の機械にタッチしていたのである。回想してみると、駅のホームに到着後、まず「出站(出場用)」の機械が目に入り、「ふむふむ、出るときはこの色の機械を使うのだな」と脳に刻み込まれたその次、何故か思考回路は「じゃあ、入るほうはもう一つの色の機械だ」という結論を勝手に下し、こともあろうにホーム上に一台しかない「青色」の機械へ脇目も振らず(それもロクに確かめもせず)突進したというわけ。 ・・・・・・しょうもなーーー!!!

検札員の彼に「理解したよ」と答えると、「そうか、そうか」と満足気。いや、あなたの考えてる意味ではないのだけどね、と心の中で密かにツッコミを入れる。

しかし、「こんなアホな青年がおりましたとさ。おしまい」では終わらない。過失とはいえ、結果的に不正乗車になってしまったのだ。こういう場合、ヨーロッパでは有無を言わさずペナルティとして通常運賃の何十倍もの罰金を科せられてしまうわけで、信用乗車方式を採用している以上、ここも例外ではないだろう。「こんな理由で罰金取られるのは情けないなぁ」と、唯々我が身を呪うばかりである。

しかし穏やかな表情の彼は、意に反して私のパスポート番号を台帳に書き留めただけで、「僕はまだ日本に行った事ないんだ」「どこへ行くの? ん?屯門碼頭? なら今来た電車だよ」「じゃあ気をつけてね。バイバーイ」と無罪放免。どうも彼にとって私は事情も分からず迷い込んで来た外国人と認識されていたようで(本当は電車に乗る事自体が目的の、バリバリの鉄道愛好者なんだけど)、便宜を図ってくれたのか温情かはいざ知らず、少なくともヨーロッパのように厳格な制度の下で運用されているわけではないらしい。安堵の溜息を吐きつつ再び電車の座席に着くと、頭の中に某線香のCMソングが流れ出した。 ♪青雲、それは、ふれあいの心~

・・・とまあ、これが“ハプニング”の一部始終なのだが、その場では流石にハラハラしたものの、後になってみれば笑い話。しかしこれを読んでいるアナタが同じ状況でお咎めなしになるとは限らないので、不正乗車はもちろんのこと、ゆめゆめこんなミスは犯されませぬよう・・・

一度想定外の途中下車を余儀なくされたが、11時56分、屯門碼頭(Ferry Pier)に到着。ここも元朗と同様にビルの1階に設置されたターミナル駅で、構内をグルグルまわりながらホームに入って行く。ここには駅名の通り香港各地への旅客船が発着しており、中環への高速船もあるそうだ(廃止になったという話も・・・)。

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《屯門碼頭駅にて。乗り継いだ電車はこれではありません》

屯門碼頭からは507系統で屯門へ。


【動画】屯門碼頭発車。線路の分岐ではウインカーを点滅させます
[320×240, 30fps, WMV, 844KB, 18秒]

ここからは屯門の中心市街地とおぼしき場所を進み、沿線の風景も賑やかだ。この車中でなんと2度目の検札に遭遇するが、青雲で入場記録をいれてもらっているので無事にパス。端末を差し出したのは神経質そうな若い女性で、もしこれが最初の検札だったら・・・と思うとゾッとする。

屯門の中心、その名も「市中心」駅を出ると電車は高架に上がり、間もなく屯門(ツェンムン/Tuen Mun)に到着する。西鉄線の始発駅でもあり、私の試乗はここまで。軽鉄はKCRが運営しており、西鉄線と乗り継ぐと軽鉄の運賃は無料になるそうだ。軽鉄の乗車区間の両端が西鉄の乗り継ぎ駅の場合はどうなるのかとか、そもそも元朗総站→屯門碼頭→屯門という“大回り乗車”は認められているのかといった疑問はあれど(ちなみに軽鉄の運賃はゾーン制。今回のコースでは5区から順に1区へ、その後2区に戻る形に)、取り敢えず今回は深く考えないでおこう。


【動画】屯門駅に到着する電車。車椅子での乗車もラクラク
[320×240, 30fps, WMV, 1.00MB, 21秒]

たった一時間程度の試乗だったが、路面区間から郊外電車、そしてニュータウンの気軽な足へと様々な表情を見せてくれ、一粒で二度も三度も美味しい変化に富んだ路線だった。香港を訪れたならば是非試乗をお勧めしたいし、私も次回はもう少し時間を割いて全線制覇に挑んでみたいものである。

(2006.12.13)


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