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2008.12.09

フランス (4-11)TGV東ヨーロッパ線(パリ~ボードルクールJCT)

TGV2443列車はパリ東駅のホームを離れ、広大な駅構内をゆらゆらと進んでいく。すぐに左手には車両基地が広がり、TGVと相互乗り入れを実施しているドイツ鉄道(DB)の高速列車・ICE3(ICEシリーズの最新鋭車両)の姿が窓をよぎった。ICEには後日何度か乗車することになるのだが、純白の流麗なボディラインは本拠地ドイツ国内はもとより、ここパリでもSNCFの車両群のなかで一際目を引く強い存在感を放っている。



プロヴァン行きのTransilienは駅構内を抜け出た途端に脱兎の勢いで駆け出し始めたが、かたやTGVは陸の王者の貫禄か、「せかせかとした走りっぷりはご免」とでも言いたげな鷹揚としたペースで少しずつ、しかし確実に高速域へ向けてスピードを上げていく。高速新線の入り口までは在来線を進んで行くが、気付けば速度は200km/h台に達しているようで、並行しているRER-E線(2日前に乗った路線とは別系統)の列車を瞬時に追い越し、プラットホームが目にも留まらぬ速さで次々とすっ飛んでいく。

出発からおよそ10分。左手を伴走していたRERの線路が足元をくぐり、築堤を駆け上がるといよいよ高速新線へ。ここまでの間に充分スピードが上がっていた為、高速新線に入ったからといって劇的な速度の変化は感じられなかったのだが、新線に入るやいなや都市郊外の風景を形づくっていた人家がぱったりと途絶え、車窓は伸びやかな平原へと一変してしまった。

東ヨーロッパ線の営業最高速度は320km/h。これは2008年4月現在、鉄車輪・鉄軌道方式(つまりリニアモーターカーを除いて)の鉄道としては世界最速を誇っている。ドイツの高速新線の営業最高速度は現状300km/hに留まっているため、330km/h走行も可能なICE3が持てる性能をより発揮するのは乗り入れ先のフランスというわけだ。ちなみに開通直前となる2007年4月に試験車両により574.8km/hという鉄車輪・鉄軌道方式での世界最高速記録を樹立したのも、ここ東ヨーロッパ線上での出来事。

TGVは機関車と客車の組み合わせなので、客室内の静粛性は客車列車と同等なのだが、低・中速域はともかく300km/h超の高速域に入るとさすがに「ゴーッ」という走行音が車内に響いてくる。日本の新幹線と比較しても、静粛性に関しては300km/h運転を実施している500系『のぞみ』の付随車とどっこいどっこいといったところだろうか。むろん、あくまで高次元の勝負であることは言うに及ばずである。

むしろ歴然とした差異を実感するのがシートまわり。TGVの車両幅はJRの在来線よりも若干狭く、1等車は横1+2配置、2等車は2+2配置となっている。1等車の座席は座面チルト機構付きの電動リクライニングシートで、横幅こそ広々として充分なのだが、反面前後間隔(シートピッチ)はJR在来線特急の普通車並みといったところ。フットレストも棒状の貧弱なもので、座席自体もアッパークラスらしい重厚感には今一つ欠ける印象を持った。もっとも、軽快感を演出するという意向ならばそれはそれで構わないのだが・・・。2等車の方もちらりと覗いてみたが、こちらはもう東海道新幹線の普通車とは比べるのが気の毒なほどに簡素な座席で、狭いシートピッチに加え腰の収まりもよろしくない。確かに内装にはデザイン先進国らしく見るべきものはあるが、乗客が大部分の時間を接する座席がこのザマではいただけない。幾らビジネスライクでうるおいが足りないと言われようと、客観的に見ても移動空間の快適さとしては日本の新幹線の方が遥かに優れている。序列をつけるとTGV2等車<新幹線普通車<TGV1等車<新幹線グリーン車といったところか。一方割引運賃が充実し、多様なニーズに応えているのはTGVで、ハード面では新幹線、ソフト面ではTGVに軍配を上げたいところだ。コストパフォーマンスの面ではもうTGVの圧勝である。


《1等車の座席に着席中の足元を撮影》

車窓に目を転じると、見渡す限りにうねうねと緩やかな起伏を繰り返す緑と赤茶色の大地が続き、もし北海道の美瑛や富良野あたりに新幹線を引いたとしたらこんな景色なんだろうな、と想像せずにはいられない。そんな起伏のある土地を線路は一直線に貫いていくわけで、高台から平原を見下ろしたかと思えば次の瞬間切り通しの間に突入し、また高い場所へ・・・というリズムを短時間のうちにひたすら繰り返す、という感じである。悪く言えばやや単調な風景で、線路沿いに人工物がほとんど存在しない為に320km/hというスピードもあまり実感には至らないのが残念といえば残念か。

高速新線はロレーヌ地方の中心都市・メスに程近いボードルクールの郊外まで約300km続いているが、途中で高速新線を抜けて在来線へ入っていく系統もあり、高速走行を維持したままで分岐が可能な、伸び伸びとしたレイアウトのジャンクションが高速新線上に数箇所設置されている。パリから最も近いランスへ向かう系統の所要時間はたったの45分。在来線時代は1時間半掛かっていたそうで、在来線との間で自由自在に直通運転が可能なTGVの波及効果は絶大である。

次回も東へ向けてひたすら疾走を続けるTGVの車内から。


【動画】TGV東ヨーロッパ線・動画クリップまとめ

(2008.04.07)


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