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2009.02.10

ドイツ (2-7)FURICO to FURICO

続いて乗車するロットヴァイル行きのREは、(確か)この駅に着いた時と同じ3番ホームからの発車となる。駅舎からは地下道を通らなくてはならないが、田舎の駅なので流石にエスカレーターは設置されていないものの、階段には大きな荷物を上げ下ろしするのに便利なベルトコンベヤーが用意されている。

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ご覧のように単線なので、下でベルトに荷物をドンと乗せると上方向に、上で乗せると下方向へ動くようになっている。ただ、折角の設備なのに積極的に活用している場面には終ぞお目に掛かれず(シュトゥットガルトのような大駅でさえ!)、どの駅へ行っても私の専用機のような状態だった。

RE22306 Donaueschingen(14:10)→Rottweil(14:44)

定刻通りにやって来た列車は、前の列車と同型の振り子ディーゼルカー。ドナウエッシンゲンまでの区間はそれなりに賑わっていたような印象があるが、この列車からも前の列車と同様にかなりの下車があり、乗り込んだ車内はものの見事にもぬけの殻となっていた。州都シュトゥットガルト方面へ向かう列車なのでもっと多くの利用があっても良いはずなのだが、ここドナウエッシンゲンは行政管区上はフライブルクに属しており、そちらとの繋がりの方が深いのかもしれない。

ドナウエッシンゲンを出発した列車は、次駅のフィリンゲンまではシュヴァルツヴァルト鉄道をオッフェンブルク方面へ進んでいく。山岳路線ながらもさすがに幹線らしく、複線電化の立派な線路。当方の列車もようやく快速らしくなり、小駅をひゅん、ひゅんと次々と通過して行き、胸のすく走りぶりを披露してくれる。

次の停車駅・フィリンゲン(Villingen)で少々長めの停車時間を取ったかと思うと、再出発した列車は逆向きに走り出した。線路は単線に戻ったものの快速運転は相も変わらず、高原に広がる緑の草原をひた走る列車。すっかり山岳路線の雰囲気は無くなってしまい、ご自慢の振り子機構も持て余し気味なのが残念といえば残念か。

14時44分、ロットヴァイル(Rottweil)着。ホーム向かい側から4分の接続となるICEで、一気にシュトゥットガルトを目指す。

ICE186 Rottweil(14:48)→Stuttgart Hbf(15:56)


《ロットヴァイル駅ホームに入線するICE-T》

定刻通りに滑り込んできたICE186列車は1時間半前にスイスのチューリッヒを出発し、シャフハウゼン、ドイツに入ってジンゲン、トゥットリンゲンと駆け抜けてきた。シャフハウゼンは8年前のスイス旅行の最後の宿泊地だった町で懐かしい地名。2週間にも渡る旅の終盤で疲れが溜まってとうとう風邪を引いてしまい、変な色の鼻水がズルズル出て大層困った記憶がある。今回の旅ではスイスには足を踏み入れなかったものの、8年の時を超えてシャフハウゼンからたった50km余りの場所に再び立っているとは、当時は思いもしなかったはず。この時は飛行機の経由地としか考えておらず興味のカケラもなかった香港も、今では2度ならず3度目の再訪を考えている程にどっぷりとハマってしまったことだし、8年という歳月はあらゆる意味で人が変わっていくのに充分過ぎるほどの時間である。

この列車に使用されている車両は、在来線での曲線通過性能に特化した「ICE-T」("T"は恐らく英語のTilt=傾斜から取られたもの)というシリーズ。最高速度こそ230km/hに抑えられているが、車体傾斜機構によって急曲線が介在する区間での大幅なスピードアップが実現している。車内のインテリアや設備については高速列車版のICEと共通化が図られており、一見しただけでは全く区別が付かない。

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《ICE-T・2等車車内》

ドイツの鉄道事情に詳しくない方のためにちょっと解説を加えておくと、ICEというのは日本の新幹線のように軌道・車両・信号といったシステムの総称ではなく、インターシティに代表される都市間輸送を担う優等列車のうち、専用車両が用いられる上位種別を指しているに過ぎない。またICEが高速性能を発揮する高速新線上にも、ICEだけでなく客車列車のIC、さらにはREやRBのようなローカル列車が乗り入れてくる区間さえ存在し、ICEだからといって必ずしも高速走行を行うわけではなく、逆に高速新線上を走るのはICEとは限らないわけだ。これが新幹線や、イメージ・実態共に新幹線に近い形態のTGVとは決定的に異なるポイントである。

スイスの経済の中心地とドイツ随一の工業都市とを直結する列車ということで、数あるICEの系統のなかでも花形列車の部類に入るはずなのだが、7両編成の車内は容易に席の品定めが出来るほどに空いている。

ロットヴァイルを出発した列車はネッカー川が刻む渓谷のあいだを、地形に忠実にカーブを繰り返しながら進んでいく。ICE-Tの先頭車には運転席越しに前面・後面展望が眺められるパノラマ席が設けられており、そこからでもグネグネと急曲線が立て続けに現れる険しい線形を目の当たりにすることが出来る。座っていれば快適な振り子車両も、いざ立っているとなるとバランスを取るのに難儀する点も日本のそれと同様だ。

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《展望席》

振り子車両とはいえ、北海道の《スーパー北斗》や《スーパーおおぞら》のようにカーブへ果敢に突っ込んでいく高速走行を堪能できるわけではなく、山間の細道を60km/hのところを75km/hに、70km/hのところを85km/h・・・といった地道な速度向上を行っているという感じ。その走りっぷり・沿線風景ともに中央西線の《しなの》を髣髴とさせる。

単線なので途中ICE-T同士の行き違いもあったりし、ローカル線の風情を味わいつつ次第に谷が開けてくると、ロットヴァイルから30分程で早くも最後の停車駅・Horb(ホルプ)に到着。出発して程なくずっと寄り添ってきたネッカー川が右手に離れていき、いよいよ平野に出て来る。線路もいつの間にか複線となっており、通路の上に設置された車内案内装置(ハーフミラー仕上げになっていてカッコイイ)にも「160km/h」の表示が現れた。

ひとつカルチャーショックを感じたのは、通過駅にはホームドアの類が一切設置されていないにも拘らず、高速走行状態の列車が平気ですっ飛ばしていく事。例えば日本の在来線で唯一160km/h運転を実施している北越急行では、特急列車が通過する各駅にはがっしりとした可動柵が設けられ万全の安全対策を図っているのだが、かたやコチラでは普通にS-Bahnが待避しているホームの向かいを160km/hの電車が駆け抜けていくのだから実にスゴイ。130km/hの新快速が通過するホームに立っていてさえ恐怖を覚えるのだから、160km/h~200km/hの列車が通過するホームの迫力・凄まじさといったら一体どんな感じなのだろう。

20分も走ると建物の密度が目に見えて高くなりはじめ、いよいよ大都市圏の中へ入ってきたことを実感する。やがて線路は複々線となり、この列車が走る急行線の隣にはS-Bahnの駅がこまめに設置された緩行線が並走するように。丘陵地帯に広がるシュトゥットガルトの街らしく、都心が近付いてきても丘の間を縫うようなカーブが続き、ICE-Tはグイングインと車体を傾けつつラストスパートをかける。

並走する線路の本数が増えてくるのと比例して列車のスピードも落ち、最後はヨーロッパの頭端駅らしく厳かにシュトゥットガルト中央駅7番ホームに進入。時刻は15時56分、1分の狂いもない見事な定時到着となり、ドイツの鉄道魂ここにあり、といったところだろうか。ロットヴァイル~シュトゥットガルト中央駅間110kmを68分、表定速度は97km/h。

ホームに降り立ったところでおもむろに先頭車両へ歩み寄り、そのご尊顔にじっくりと対面。見れば見るほどJR九州の885系や台湾鉄路管理局の太魯閣号にそっくりである(ついでに主に外装のメンテナンスの杜撰さもJR九州によく似ている。こんな所まで似せなくても・・・)。これらの3車種を並べて鉄道に詳しくない人に見せたならば、まず判別は不可能なのではないだろうか。

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この編成は僅か8分後に再びチューリッヒ行きのICEとして慌しく折り返していくことになっている。北へ南へフル稼働するICE-Tに労いの言葉をかけつつ、駅出口へと足を向けた。

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【動画】ICE-Tの車窓から・動画クリップまとめ

(2008.04.10)

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コメント

こんばんは。このベルト、とても親切な装置ですよね。
私がかつて旅行したときは自転車を載せて使う人を結構見かけました。
畳む必要もなく階段もラクラクな輪行を一度ゆっくり楽しんでみたいものです。

御尊顔、確かに太魯閣や九州の885と似たところがありますね。

乗後景さん、こんばんは。

>自転車を載せて使う人を結構見かけました

ヨーロッパではトラム・地下鉄やローカル列車だけでなく、特急列車にも自転車をそのまま積むことが出来るのが便利ですよね。私は自転車を乗せている所は見た事はないのですが、犬と一緒に乗っている場面は何度か目撃した覚えがあります。常に混雑している日本の鉄道では真似をしようにも無理な相談かもしれませんが・・・

>太魯閣や九州の885と似たところがありますね。

885と太魯閣は言わば兄弟の関係なのでまぁ似ていて当然なのでしょうが、885のデザイナーの水戸岡鋭治氏とICEのデザイナーのアレクサンダー・ノイマイスター氏は親交が深いそうで、水戸岡氏がアイデアを借用したのであれば長男ICE・次男885・三男太魯閣、という関係になるのでしょうか。三ヶ国に散らばった彼ら三兄弟ですが、全員にお目に掛かることが出来て(太魯閣は見るだけでしたが)鉄道ファン冥利に尽きるといったところです。

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