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2010.01.12

ジブリの絵職人・男鹿和雄展 in 兵庫県立美術館

昨年の12月8日から兵庫県立美術館で開催中の、『ジブリの絵職人 男鹿和雄展』。日本を代表する背景画家(美術監督)さんです。全国8都市を巡回したこの展覧会も神戸がファイナルだそうですが、2009年の「関西文化の日」に同美術館を訪れた折に招待券を頂いたので、連休最後の11日に足を運んできました。

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歩道橋と直結している2Fの入り口から館内へ入り、エントランスへ続くスロープを下っていった先に立っていたのは、「最後尾」と書かれたプラカードを持つお兄さん。なんとそこから会場へ向けて長~~い列が…! 列の流れに乗ってエントランスホールに入ると、そこには


80分待ち


の表示が出ていました。いやいやいや、ディズニーランドとかのアトラクションならばいざ知らず、美術館で1時間半待ちの行列なんて前代未聞ですよ。無料開放日のオルセー美術館でさえ、20分程度で入場出来たのですから…。正直、ジブリブランドの神通力をナメてましたね。なにせ客層の9割9分が普段美術館なんて見向きもしなさそうな方々ですので。まあそんなわけで、入る前から色々な意味で異例の展覧会であることを実感させられました。

会場入り口のある3Fに上がっても依然グネグネと列は続いており(見通しが悪くて列の全容が確認できないのが更にストレスに)、本当に80分近くかかってようやく入場。ここまでで既に疲れました。やれやれ。

構成は大きく3つに分かれており、まずは《第一章 背景:テレビから映画へ》のコーナー。今回は男鹿和雄氏の個展となっていますが、ここでは男鹿さんが絵師としてこの世界に飛び込んでから、ジブリアニメを手掛けるようになる直前までの作品が展示されています。スタジオジブリ時代の牧歌的な画風とは真逆となる、無機物を対象としたシリアスなカットが多く、意外な一面を見せてくれました。それでも驚異的なまでの描き込み具合は後の時代と比べても全く遜色がなく、超人というのは若い頃から既に才能を開花させているものなのだなぁと納得。
<展示作品>
侍ジャイアンツ/はじめ人間ギャートルズ/ガンバの冒険/あしたのジョー2/ユニコ/夏服の少女たち/幻魔大戦/カムイの剣/はだしのゲン/時空の旅人/妖獣都市

第一章のコーナーは列を作らないと至近距離で見れないほど混雑していましたが、第二章のコーナーを前にしてついに流れが詰まってストップしてしまいました。じりじりと進んで暗い空間を抜けると、トトロの住処(寝床)を再現したジオラマが。二つの穴から覗き込むようになっており、なるほどこれが渋滞の原因ですな。

というわけで皆様お待ちかねの《第二章 投影:ジブリ作品に想いを映す》へ。男鹿さんがジブリアニメに初めて制作スタッフとして参加したのは、1988年公開の『となりのトトロ』です。昭和30年代?の東京近郊を舞台とした、郷愁を誘ってやまない物語に命を吹き込んだのが、かの徹底的に描かれた田園風景や森の背景画なわけですが、草花一本、樹木の葉の一葉にまで生命を感じさせるような表現力もさることながら、陰影や水面への映り込みのリアルさ、そして時間と季節の経過による光と色彩の変化を的確に捉え、幻想の世界を見事に具現化するその技は、天賦の才能以外の何物でもありませんね。写真技術ならば機材・知識・経験が揃えばある程度のレベルまでは誰でも到達できるでしょうが、絵描きは生まれ持った素質がモノを言う世界。写真と決定的に異なるのは、モチーフの有無はあれどもゼロから何かを生み出すことが出来る点で、絵心の全くない私にとって絵が上手な人というのは、それだけで雲の上の人のような存在です。

展示作品はとなりのトトロ/魔女の宅急便/おもひでぽろぽろ/紅の豚/平成狸合戦ぽんぽこ/耳をすませば/猫の恩返し/もののけ姫/千と千尋の神隠し/ハウルの動く城/ゲド戦記/空想の空とぶ機械達/崖の上のポニョといったラインナップ。そのうち作品毎の比率には軽重があり、となりのトトロ・おもひでぽろぽろ・平成狸合戦ぽんぽこ・もののけ姫の背景画が多く、残りはチョロチョロといったところ。やはり男鹿さんの真骨頂である自然画がメインとなっていました。私が一番好きな《紅の豚》は数点だけだったのがちょい残念。

まあそれにしても、映像では数秒で終わってしまうようなシーンでさえ、本の背に書かれた文字や看板・掲示物など、隅から隅まで手を抜かずに描かれているのには舌を巻くばかり。展覧会の開催直前に読売テレビでPR番組が放映されていましたが、さつきとメイの家は男鹿さんの親戚宅、『ぽんぽこ』で狸が集会を開く廃社は多摩丘陵に実在する神社、ハウルの秘密の庭は故郷の秋田県某所にある湿原…などと、それぞれにモチーフとなる場所が存在するらしいのですが、見比べても「言われてみればそれっぽい」としか思えず、一から創作したも同然でした。むしろ写真よりも写実的で、登場人物の心情まで代弁してしまいそうな豊かな色彩に、目は釘付けになりっぱなしでした。なんだか改めてブルーレイの高解像度で鑑賞し直したくなりましたね。

《第三章 反映:映画を離れて》は、男鹿さんがスタジオジブリを退社して以降積極的に取り組むようになった、映画以外のアートワークの展示。相変わらず空気感鷲づかみの緻密すぎる描写ですが、ここまでに見慣れてしまって最早感動が薄れてしまっているのは何とも贅沢な話。二章の後半あたりからだいぶ空いてきたので、いつもの展覧会のようにゆったりと鑑賞することが出来ました。
<展示作品>
LETTERS-赤鬼からの便り
中小企業向け業界誌、単行本
ちゃぐりん
第二楽章 挿絵
第二楽章 沖縄から 「ウミガメと少年」
ねずてん
種山ヶ原の夜

展示会場を出ると、水彩画の制作手順や背景画とセル画の合成手順の解説コーナーがあり、更に折り紙コーナーを抜けた最後にはお約束のグッズ販売コーナーが。『三鷹の森 ジブリ美術館』以外では地方初出店となるらしく、ここまでにゲンナリしていた子供も再びハッスル(^-^; もう一つ同時開催企画として、『3びきのくま』という絵本に登場するクマの家族の家を実物大?に再現したジオラマがあり、こちらもジブリらしく妥協のないディテールに感心させられました。

並び始めてから一通り観終わるまで実に3時間半。美術館のスタッフの方に話を伺ったところ、祝日のこの日は入場者数が5000人を突破したらしく、比較的空いている平日でさえ2000人位には達するのだとか。ジブリということで普段の展覧会に比べて子供の数が圧倒的に多かったのですが、キャラクターではなくてあくまで背景画の展示なので(一部、キャラクターのセル画を重ねて展示してある作品もありますが)、アニメといえどもやはり大人志向の展覧会ですね。男鹿さんは散歩や旅行の際にはスケッチブックを手放さず、常に観察眼を養うことに余念がないのだとか。あの素晴らしい作品群も、花鳥風月を愛でるその心が結実したものなのでしょうね。末永く第一線でのご活躍を期待しています。

兵庫県立美術館・男鹿和雄展公式ページ

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コメント

こんにちは!

いいですね~行けて♪
ボクもジブリ大好きなので
行きたかったなぁ・・・。

今、自分の部屋を「小ジブリ美術館」
にしようとしています(笑)

よかったら、ブログに見に来てくださいね♪

竜眼寺文蔵さん、こんにちは。行く前から予想はしていたのですが、まあ凄まじい混雑でした。これだけ好評を博したのですから、また第2弾があるのではないでしょうか? その機会にはぜひ!

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