« タイ (3-7)国際特急列車の車窓から・Part2 | トップページ | タイ (4-1)目覚めれば… »

2012.03.20

タイ (3-8)国際特急列車の車窓から・Part3

ラッチャブリーを出発し、南へ向けてひた走る列車。時刻は午後5時をまわり、刻一刻と暮色が濃くなっていく。車窓には初めて目にする東南アジアの田園風景。ふと、日本のそれとの違いは何だろう?と考えてみたのだが、まず一つはポツポツとあまねく人家が点在する日本とは異なり、人口密度を反映するように地平線の彼方まで農地だけが広がるという風景が多いこと。もう一つは定規で引いたようにきっちりと区画が整理された日本の農地に対し、こちらでは結構うねうねとアバウトにレイアウトされていることである。そして熱帯のタイでは二期作・二毛作、更には三期作・三毛作が当たり前。明確に四季が存在する日本と比べれば、田園風景に季節の移ろいを見出すのはやはり難しそうだ。

20111211172228s
《車窓からの田園風景。所々にひょろひょろと立つ木はココナッツ》

列車はいくつもの駅を通過していくが、その多くの駅でホームに駅員が屹立し、当方の列車の通過を見送ってくれている。きっと日本でも半世紀くらい前ならば全国各地でこんな風景が見られたのかもしれないが、物心ついた時には既にJRに変わっていた自分。地方ローカル線どころか都市近郊でさえも無人駅やワンマン列車が空気のような存在として馴染んでいる世代にとっては、新鮮さと懐かしさが同居したような不思議な感情が湧き上がる。

Thai_381s

18時前に到着したペッチャブリー(Phetchaburi)は、日没前最後の停車駅。実はここまで、印刷してきた時刻表に実際の出発時刻を書き込んできたのだが、ここに至るまで10分を超える遅れは発生していない。それどころか、ラッチャブリー~ペッチャブリー間で遅れを5分取り戻したくらいである。後日乗車するマレー鉄道(KTM)の想像を絶するデタラメっぷりに比べれば、タイ国鉄の運行はかなり正確のようだ。終着駅までこの調子で走ってくれれば満点を差し上げるところ、だったのだが……。 そしてラッチャブリーかそれともペッチャブリーだったか、駅での停車中に乗務員が床をモップで水拭きしていったのは少々驚いた。

20111211175702s

ペッチャブリーを出ると、みるみるうちに窓外は漆黒の闇に。そしてこの間に隣のボックスの西洋人家族の元に食堂車からディナーセットが到着したので、私も注文しておく。そう、わざわざ食堂車まで移動せずとも、自席まで料理を届けてくれるのである。座席部分は通路より一段高くなっているのだが、その足下にテーブルが収納してあり、注文と同時にスタッフのおばちゃんがサッとテーブルをセッティング。向かいの席の青年に「一緒にいかがですか?」とメニューを渡そうとするも、彼は微笑みつつ手を小さく振る。

15分くらい待っただろうか。注文どおりに180B(450円)のディナーセットがやって来た。5皿ある料理のすべてがラップでぴっちりと蓋をされ、何だか中華料理屋で出前を取ったような感じである。旅立ちの前に国内外のウェブサイト・ブログの旅行記でこの食堂車のメニューの感想を閲覧したところ、おしなべて「良くも悪くもない」という評価だったのだが、さてどんなものかと味見。

20111211182306s

……うん。


確かに「SO-SO」だわ。


味自体はそれほど悪くないのだが、作り置きしておいたのか炒め物もスープもぬるくなっているし、やはり市価と比べると料理の質に対して相当割高だなぁ、という印象は拭えない。まあ、何事も経験なので全く後悔はしていないが。一応メニューの内訳を書き出しておくと、

●ジャスミンライスとクリスピーフライドチキン
●野菜のオイスターソース炒め
●スープ(具は瓜…だったかな?)
●フルーツ(バナナとパイナップル)
●オレンジジュース(バヤリースみたいな感じ)

メニューを見てみたい方は下のリンクからどうぞ。
南本線35列車・食堂車夕食メニュー(2011年12月) [JPEG/254KB] 

のんびりと食事を取っているうちに、列車はフア・ヒン(Hua Hin)駅のホームへ滑り込む。1928年につくられた王室の夏の離宮があることで知られるリゾートタウンで、駅には王室専用の待合室も設置されているとか。そんな由緒正しき保養地には嘗てタイ国鉄直営のレールウェイホテルが営業しており、現在は改装の上、「ソフィテル・センタラ・グランド・リゾート&ヴィラズ・フアヒン(Sofitel Centara Grand Resort & Villas Hua Hin)」というクラシックな高級リゾートホテルとして生まれ変わっている。(TVで見ただけなので、知ったかです)

で、この駅での停車中に青年が辺りをキョロキョロ。どうやらこの駅で乗り込んでくる食べ物の売り子を目当てにしていたらしい。 ――のだが、無情にも誰も乗って来ないまま、列車はフア・ヒン駅を出発。次の停車駅は2時間以上後である。あぁ…。

そんなわけで不貞寝を決め込もうというのか(笑)、私が食事を終えるや否や、青年が乗務員にベッドのセットを依頼。このように、ボックス毎に任意のタイミングでセットを頼むことができる。まず座席をフラットにして下段のベッドを作ると、頭上から壁際に折りたたまれていた上段のベッドが登場。シーツやタオルケットもこの中に入っており、このシーツのセットも係の人にお任せである。そして青いクッションに枕カバーを掛け、タオルケットを敷いてカーテンを吊るせばベッドの完成。この間わずか2~3分の手際よい作業だった。日本のブルートレインではベッドのセッティングは乗客自身が行わなければならないので、コストパフォーマンスといい、意外と細やかなサービス内容といい、タイ国鉄の完勝という感じである。さよならブルートレイン、もう心置きなく逝ってください。

まだ寝るのには早すぎる時間ではあるが、ベッドに入ってカーテンを閉め切ってみる。どう考えても温度設定が間違っているとしか思えない強烈冷房も、カーテンを閉めてタオルケットを被ればいい塩梅の温度である。そしてベッド幅も悠々寝返りが打てるほどに広々。壁に枕を立てかけてカウチソファのように身を横たえれば、夜の車窓を独り占めできる極上の空間の出来上がりである。上段寝台には下段より数十バーツ安い代わりに窓がないため、圧迫感の有無は価格差以上に大きそうだ。そういうわけで、極力下段寝台を確保することをお奨めする。

20111211195545s

20111211195613s

日本の幹線沿いとは異なり、沿線にはほとんど灯りは見えない。そんなわけで読書でも…と読書灯を点けようとするも(すぐ隣に非常用ボタンがあり、スイッチと間違えて押しそうになってしまった)、電球が切れているのか何度カチャカチャやっても点かない。カーテンを開けても微妙に光量不足だし、こうなるといよいよやる事がなくなって来る。仕方がないので、銀河が誕生したのは何年も前 iPodで音楽を聴きながら横になってボーっと。

何度かトイレに立ったりと通路を行き来しているうちに、隣のボックスの男の子になつかれてしまう。昔から子供や小動物にはやたら好かれるのだが(その割には肝心の若い女性には… 最近の人間の質を考えると致し方ないという面もありますが)、今回もどこから拾ってきたのか、「ハイ!」と小さなネジをプレゼントされてしまった。「ありがとーっ!」と満面の笑みで答えつつも、「どーすんのよ、コレ」と困惑。まぁ、放っておいたところで客車がバラバラになるわけでもなし、見なかったことにして勝手に処分(笑)。

その後も未練がましく読書灯をいじっていたところ突然パッと明かりが点いたのだが(接触不良?)、それも日付がそろそろ変わろうかという頃で時既に遅し。前方のボックスのグループがトランプに興じている以外は車内も寝静まろうとしている。このまま順調に進めば、翌朝8時頃には国境を越えてマレーシアへ入る――はずが、


この後、急転直下の大波乱が待ち受けていようとは。


20111212003519s
《午前0時半頃の車内》

今日の歩数カウント:7,945歩

(2011.12.11)



タイ鉄道旅行
タイ鉄道旅行岡本 和之

めこん 1993-12
売り上げランキング : 159274


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

« タイ (3-7)国際特急列車の車窓から・Part2 | トップページ | タイ (4-1)目覚めれば… »

コメント

今夏(2012)バンコク フワラムポーンからバターワースへ寝台に乗る予定です。寝台券はネット経由で下段を入手でき、後は当日を待つだけです。
書籍およびネットでこの寝台の情報が少ない中、進行方向も一緒で非常に役立たせていただいております。
一つ質問ですが、寝台席が作られる時、その椅子(ベッド)の下に荷物(スーツケース)は置ける空間率はあるのでしょうか? それとも、通路置きになるのでしょうか? 警備の方が乗っておられるので、防犯は大丈夫かと推測しておりますが、念のため。
よろしくお願いします。

Koujinn さま

初めまして。ご質問の件ですが、座席の下の収納スペースは座席⇔寝台のモード転換時に全く干渉しないので、乗車時に荷物が収まればそのまま下車時まで入れっぱなしにしておいてOKです(国境駅での出入国審査時には一度持ち出す必要があるようです)。私の荷物は機内持ち込みサイズのキャスターバッグだったのですが、スペースにはまだかなり余裕のある感じでした。また、深夜帯に入ると貫通路が施錠され車両間の行き来ができなくなるため、治安に敏感になる必要は無さそうです。私は一応念のため、100均で買ったヤワなダイヤルチェーンをお守り代わりにくくり付けていました。

このブログは公開日記のつもりで書いていますが、単なる印象記ではなく実用性も意識しているので、「役に立った」と仰って頂けると我が意を得たり、という感じで管理人はとても喜びます。もうご出発も近いのでしょうか?素敵な旅になるといいですね。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/224041/54238235

この記事へのトラックバック一覧です: タイ (3-8)国際特急列車の車窓から・Part3:

« タイ (3-7)国際特急列車の車窓から・Part2 | トップページ | タイ (4-1)目覚めれば… »

スポンサーリンク

Blog内検索

Amazonでお買い物しませんか?

無料ブログはココログ