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2012.04.29

マレーシア (2-3)椰子とジャングルと飢餓と

バターワース駅を出発した列車は、ゆっくりとしたスピードで街なかを進んでいく。ジョージタウンが商業・観光都市であるのに対し、こちらは工業都市の趣。フェリーから眺めた港湾地帯には「キリンさん」が林立していた。

最初の停車駅はブキッ・マータジャン(Bukit Mertajam)。タイ国境方面からの路線とクアラルンプール方面からの路線が合流する分岐駅であるが、こちらにはタイ国鉄のように「Junction」は付いていない。バターワース東部の郊外にあたるので、当方の車両にも乗客が何名か乗り込んできた。この列車でも印刷してきた時刻表に実際の発車時刻を逐次記録していくつもりだが、所定では8時18分発のところ、早くも5分遅れ。先が思いやられる。

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《ブキッ・マータジャン駅にて》

ブキッ・マータジャンからクアラルンプール方面への路線へ進むと、程なく都市らしい景観は尽き、以降車窓の大部分はアブラヤシのプランテーションが支配するようになる。以前シンガポール・チャンギ国際空港へ着陸する飛行機で空から眺めたことはあったが、こうして地上からの目線で見るのは初めてのことだ。

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車内改札に続き、1等車旅客へのサービスとしてミネラルウォーターとパンが配られる。ミネラルウォーターはホテルで毎日のように複数本サーブされるため、バッグの中の空きスペースにちょっとした商売が出来るほどに詰め込んであり、「コーヒーかジュースなら良かったのに」とがっかり。そしてパンの方も袋の製造者表示には何故か「フジベーカリー」との記載が(言うまでもないですがフジパンとは無関係です)。ちなみにこのセットの配布は途中駅から乗客がある度にこまめに行われ、今思えばマレーシア滞在中に私が見たKTMの職員のうち、一番の働き者がこの彼だったような気がする。とはいえ、職員というよりは出入り業者なのでしょうが。

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車窓は基本的にプランテーション、時々視界が開けたと思えば水田の向こうに山並みが見えたり、カンポンと呼ばれるマレーシアの田舎の村落の風景を眺めながら列車は進んでいく。

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バターワースを出てから1時間20分。列車はブキッ・メラー湖(Kolam Bukit merah)という景勝地へ。線路はこの湖の真ん中を(恐らく橋ではなく)築堤で横断していく。

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バターワース~イポー間は現在全区間単線非電化だが、進行方向右側には先述の線形改良工事の一環として複線の橋が出来上がり、架線柱の建植も済んでいる。

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バターワースから1時間40分。ペラ州では州都イポーに次いで2番目の都市であるタイピン(Taiping)に到着する。ここは19世紀半ばに錫(スズ)の大鉱床が発見され、以来ゴールドラッシュならぬティンラッシュで栄えた都市。マレー鉄道の歴史も、ここで採掘されたスズを最寄りの港へ輸送するために敷設された路線を端緒としている。日本を含む東アジアや西ヨーロッパのように旅客輸送が高度に発達した地域はあくまで例外で、世界的には鉄道の本分はあくまで貨物輸送。イポー~ブキッ・マータジャン間を走る定期の急行列車は一日4往復にすぎない。

さて、この駅では謎の長時間停車。列車に乗り込んでからまだ一度も車内放送というものを耳にしていないのだが、タイピン駅での停車中もまた然りである。対向列車の遅れが原因なのかなと思いきや、結局そんな列車はやって来ないまま、時刻表より30分以上遅れて再出発。勿論何の説明もなく、である。

タイピン駅を出た辺りから、列車は起伏の多いジャングルの中へと分け入っていくようになる。ここまで列車のスピードは決して速いとは言い難いペースだったのだが、この区間に入ると急曲線が増えるせいか、更に輪をかけてスローに。これってインターシティではなくてトロッコ列車なのかしらん、と皮肉りたくなる。

そしてこの区間ではそんなジャングルを切り拓いての線路敷設工事がたけなわ。タイピン以北もそうだが、複線化といっても単純な腹付けではなく、直線化を兼ねた完全な新線工事と呼べる大規模なものである。先頭の機関車が時たま警笛を鳴らしたかと思うと、工事関係者の姿が車窓をよぎっていく。いずれ工事が完成して電車が高速で行き交うようになれば、こうしてジャングルの中をトロッコ列車さながらのスピードで、のんびりと進む汽車旅を楽しめた時代が懐かしくなるのだろう。

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《線形改良工事のようす》

この辺りから客室端の液晶テレビで映像の放映が始まった。最初はKTMのPRビデオが流されていたのだが、すぐに『チャーリーとチョコレート工場』に。他の乗車レポートでこのTVの音量が結構うるさいらしいという話を聞いていたのだが、今回はボリュームを絞ってあり、ホッと一安心である。

時刻は正午の少し前。朝食が簡単なものだったのでお腹が空いてきた。この列車には食堂車が連結してあり、そろそろ早めの昼食にしよう、と足を運んだのはいいのだが…… 誰もいない食堂車のカウンターにメニューを探すも、それらしきものが見つからない。やがてスタッフのお兄ちゃんがやって来たので、「食堂車のメニューはどこですか?」と尋ねてみたのだが、なんと食堂車としての営業は行っていないのだという。しかも、「用意しているのはドリンクとスナック菓子くらいなんですよー」とのこと。車内販売もないため、バターワース~クアラルンプール間6時間の長旅に供食サービスは皆無なのである。そういえば通路を挟んで隣に座る夫婦が、食堂車からポテトチップスの袋を持って帰ってきているのを見たが、ひょっとして彼らも昼食のアテが外れて仕方なく…だったのだろうか。ポテチで腹を膨らますなんて不健康だし、第一気分が悪くなりそうだし、もうクアラルンプール到着まで耐えるしかないのか…?

列車は更にズルズルと遅れ、やがて久々に大きな街の中へ。多数の留置線が並行するようになり、その上には架線が張られている。そんなわけで12時14分、所定よりも約1時間遅れでイポー(Ipoh)駅に到着。バターワースから4時間あまり、ひとまずこの駅がこの列車の道程の一区切りとなる。ちなみに2時間前に出発したタイピンとの直線距離は約50km。お前は自転車か

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(2011.12.13)


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