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2013.01.29

国芳ワールドヘ連れてって。「歌川国芳展~奇想の浮世絵師による江戸案内~」

Kuniyoshi_1


再び阪神電車に乗り、次の元町駅で下車します。遅い昼食を済ませた後、2つめの美術館・大丸ミュージアム<神戸>(大丸神戸店9F)へ。ここで鑑賞するのは、「歌川国芳展~奇想の浮世絵師による江戸案内~」です。歌川国芳 [うたがわ くによし/1798-1861] とは江戸時代末期に彗星のように現れた、浮世絵の奇才のこと。確かな画力で華やかなりし江戸の風俗・文化を克明に描き出すとともに、その卓越した発想力でユーモアやウィットにあふれた作品を怒涛の如く生み出し続け、現在は海外でも高く評価されている、日本が誇るスーパーアーティストです。


Kuniyoshi_2
《会場の大丸神戸店》


作品目録が手元にないので、今回はざっと印象を述べるのみではありますが。江戸時代初期に誕生した浮世絵ですが、国芳が活躍した後期には木版印刷技術の成熟に伴い、多色刷りの絢爛な色使いの作品が喜多川歌麿・葛飾北斎・歌川広重など、多士済々のアーティストたちによって競い合うようにして作り出されていきました。実はその多色刷りの技術が金に糸目をつけずに惜しげもなく投入されていたのが春画だったわけで、国芳も含め浮世絵の著名アーティストのほぼ全員が春画を手掛けていたという事実をご存知だったでしょうか。漫画『ギャラリーフェイク』の3巻にもこの話が出てきましたが、浮世絵の極致であり、江戸時代の大らかで奔放な性風俗の語り部ともいえそうなこの春画、当たり前ですが今回の展覧会では見ることが出来ず、ちょっと残念でした。現代美術家の会田誠さんの個展のように「18禁部屋」を作ってくれればいいのですが、ヒステリックな婦人団体から抗議が来そうですね(笑)。

国芳は役者絵、美人画、武者絵、風景画といった浮世絵の主要ジャンルをすべて網羅する名匠でしたが、私が特に興味を引かれたのは江戸の風景を写し取った名所絵の数々。彼は西洋画の研究にも熱心で、ここから学んだ遠近法や陰影の強弱の技法はこれらの名所絵にも存分に活かされており、写実的でイキイキとした描写は鑑賞者も江戸っ子の一人としてその場に居合わせているかのような感覚も。芋を洗うようにごった返す繁華街の賑わいぶりや、納涼期の水辺でのお祭り騒ぎの光景など、電気やガスがなかった時代にも楽しく朗らかに生きていた江戸っ子の活力が手に取るように伝わってきます。東京スカイツリーの出現を180年前に予見していたかのようだと少し前に話題になった、「東都三ツ股の図」も展示されていました。

今回の展覧会の目玉作品の一つ、「相馬の古内裏(そうまのふるだいり)」は、平将門の遺児である妖術使いと源氏の武将との因縁の対決を描いた一大スペクタクル作品。妖術使いが異界から召喚した巨大骸骨は、人体の知識が未だ一般人にまで浸透していない時代にしては驚異的ともいえるほどに精巧な描写なのだとか。四十八手の裏表を尽くしたコンテンツで溢れ返る現代の視点からしてもインパクトのある構図だというのに、当時の人々に与えた衝撃たるや一体どれほどのものでしょうか。

そして国芳の真骨頂ともいえるのが、巧妙なだまし絵や猫・魚といった動物を擬人化して描く、「戯画」の世界。展覧会を通じて堅苦しさとは無縁の、肩の力を抜いて鑑賞できる親しみやすい画風ではありますが、この戯画ではとりわけそれが顕著。「江戸のポップアート」と呼ばれる所以でもあります。国芳持ち前のエスプリに加え、この時代を襲った飢饉や地震、天保の改革による奢侈(しゃし。贅沢のこと)禁止令や黒船の来航に象徴される外患の脅威といった、社会に重く垂れ込める閉塞感を鋭い風刺とユーモアで笑い飛ばそうという、どこまでも前向きな姿勢。そしてお上のお触れに対しても敢然と立ち向かう反骨精神も、彼のアーティストとしての魅力を一層高める要素なのかもしれません。国芳の時代と同様に五里霧中の現代ニッポン(とはいえ、現代の場合は8割くらいは自業自得ですが)。先に名前の出た会田誠さんもそうですが、時代に即して正鵠を射た警鐘を乱打し続ける芸術家の役割というのは、ことに現代社会に蔓延する銭金の尺度では測りきれないほどにとてつもなく大きいものだと、改めて実感したものです。因みに商業作家として多大な成功を収めた国芳ではありますが、気に入らない仕事は幾ら金を積まれても決して受諾することはなかったのだとか。今の時代、こんな潔い生き方が出来るでしょうか。

さて。拙記事をご覧になり、「よーし、パパも見に行っちゃうぞー」と思われた方。大変申し訳ございません。昨日で会期終了しました。16日から28日と2週間足らずだったんですね。良い展覧会なのにもったいない! というわけで、フィンランド・デザインの温もりと江戸っ子の「粋」を体感した、2つの展覧会のご紹介でした。

P.S. 大の愛猫家で知られる国芳らしく、戯画コーナーでもネコをモチーフとした作品が多かったのですが、私はイヌ派なのでイマイチ乗り切れず。ごめんね、国芳。


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