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2013.01.25

スオミの国からこんにちは。「フィンランドのくらしとデザイン-ムーミンが住む森の生活」展(兵庫県立美術館)

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2013年は芸術づいた年にしようかなと考えておりまして、手始めに現在神戸で開催されている和と洋、2つの展覧会をハシゴしてきました。

1つめは兵庫県立美術館で3月10日まで開催の、「フィンランドのくらしとデザイン-ムーミンが住む森の生活」展。もう十数回は訪れている兵庫県立美術館、全てを記事にはしていないものの(だってめんどくさいんだもん)、すっかり私のアート鑑賞に於けるホームグラウンドとなってしまいました。

しばらくご無沙汰している間に、ギャラリー棟の屋上にヘンテコリンなオブジェが出現していました。オランダ人アーティストが手掛けており、愛称は『美(み)かえる』というそうです。


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エントランスホールには今回の展示会の副題にも登場しているムーミン一族の家が(撮影自由)。本当はムーミン屋敷ですけどね。


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中はこんな感じ。私は常々冗談交じりに「理想の奥さんはムーミンママ」と公言しているのですが、あんな海よりも深い愛情に満ち溢れてしっかり者、でもお茶目なところも沢山、というパートナーがそばに居てくれたら、それだけでもう人生勝ち組、という感じがします。 ……一応断っておきますが、デブ専とか裸エプロンフェチという意味ではないですからね。


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それでは展覧会各コーナーについて簡単にコメントを。


▼1. スオミの風景

フィンランド人画家による、20世紀初頭頃に描かれた風景画を展示。見渡すばかりに地平線が広がる夏の大平原に、耳鳴りしか聞こえない静寂が支配する厳冬の森。私は都会生まれ都会育ちのもやしっ子なもので、厳しくも美しい、雄大で幽玄なるフィンランドの大自然の風景には、憧憬にも似たような強く心を惹きつけられる魅力を感じます。フィンランドの面積は約34万平方キロで、日本よりも4万平方キロばかり小さい国土に住んでいるのは僅かに540万人(2011年の統計)。シンガポールと香港の人口がそれぞれ520万と700万ですから、都市国家よりも少ないんですよね。そりゃあ、せせこましく暮らす東アジア人とは人生観も違って当然といったところです。


▼2. カレワラ神話

19世紀にフィンランド人医師によって編纂されたフィンランドの創世神話・叙事詩、『カレワラ』を紹介。和製コンピューターRPGのモチーフとしてお馴染みの、「エルフ」「ドワーフ」「オーディン」「ラグナロク」「ユグドラシル」などなど多数の用語が知られている北欧神話と違い、日本では知名度の低い物語ではありますが。長らくスウェーデンやロシアの支配を受けてきたフィンランドの人々が、民族的アイデンティティを覚醒させる契機として多大な役割を果たし、ひいては1917年のロシア帝国からの独立を後押ししたとも言われるほど、フィンランド史において重要な作品なのだそうです。ヤマトタケルやアマテラスが出てくる日本の神話と同様に、まぁ、支離滅裂でマトモに取り合うだけ時間の無駄というお話ではありますが、文体は日本語に訳してもやたら詩的でカッコイイわけで。ちなみにフィンランドとスカンジナヴィア三国は文化圏が異なるせいもあり、カレワラと北欧神話は全く似て非なるものなのだとか。


▼3. 人々と芸術家の「森のくらし」

森と湖の国、フィンランド。人口密度が低く、都市を一歩離れるとすぐに大自然の恵みを享受できる国ならではの、自然と密着した人々の暮らしぶりを紹介しています。

そんな大自然からインスピレーションを得た芸術家として日本で最も著名なのが、『ムーミン』シリーズの作者として知られるトーベ・ヤンソン。児童文学作家としてだけではなく小説家や画家としての顔も併せ持つ、多才な女流アーティストです。今回の展覧会でもマティスを想起させるような画風の大作が展示されており、意外な一面を垣間見ることが出来ました。子供だけでなく大人の鑑賞にも堪える玄妙な文学作品として、世界中で愛されるムーミンシリーズ。愛や友情・正義・夢といった前向きである意味おめでたくもあるメッセージだけでなく、彼女の作品群の底流に横たわる「自由と背中合わせの孤独」「自然と人生の無常」に正面から向き合い、そのほの苦さを味わうという感性を幼少時から磨いてこそ、真に大きく優しい人間になれるような気がします。


▼4. 二人の巨匠、エリエル・サーリネンとアルヴァ・アアルト

フィンランドが輩出した世界的デザイナー、エリエル・サーリネンとアルヴァ・アアルトの業績を通観するコーナーです。サーリネンは19世紀末から20世紀初頭にかけてフィンランドで沸騰していたナショナル・ロマンティシズムの思想を、建築によって形象化した鬼才。そしてアアルトは極限まで研ぎ澄まされたシンプルさと機能性が特徴の、現代まで脈々と流れる北欧モダンデザインの源流を築いた偉大な創始者。彼が掲げた「自然と人間の調和を図る」というコンセプトは、1935年に彼が自ら設立した家具メーカー・artek(アルテック)社の設計思想として現在まで受け継がれています。そのアルテック社が2007年に始動した「2nd Cycle」プロジェクトは、何十年間も愛用されてきた古いスツールを回収し、最低限のメンテナンスを施した後再び販売するというユニークな試み。同社製品の高い耐久性をアピールすると同時に、スクラップ&ビルドの大量消費社会へ強烈なアンチテーゼを投げかけています。


▼5. フィンランドの「衣」と「色」-人々のための生活デザイン

人間の暮らしの三大要素である衣・食・住のうち、先のコーナーで触れた「住」以外の「衣」と「食」に焦点を当てています。アパレルと食器ということで、どちらかといえば女性の方が関心の高いコーナーかと思われますが、シンプルで質実剛健、それでいて衒いのないハイセンスさを漂わせる、飽きがこないデザインコンセプトの秀逸さはここにも健在です。アパレルブランドのマリメッコ(marimekko)は日本でも良く知られていますが、なんだか歌手のBjörk(ビョーク)さんが着てそう、なんて思ったりしました(彼女はアイスランドの人ですが)。


▼6. スオミの森から世界の明日を考える

ラストのコーナーはサスティナブル(持続可能)な社会を実現するための取り組みを、フィンランド・デザインを通して見ていきます。私が注目したのは、現行の技術の粋を集めてエネルギー効率を追求した究極のエコ住宅、「Luukku House」。なんでも日照時間の少ない北欧でも太陽光発電だけでエネルギーの完全自給が可能だそうで、南国スペインへ持っていったところ、逆に電力が余ってしまうほどだったのだとか。プレハブ工法なので組立・解体が容易なのもメリットで、量産化が進んで価格が下がれば大規模災害時の仮設住宅としても活用できそうな気がします。


以上、約350点の作品を通じてフィンランドの自然・文化に触れてきましたが、近代から現代にかけて時代と共に進化してきた生活デザインに終始一貫しているのは、「豊かでありながら無駄のない合理性」、そして「人間の幸福の飽くなき追求」ではないかと感じました。厳しい自然の中で育まれた相互扶助の精神、そして何処かの極東の島国のように国民が国家への人身御供を強いられるという倒錯ではなく、国家とは国民の繁栄のための道具・枠組みでしかないという健全なナショナリズム。もちろん内需の限界に起因してグローバル経済の煽りを受けやすい経済体質や、近隣諸国からの労働者の流入による失業率の増加などの問題も多く抱えているのでしょうが、やはり議会制民主主義が正常に機能している国はそれだけで素直に羨ましいものです。

少し話は変わりますが、フィンランドは現在2ヶ所の原子力発電所・4基の原子炉を擁しており、3・11以降にも拘らず更に1基の新設が決定し、既に建設が始まっています(人口比でいえば日本の約2.3倍)。以前NHKBSでドキュメンタリーが放送されていたのでご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、「オンカロ(フィンランド語で洞窟の意味)」という地中深くの最終処分場で、10万年という途方も無いスパンで使用済み燃料を管理するという覚悟を決めてまで、国民は原発利用の継続の意思を固めているのです。原発の是非についての議論はここでは扱いません。ただ、国民ひとりひとりがビューティフル・ドリーマーの書生論に拘泥することなく、何世代も先の子孫にのしかかるリスクを考慮した上で、なお自分たちの責任として主体的に決断を下したという点で、やはり「大人の国」は違うと感じたものでした。

私は中学生くらいの頃から、ライフスタイル・思想ともに豊かながらもシンプルでありたい、というポリシーを墨守しているのですが、今回フィンランド・デザインに触れたことで、改めてその思いを確固たるものにしました。きっと相性がいいんでしょうね。物質的な豊かさの追求は、人類の進歩の過程において必ず通過するチェックポイントとはいえ、エネルギー問題が待ったなしの風雲急を告げている今。勇気と決意を持って新たな価値観の創出というフェーズへと踏み出す時ではないでしょうか。Farewell to the Material World!! …なんてね。

次回は改良工事がいよいよ大詰めを迎えた、阪神三宮駅からお送りします。

「フィンランドのくらしとデザイン-ムーミンが住む森の生活」展 特設サイト
http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1301/index.html


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