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2013.07.04

タリス(Thalys)の旅 (2)時速300kmのダイニング・ルーム

パリ北駅を出発したThalysは、他のTGV路線の例に倣って高速新線の入り口まで在来線を進んでいく。すれ違う近郊列車も朝のラッシュアワーで混雑しているに違いない。車内アナウンスは沿線の公用語であるフランス語・オランダ語、そして英語の三ヶ国語で同じ内容のものが繰り返されるため、必然的に放送は長くなる。ドイツのケルン発着の列車だと、やはりドイツ語が加わって四ヶ国語になるのだろうか。英語はイギリス英語が使われており、停車駅の案内でも「calling at...」とあまり馴染みのない言い回しが。



私の隣の2人席には小型犬を連れた中年夫婦。ケージには入っておらず、シーツを敷いたテーブルの上にチョコンと大人しく座っている。ヨーロッパの列車では珍しくない風景だ。別途犬運賃が必要ではあるのだが、きっと子供と同じ扱いなのだろう。確かに人格が未形成という共通点を鑑みれば、同等の権利を受けてもよいという考え方に異存はない。尤も、人間の親にしろペットの飼い主にしろ、一定の年齢を超えれば公共ルールの遵守も含めた人格が完成していて当たり前、という、成熟した社会ならではの考え方ではある。

在来線を走る区間はすぐに終わり、列車はLGV北線(LGV Nord)へ突入。この先アムステルダムまではLGV北線 → HSL(High-Speed Line)1号線 → HSL4号線 → HSL南線と辿っていくことになる。Thalysがブリュッセルまでの暫定開業を経てアムステルダムへの乗り入れを開始したのは1996年6月。当時の高速新線区間はこのLGV北線のみだったため、パリ~アムステルダム間は4時間46分を要していたのだが、その後段階的に高速新線が伸長。ほぼ全区間の高速化工事が完了し、現在のパリ~アムステルダム間3時間16分というダイヤになったのは2009年12月のことである。Thalysの車両そのものもTGV Duplexと同い年ということになるが、こちらも高速化完了と同時期に全編成がリニューアル工事を受けており、私が乗っているのも改装後の車両である。尚、4つの国をまたぐ国際列車なので、運行開始に際してタリス・インターナショナル社という専門の運営会社が立ち上げられている。

列車はみるみるうちに最高速度300km/hの高速走行へと入っていくが、この辺りで1等車にはカートを押した乗務員が現れ、乗客ひとりひとりに朝食が配られた。Thalysの1等パリ~ブリュッセル間では、時間帯によって朝食・昼食・夕食および軽食のサービスが受けられるようになっている。1996年の運行開始当初はこの食事サービスはオプションだったが、現在はすべての1等運賃に自動的に含まれる形だ。

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ホットドリンクはコーヒーまたは紅茶、そしてメインディッシュもハム・チーズまたはケーキ・ワッフルから選ぶことが出来る。内容自体は国際線航空機のエコノミークラス機内食並ではあるが、がっしりとしたテーブルに合わせてトレーサイズは大きめ。食器には磁器やガラスが使われており、またジャムも瓶入りのものだったりと、見た目に関してはチープな印象は微塵もない。イチゴジャムにストロベリーヨーグルト、加えてラズベリージャムも…と、ベリー尽くしなのは個人的にはちょっとウレシイところ。昼食と夕食にはアルコールも付くそうだが、この食事サービスがあるせいか、Thalysの1等車の値引きはフランス国内線のTGVに比べるとかなり渋い。食事はいらないからその分安くしてほしいというニーズは確実に存在するはずだが…。ちなみに隣席のご夫婦は、テーブルの上にワンちゃんが鎮座しているので配膳を辞退していた。飛行機と違って揺れる車内なので、スタッフもトレイの上げ下げにはそれなりに神経を使いそうだ。

この量なので20分もしないうちに食べ終わり、相変わらず凄まじいスピードでカッ飛んでいる列車の車窓へと意識を向ける。フランスの高速新線の景色は基本的にあまり変化がなく単調なのだが、北部ではその傾向がとりわけ顕著。ただひたすらに起伏の少ない平坦な田園地帯が広がっている。とはいえ東洋からの旅人にとってはやはり美しく映り、決して退屈というわけではないのだが。時たま小規模な集落が車窓を過っていくが、どんなに小さな村にも必ずその中心に教会があるのがやはりヨーロッパだ。

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そのような風景の中を駆けること50分。左手の車窓にリール空港が見えてくると、パリ・ロンドン・ブリュッセルの各方面を分ける三角線へと差し掛かる。曲線半径は大きく取られており、当方の列車もスピードを落とすことなく高速で通過。四国の宇多津駅構内にある三角線を更にダイナミックにしたような構造だ。

この三角線を抜けると、LGV北線からHSL1号線へ。列車はすぐにフランス・ベルギー国境を越えていく。赤茶色の屋根の家が目立つようになり、風力発電の風車を度々見かけるようになったのもこの辺りから。のどかな田園風景は続いているものの、大国のフランスと小国のベルギーの人口密度の違い(ベルギーはフランスの約3倍)を反映するかのように、土地の密度も明らかに変わってきた。

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ブリュッセルが近づくと左手に在来線の線路が並行するようになり、通勤客を満載したローカル列車を一瞬のうちに追い越していく。一日でパリ都市圏とブリュッセル都市圏両方の朝ラッシュ風景を見ることができるのだから、Thalysのスピードたるや恐るべし。

列車は高速新線を下り、やがて大きな街の中へ。分岐と立体交差が複雑に絡み合う線路をゆるゆると進み、8時47分、ブリュッセルの中央駅に相当するブリュッセル南駅(仏:Bruxelles Midi/蘭:Brussel Zuid)に到着。パリ北駅からは僅かに1時間22分の道のりである。ここまでの乗客は後方のブリュッセル止まりの編成が優先的に指定されるらしく、私の乗車している13号車の動きはほとんど無し。5分間の停車の間にその編成の切り離し作業が行われる。

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ブリュッセル南駅はフランスからのTGVとThalys、ロンドン発着のEurostar、そしてパリ北駅へは姿を見せないドイツのICE(ICE3)と、仏独系の高速列車のすべてが一堂に会する唯一の駅である。ベルギーは通過するだけでなく、ブリュッセル・ブルージュ・ゲントくらいは観光に訪れてみようかとも考えていたのだが、あまりに著名すぎる観光地は余程の動機が無い限り敬遠するのが私の旅のプランの原則。今回はオランダの地方都市でのんびりするとしよう。

出発時刻の8時52分を2分ほど過ぎ、10両になった列車は道程の後半へと踏み出す。(続く)


【動画】タリス(Thalys)の旅 パリ北駅(フランス)→ロッテルダム中央駅(オランダ)

(2013.04.18)


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