韓国鉄道の旅3日目 (2)汽車旅を満喫
列車は江陵の街をすぐに抜けると、5分ほどで海に出る。今日もすがすがしいほどの良い天気だ。海岸にはずらっと有刺鉄線のついた金網が並び、網の間には石が詰められている。人が乗り越えようとすれば石が落ちるので分かるという。北との緊張感がひしひしと伝わってくる。
再び正東津に。釧網本線の北浜駅とイメージが重なる。波と戯れる人々。穏やかな光景だが、駅を出るとまた金網越しに海を見ることになる。
東海(トンヘ)着。ここから電化区間になるので、ディーゼル機関車から電気機関車への付け替えが行われる。京釜線でさえ非電化なのに何故と思うが、地形の険しさゆえだろう。
東海を出ると、路線は朝鮮半島を横断するため山間に分け入っていく。緩やかに標高を上げ、東海から約40分、道渓(トゲ)に到着。ここから列車は今回の行程中最大の難所かつハイライトである、三段スイッチバックとセミループに挑む。
羅漢亭信号所に停まると、列車はものの10秒もしないうちに今までと逆の方向に進み始める。さっき走ってきた線路が左手に見える(下の写真)。
今度は興田信号所に停車。隣の線路に東海・江陵方面行きのムグンファ号が停まっている。ほんの一瞬のインターバルののち、なんと同時に動き始めるのでびっくり。進行方向も元に戻り、二本の線路を眼下にして(下の写真)さらに標高を上げる。
トンネルをいくつか抜ける。地図上でしか分からないが、線路は短い距離で高さを稼ぐためにつづら折を繰り返している。やがて遠くにさっきまでいた道渓の町が。ずいぶん登ってきた。
峠越えが終わると、嶺東線・太白線の分岐点にさしかかる。この列車は太白線へ。このまま嶺東線をたどれば栄州(ヨンジュ)で中央線と合流し、慶州・釜山方面へ行くことができる。
*スイッチバックとセミループは近い将来に新線への切り替えに伴う廃止が決まっています。また、「東アジア鉄道イソウロウ事務所」というサイトにこの区間の詳しいレポートがあります。他にも興味深いレポートがたくさん。こちらのリンクからどうぞ。
太白線に入ると雪の跡が。頻繁にセメント車と行き違う。たまに町が現れるものの、あとはひたすら普通の山間風景が続く。しかしこんな山の中にまで高層アパートがニョキっと建っているのは不思議だ。土地利用に関して何か制限があるのだろうか。
そろそろお昼。車販で駅弁でも買って食べようかと思っていたが、この列車にも食堂車がついているようなので、せっかくだからと行ってみる。
昨日の食堂車がまだそれらしい体裁を保っていたのに対して、こちらはテーブルのある新幹線カフェテリア(これも今は・・・)といった感じ。結局駅弁を買うことに。気分転換にここで食べることにする。食の国らしく味は悪くない。W5,000。
MDを聴きながらボーっとしているうちに、やがて谷が開けてきた。左手から中央線の線路が合流してくると堤川(チェチョン)である。京釜線の鳥致院(チョチウォン)とを結ぶ忠北線の始発駅でもある。
ここから先では、栄州・安東方面から来た中央線の列車を加えてかなりの本数が確保されている。江陵を出た時には閑古鳥が鳴いていた車内も、徐々に席が埋まり始めた。ループ線があったはずだが知らぬ間に通過、原州(ウォンジュ)を過ぎると次は最後の停車駅、揚平(ヤンピョン)。もうソウルまで残すところ40kmほどだ。
揚平を出発すると左手に南漢江の流れが近づき、車窓を彩る。やがて北朝鮮にまたがる北漢江を長いトラス橋で渡り、線路は左にカーブを切る。二つの河は目の前で合流して八堂湖と呼ばれるダム湖に注ぎ、漢江となって黄海を目指す。
漢江が遠ざかると都市郊外の風景らしくなってくる。低中層の住宅が立ち並ぶ中を進み、地下鉄1号線の線路と寄り添うとすぐに清凉里。いつの間にか着いたという感じで、あっけない幕切れであった。
(2004.01.07)
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