近鉄けいはんな線(生駒~学研奈良登美ヶ丘)
人間と同じで、鉄道路線にも将来への期待を背負い産声を上げる者、そして役割を全うし静かに息を引き取る者、その運命はこれからも決して終わることはなく巡って行きます。
我が関西でも、来年の4月1日に北播磨を走る第3セクターのミニ鉄道路線、三木鉄道の廃止が決定しています。私も一度乗車したことがあり、そのうちこのブログでも書いてみようかと思っていますが、最早現代では存在意義を失っているとはいえ、数多の人生を乗せてきたであろう鉄路が消え行くさまを見送るのは、いつの時も寂しいものです。
その一方で、人々の期待を一身に背負い生まれてくる路線もあり、2008年度末には中之島~天満橋間の京阪中之島線、2009年春には阪神西大阪線の西九条~難波間の延伸区間(開業と同時に尼崎~西九条間も含め『阪神なんば線』に改称)と、関西の交通地図を塗り替えるであろうビッグプロジェクトが続々と進行しています。
そして2006年3月27日に開業した近鉄京阪奈新線(仮称)、生駒~学研奈良登美ヶ丘間も、生まれたばかりのホヤホヤ。開業と同時にかつては近鉄東大阪線と呼ばれていた長田~生駒間と一体化し、『近鉄けいはんな線』として新たに生まれ変わりました。
私も開業から4ヶ月後のある夏の日、試乗しに行って参りました。レポートというよりは唯の印象記ですが、ごく簡単にご紹介します。
スルッとKANSAI 3dayチケットで京都の未乗区間を乗りつぶした後、午後3時過ぎに近鉄生駒駅に到着しました。けいはんな線ホームに下りると、駅名板はライムグリーンを基調としたデザインに変更され、まるで新線の駅のような雰囲気。そして長らく終着駅であったのが、両端に駅名が表示されています。昼間は15分間隔の運転、生駒止まりの電車を見送ってしばらく待っていると、大阪市営地下鉄の緑帯を巻いた車両が入ってきました。
電車は生駒駅を出発すると、東生駒駅と奈良線・けいはんな線双方の車庫を眺めながら緩やかに左カーブを切り、すぐに東生駒トンネル(3.6km)の闇へと吸い込まれていきます。今回開業した新線区間は丘陵地帯を貫くため、延長8.6kmのうち実に6割がトンネル区間です。
トンネルを抜け出ると最初の停車駅、白庭台(しらにわだい・駅番号C28)に到着。半地下式のホームです。後ほど全駅に降り立ってみますが、まずは終点までそのまま乗車します。
再び短いトンネルを抜け、橋を渡ると僅か800mで学研北生駒(がっけんきたいこま・駅番号C29)。隣の白庭台からは見えているほどの近さです。こちらは高架駅で、ホームからは田園と住宅が混在した風景を眺めることが出来ます。
ここから終点までは明かり区間。登美ヶ丘車庫を横目にしばらく丘を直線的に貫きながら走ると、終点の学研奈良登美ヶ丘(がっけんならとみがおか・駅番号C30)に到着。駅前に巨大なショッピングモールがオープンしたばかりで、ホームには想像以上の人数が降り立ち、駅前広場も大賑わい。
駅前広場からの人の流れに沿って、開業記念のバルーンが上空に浮かぶ「イオン奈良登美ヶ丘ショッピングセンター」の中へ。2日前に開業したばかりで、モール内は芋の子を洗うような混雑。実は私もこのショッピングセンターの開業に合わせて、けいはんな線を訪れようと考えていたのです。一通り回ってみますが、めぼしい物は見つからず。フードコートでタピオカ入りのミルクティーを飲みつつ、ほっと一息つきます。
ショッピングセンターを出た後は、さっきからずっと気になっていた、駅の東側にある長い階段の方へ向かって歩きます。
高架の端っこにはこんな絵が描かれています。ここからの延長計画はありますが、ルートさえもまだ正式決定しておらず、まだまだ先の話になりそうです。
例の大階段を見上げますが、あまりにも長すぎて終点が見えません。元々この辺りと上の住宅地を結ぶ里道として存在していたものを、けいはんな線開業と同時にこのような立派な階段に改修したそうです。
まあ繋がっているというだけで、実際に上り下りするのは非常にしんどいです。毎日通勤通学買い物にと利用している人は大変ですね。特にこんな暑い夏の日には。
階段の途中から駅方向を眺めます。開業したてのショッピングモールの華やかさが伝わってきます。
ようやく頂上に辿り着きました。一戸建ての住宅が整然と並んでいる、典型的なニュータウンの風景ですが、個々の家は建てられてからそれなりに年月が経過した感じで、割と古くから存在する住宅地のようです。鉄道開業前は、やはり近鉄奈良線の学園前までバスで出ていたのでしょうか? 鉄道開業を機に、新しい区画が続々と整備されつつありました。
しばらく散歩した後、駅に戻ります。ホームに上がり様子を撮影。ホームドアや物理的な柵ではなく、赤外線感知式のセンサーが設置されています。けいはんな線は既開業区間を含めて全線でワンマン運転が実施されています。
今度は近鉄車両。けいはんな線開業を機に新型車両が導入されたほか、従来からの車両も大幅な改修が施されました。新型車両は従来の車両と瓜二つのデザインで、一見すると見分けはつきません。今乗っている車両も果たしてどちらなのか・・・?
一駅乗車し、学研北生駒で下車。元からあった市街地に、突如として高架駅が出現した様子です。かといって浮いているというわけでも無さそうですが。
さて、前述のようにここから隣駅の白庭台までは直線距離でわずか800m。これなら歩いていけるのではないかと考え、駅前の地図を眺めます。途中には丘が横たわっていますが、どうやら山道らしきものが通じているようです。というわけで、地図をデジカメで撮影し、いざ出発。
駅前の道路を西へ進みます。小さな川を渡り、確かこの辺に北へ逸れる道があるはずでは・・・と見回していると、道路上空を通過する高い橋が。二次元の地図上ではとても分かりません。仕方なく畑の小道を伝っていき、橋と同じレベルにまでえっちらおっちら登って行きます。この辺りは山里の風景そのもの。とても歩いて10分程の場所にあんな近代的な駅があるなんて思えません。
ちょっとした山道で丘を越え、道が下りに転じると程なく白庭台駅が視界に入りました。途中でちょっと迷ったものの、学研北生駒駅からここまではたったの15分。
白庭台の駅に到着しました。駅舎は柔らかな温もりのあるデザインですが、駅前はまだまだ発展途上という感じ。ここから生駒方面はトンネルなので、気分を変えてバスで生駒駅まで出てみようかなと思いましたが、生憎至近の時刻のバスはなし。電車で帰ることにします。
ここからは生駒を通り過ぎて旧東大阪線区間を経由し、本町経由で帰宅しました。旧東大阪線区間では最高速度が従来の70km/hから、第三軌条方式では異例の95km/hに引き上げられましたが、実感するには至りませんでした。
以上、簡単ではありましたが近鉄けいはんな線をご紹介しました。これからも折を見て、昔の写真を引っ張り出しては記事を書いていきます。
(2006.07.28)
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