関西文化の日'07 (1)国立国際美術館
今年もやってまいりました関西文化の日。3日の日は前哨戦として兵庫県立美術館へ行って来ましたが、いよいよ17日(土)・18日(日)の二日間がメイン。最初は京都の美術館・博物館巡りを考えていたのですが、上手く日程が合わないことが判明して急遽プランを変更。結局近場の大阪市内で、国立国際美術館と大阪歴史博物館を訪れる事にしました。
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10時前に自宅を出発。まずは国立国際美術館へ向かうべく、川西池田からJRで新福島へ。何故か普通電車が本線側に入って来るが(通常は特急・快速退避の為に待避線側に入る)、車内放送によると先行する特急列車の遅れを引きずっているとの事。それでも尼崎でのJR東西線への接続は待っていてくれたようだ。
新福島で下車。通勤やその他諸々で幾度と無く通過しているが、この駅で降りるのは初めてである。印刷してきた地図に従い、中之島の方へ歩いて行く。
《新福島駅2番出口から西梅田方面を望む。前を走る道路は国道2号線》
道のりの途中で福島天満宮の横を通るが、この脇から始まる路地がまたいい味を出している。三叉路になっており、その角に建つ三角形の建物の佇まいも素敵。いきなりフェチ全開ですみません。
先へ進み、玉江橋を渡って中之島へ。渡り切った所を右へ行けばリーガロイヤルホテルで、来年にはこの近くに京阪中之島線の中之島駅(仮称は玉江橋駅だった)が設置される。開業を一年後に控え、まだまだ地上部分の工事は続いていた。
堂島川沿いにはプロムナードが整備されており、中之島に来る度にここを散歩するのが楽しみである。ちょうど船がやって来たので、中之島のビル群をバックに一枚。
中之島へ渡ってしばらく直進し、案内板に従って細い路地を左へ。更にしばらく進むと、右手に大阪市立科学館の建物が見えてきた。国立国際美術館の入り口は、この科学館に隣接している。
科学館の前には、芋虫からアンテナを生やしたかのような、不思議な形をした美術館のエントランスが建っている。この美術館は、本体部分が全て地下に埋まっているという珍しい構造。ガラス張りのエントランスは、まるでルーブル美術館のピラミッドを思わせる。行った事はありませんが・・・
エスカレーターで地下1Fに降りると、そこはエントランスホール。また、ミュージアムショップや情報コーナー、レストラン、講堂などがこの階にある。
そして地下2Fが常設展示室。今日は関西文化の日の為、このフロアは無料開放されている。地下ではあるが天井の窓からは外光が採り入れられ、1Fから吹き抜けになっていることもあり、圧迫感は全く感じない。
▼コレクション3:1960年代以降、今日までの美術
というわけで、私の苦手な現代美術。本来なら気に入った作品の感想を述べて行く所なのだが、やはりと言うか何と言うか、コメントするには表現が抽象的過ぎて・・・ あと、先々週に兵庫県立美術館の優れた展示室のデザインを見て来ただけあり、作品の掛けられた壁が安っぽいパネルだったのが少し気になった。
その中で、私の心を鷲掴みにした写真が30枚ほど展示されていた。それは宮本隆司氏撮影の「九龍城砦」。九龍城砦とは宋の時代に、現在の香港・新界地区に建てられた砦だが、一般的にはその跡地に建設された、無秩序なビルが集まったスラム街を指す場合が多い。
生憎ここにはその写真を掲載していないが、一度でも見ればその異様な光景が脳裏に焼きつくことは間違いない。私が興味を持った頃には既に取り壊され、綺麗な公園に化けてしまっていた。昨年その公園を訪れたのだが、当時の面影は全くと言って良いほど残っておらず、残念な思いをしたのを覚えている。
大きく引き伸ばされた写真パネルを、ひとつひとつ丹念に眺めていく。建物内の頭上を好き勝手に引かれた水道のパイプや電線が走り回り、床は汚水で水浸し。狭い住居には窓も無く、細い路地が迷路のように張り巡らされ、道端にはゴミがそこら中に打ち捨てられている。さながら地底世界のような場所からようやく屋上に出れば、夥しい数のアンテナが林立しており、真上を今はなき啓徳空港へ着陸する航空機が頻繁に通過していく・・・
このように魔境と言っても差支えがない程の光景から、「よそ者が迷い込めば、二度と外へは出られない」などといった噂がまことしやかに流れ、その神秘性からここをモデルとした「クーロンズゲート」というゲームも生まれた。
そんな人間が住む環境としては最悪な場所ではあるが、歴史の悪戯によって生まれた、ある意味奇跡の芸術作品でもあり、だからこそこうやって美術館に写真が展示されている。今日はこれを見られただけでも、この美術館を訪れた甲斐があったというものだ。心なしか、他のお客さんもこれらの写真を最も熱心に眺めていたような気がする。
九龍城砦だけで終わってしまっては、他の作品群に対して申し訳ないので(笑)、一つ面白かった作品を紹介。メイン展示室とは別の部屋にある、高谷史郎氏の「optical flat / fiber optic type / optical flat / fiber optic type」(長ぇ・・・)。規則的な映像を映し出す液晶画面の上に小さな円錐台が乗っており、その上底部分にも同じような映像が映っている、という作品。じっと見つめていると不思議な感覚に陥ってしまう。
地下1Fに戻り、情報コーナーへ。宮本隆司氏の写真集を探していると、やっぱりあった! パネル展示はされていない写真もふんだんに収録されており、時間を忘れて見入る。
というわけで、九龍城砦に始まり九龍城砦に終わった国立国際美術館。次の目的地は大阪歴史博物館である。
(2007.11.17)
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