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2008.01.11

台湾一周の旅3日目 (3)縦貫線(桃園~台中)

桃園(タオユエン)ではホームに沢山の乗客が待っていた。私の席にもヌシがやって来そうだったので、指定された席に戻る・・・のだが、ここで一計をめぐらし、窓側の席に陣取っておく。案の定、窓側の指定券を持った男の子が現れたので、「窓側と通路側を交換してもらえませんか?」と交渉。幸いにも、屈託のない笑顔と共に二つ返事で快諾してもらえた。謝謝~! 余談ではあるが、台湾語で「ありがとう」は「感謝(カムシャー)」というらしいのだが、滞在中にこのフレーズは一度も耳にする事はなく、100%北京語の「謝謝(シェシェ)」が使われていた。

桃園で満席となり、ここからは約1時間半の間、台中到着までノンストップで走っていく。E1000形の最高速度は120km/hで、特急(自強号)や急行(呂光号)、客車鈍行(復興号)や貨物列車まで、多種多様な列車が行き交う大幹線を駆ける様子は、さながら国鉄時代の特急列車を彷彿とさせる。私が物心ついた時は既に国鉄からJRに移行する頃だったので、当時の様子は写真や時刻表から窺い知るほかないのだが、台湾の鉄道に国鉄全盛時代の郷愁を抱くオールドファンの気持ちも分かるような気がする。

ところで台湾高鉄が開通してなお、西部幹線が多数の優等列車が行き交う大動脈としての地位を維持しているのは、依然として台鉄が都市間輸送の分野において競争力を消失していない証左である。台湾高鉄が既存の中心駅に乗り入れているのは台北駅と板橋駅、そして未開業の高雄駅のみで、現在他の路線と接続している駅も台中駅(在来線は新烏日駅)と左営駅(在来線は新左営駅、加えて間もなく高雄捷運が開通)だけ。残りは現状では高鉄の単独駅で、市街地からは離れた場所に設置されている。既に成熟した市街地に線路を引き込むのは至難であることは確かだが、やはり無理をしてでも市の中心部に乗り入れるべきではなかったのだろうか。

隣の席の男の子も桃園~屏東という長距離移動。高鉄経由ならば高鉄桃園までバス→左営で在来線へ、と2回の乗換えが必要で、駅へのアクセスと乗り換えのロスとで、高速鉄道の速達性が大きくスポイルされてしまう。私の場合も嘉義まで高速鉄道を利用するとすれば、高鉄嘉義から台鉄の嘉義駅まではBRT(連絡バス)で30分を要する。台鉄の運賃面での優位もあり、恐らく将来に於いても、高速鉄道が都市間輸送を完全に代替するには至らないであろう。在来線の天下も安泰である。

車窓からの風景に戻ろう。西部幹線から海が見える区間は新竹の次、香山~崎頂の一駅間くらい。折角窓側を譲ってもらったのにも拘らず、日本とあまり変わり映えのしない、田園地帯に集落が散らばる単調な風景が続くものの、南下するにつれて次第に晴天が広がり、心が浮き立ってくる。


【動画】香山~崎頂間を走る車窓から
[320×240, 30fps, WMV, 798KB, 15秒]

竹南で縦貫線は海線と山線に分岐する。基隆~高雄間の縦貫線が全通したのは、日本統治時代の1908年。当初は山線ルートで開通したが、山岳部を走るこの区間は勾配がネックとなり、当時の非力な機関車では貨物列車の増結が困難で、ついには滞貨事件が発生してしまう。輸送力増強の為に山線ルートのバイパス路線として建設されたのが海岸線、通称海線である。海岸線の開通と同時に従来の本線は台中線と命名され、山線の通称で区別されるようになった。

しかし、貨物列車はともかく、旅客列車が台湾第3の都市である台中をバイパスしてしまうのは、利便性・効率性の両面において極めて不合理。あくまでも旅客列車にとってのメインルートは山線であり、それを裏付けるかのように順次線形改良と電化、そして複線化が行われる。1998年には最後まで残った単線区間が複線の新線に切り替えられて、長年の懸案であった輸送力増強が完成し、幹線としての面目を一新した。


【動画】竹南駅で分岐する山線と海線
[320×240, 15fps, WMV, 1.54MB, 1分20秒]

景色は徐々に山がちになるが、それでもペースは衰えることなく、軽快に走っていく。

三義を過ぎると列車は三義トンネルの闇の中へ。平坦区間が大部分を占める縦貫線の行程中で、唯一の長大トンネルだ。このトンネルの開通によって輸送の隘路が解消されたのだが、それと引き換えに山間を縫って走る風光明媚な区間は廃止され、風情が失われてしまったのは惜しい。もっとも、この区間は貴重な産業遺産として保存する機運が高まっているらしく、中華民国行政院によって世界遺産候補に選定されている。保存鉄道として復活する日も決して夢ではなく、今後の動向から目が離せない。

トンネルから抜け出ても高規格区間は更に続き、列車は高架上をハイスピードで快走する。

10時30分頃、長らくノンストップでひた走ってきた車内に、久方ぶりのアナウンスが入る。車内がざわつき始め、やがて列車は台北から2時間かけて、台中(タイツォン)駅のホームへと滑り込んだ。嘉義までは残り1時間である。

次回こそは嘉義に到着できる・・・かな?

(2007.10.15)


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