北播磨ぶらり旅 (5)三木鉄道・後編(厄神~三木)
発車時刻が近づいても一向に乗客は増えず、私と老齢の女性、そして運転手と親しげに話す老齢の男性の3人を乗せて出発。三木まで6.6km、13分間の短い旅です。
加古川を渡る為に左へと弧を描いていく加古川線を横目に、三木鉄道の線路は田畑と人家が混在する田園地帯をまっすぐに進んで行きます。ここから終点三木まで、若干のカーブはあるものの一直線に東へと針路を取っています。厄神を出発してすぐ、左手にはJR西日本・加古川鉄道部の厄神基地が見えます。
2分で最初の駅、国包駅(くにかね)に到着。早くも運転手と挨拶を交わしつつ、男性が降りて行きました。
続いて1分で宗佐駅(そうさ)。国包とは500mしか離れていませんが、それもそのはず、この駅は第三セクターへの転換後に利用客の増加を図って新設された駅で、簡便なホームが設置されているだけです。この先、下石野・西這田・高木も同様で、途中駅の7駅中4駅が三木鉄道への転換後に新設された駅。駅間距離が唯一1kmを超えるのは石野~西這田の1.7kmで、全線の平均駅間距離は800mとなります。
ここで女性が下車し、乗客は私一人に。結局この列車でこの先の乗降はなく、私のような物好きが居なければ無人で終着駅へと向かっていたわけです。運転手氏も私の素性を察していたようで(厄神駅でパシャパシャ写真を撮ってたし)、駅に接近し一応徐行するも、ドア扱いの素振りも見せず通過して行きます。
右手には丘が迫っていますが、左手は開けた田園地帯。その向こうには美嚢川が流れています。国道175号線の高架をくぐり、最後の途中駅・高木を出ると、もう三木市街の中。物足りなさを感じる程の短い旅を終え、終点三木に到着しました。
三木駅は唯一の駅員配置駅ですが、運賃の精算は原則的に車内で行い、駅での乗車券の発行は回数券や定期券等のみとなっています。
外に出て駅舎全体を眺めてみます。風格漂う立派な木造駅舎で、さすが元国鉄です。但し、三木市の中心は美嚢川を渡った神戸電鉄の三木駅周辺で、ここからは1km近く離れています。一応両駅を結ぶコミュニティバスが運行されているものの、そもそもこのバスは三木鉄道の線路に並行して走っており、わざわざ列車と乗り継ぐ需要があるのかどうか。
このようにたった一度の試乗ではありましたが、この頃は既に廃止の気配が濃厚になっていた時期。この年1月の市長選で三木鉄道廃止を公約に掲げた市長が当選し、最早風前の灯ではありましたが、結局そのままトントン拍子で廃止が決定してしまいました。市の中心へ乗り入れていないのは致命的で、一時はDMV(デュアルモード・ビークル。線路と道路の両方を走行出来る車両)の導入によって活路を見出そうと模索されていた時期もありましたが、もとより鉄道でなければならない理由が見当たらないのです。そのままこの話は立ち消えとなり、ファン心理からすれば残念と申すべきなのでしょうが、やはり廃止もやむなしといった所でしょう。有り体に言えば市民の税金で動態保存を行っているのに等しく、赤字の補填資金をきめ細やかな路線網をもつコミュニティバスの充実に振り向けた方が、はるかに有用です。
ということで、ファンとしては唯々、長い間本当にお疲れ様でしたと言うほかありません。Xデーは今年の3月31日。それまでどうか無事故で職務を全うし、有終の美を飾って頂きたいと願っております。
次回は三木の街をそぞろ歩きます。
(2006.05.31)
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