台湾一周の旅5日目 (5)南廻線(枋山~台東)
東へと針路を変えた列車は山間を右へ左へ車輪をきしませつつ、徐々に高度を上げていく。振り子列車のようなスピードは望むべくも無いが、優等列車らしい風格を備えた走りぶりには違いない。
西海岸最後の駅、枋野駅を通過。時刻表には駅として掲載されているが、客扱いを行う列車は一本も無く、実態は信号所である。
更に谷を詰め、中央信号場を過ぎると線路は複線に。すぐに全長8kmの中央トンネルへと吸い込まれていく。ここから古荘駅までは複線化されており、篠ノ井線の明科~西条間(こちらは路盤が複線対応になっているのみで、実際は単線だが)のような雰囲気だ。闇が続く間にトイレへ。
トンネルを抜け、列車は東海岸へ。勾配を下り、古荘駅を通過してしばらく走ると、右手には太平洋が現れる。20分少々の山越えだった。
9時ちょうど、東海岸へ出て最初の駅、大武駅に到着。行程も3分の2を消化し、台東まではあと1時間。ここから終点台東まで各駅停車となる。
台湾海峡を望む区間は10分弱だったが、太平洋側は知本の手前まで約40分間、延々と海岸沿いを走り続ける。空はすっきりと晴れ渡り、波間がキラキラと輝いている。今年の5月に五能線を訪れた際は天候に恵まれず、どんよりと灰色に沈んだ日本海にがっかりさせられたが、今回は文句無しの晴天。江戸の仇を長崎で・・・である。
海岸沿いの各駅の駅間距離は10km前後と長い。かつては瀧渓~知本の各駅間に三つの駅が存在したが、利用客が僅少だった為に廃止となっている。特に香蘭と三和の両駅は設置から10年を待たずして廃駅となっており、見通しが甘いのでは・・・などと思ってしまった。
9時35分、太麻里駅に到着。台湾の原住民、排湾族(パイワン)の人々が多く暮らす町である。同じ熱帯に属するとは言え西海岸とはまた違った空気を、窓越しでもひしひしと感じる。
台湾東部最大の温泉郷、知本温泉の玄関口である知本に到着する直前、台東空港へのファイナルアプローチに入っている旅客機と併走する。台東は台北からの陸路でのアクセスは不便なので、航空機の果たす役割は大きい。
この先しばらくは海ともお別れ。列車はラストスパートをかけ、10時ちょうどに台東駅のホームへしずしずと進入した。ホームへ降りると、すぐに機関車が切り離されて退場して行く。駅出口へと消えていく人並みを尻目に、ホームに佇んでしばし長旅の余韻に浸っていた。気温は28度である。
(2007.10.17)
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