フランス (2-13)パリトラム2号線
Issy Val de Seine―[T2]→La Défense (Grand Arche)
2号線の電車は3号線のそれよりも短い5連接。3号線とは別仕様の車両が導入されていて、車幅が若干狭いほか車内のカラースキームも異なり、前面は上から下に窄まっていくような細さを強調したデザインになっている。この2号線、当記事では便宜的に「パリトラム」と称しているものの始点から終点までパリ市内は一切通過せず、また全線が専用軌道となっている。路面電車の車両を用いた郊外電車ということで、広島電鉄宮島線を想像して頂ければよいだろう。パリ市域外ではあるが全線でTicket t+が使用可能である。
《駅ホーム。暫定的な終着駅である現在は、左が出発ホーム・右が到着ホームとして使用されている》
《駅北側の引上線を眺める。2009年の開業を目指してPorte de Versaillesへの延伸工事中》
引上線から電車が移動してきたので乗り込み、まずは車内の刻印機に切符を通す。私のチケットは一日乗車券であり、しかも使用済みの磁気情報が既に書き込まれているので改めてキャンセラーを通す必要があるのかどうか疑問だったが、大した手間でもないのでここは安全策をとっておいた。液晶画面には「Merci Bon Voyage」と表示されたが、たかだか数十分の乗車で「よい旅を」とは・・・(笑)
進行方向右側の座席に腰掛けると、夕方らしくかなりの乗客を乗せて慌しく出発。セーヌ川の流れはパリ市内を抜けると南から北へ180度反転するのだが、トラムはほぼ全線に渡ってこのセーヌ川の左岸にへばり付くように進んで行く(アルファベットのJを鏡写しにしたような線形)。「Trans Val-de-Seine(セーヌ渓谷線)」の別称がついており、1993年まではフランス国鉄の郊外路線だったものを改修して1997年にLRTとして再出発したそうだ(現在はRATPによる運営)。
線路は一見するとフランス国鉄時代そのままのような印象で、今すぐにでもTGVが乗り入れて来られそうだが、そんな鉄道線仕様のレールをサスペンションが効いていない低床車が走るものだから、レールの継ぎ目を越える度に「ゴツッ!ゴツッ!」と強烈な振動が伝わってくる。座席が硬いためにダイレクトに響いてくるような感じで、試乗を続けているうちに慣れもあってか次第に気にはならなくなったものの、乗り心地の面では少々厳しい評価を下さざるを得ない・・・かも。
そろそろ空も黄味を帯び始め、西日にキラキラと輝くセーヌ川に沿って大きく右カーブを切っていくと、早くもラ・デファンスの高層ビル群が視界に入ってきた。パリ市の西側一帯は高級住宅街として知られている地域だそうで、沿線には住環境の良さそうな緑の多い住宅街が続く。
5駅目のMusée de Sèvresではセーヴル橋を介してメトロ9号線に連絡している。セーヴルはヨーロッパ最古の磁器のひとつであるセーヴル焼の生産地で、駅前には宮殿を思わせる国立陶磁器美術館(Musée National de Céramique)が重厚な佇まいをみせている。
ここから先は起伏に富んだ地形となり、深い切り通しを抜けたりと「セーヌ渓谷線」の名にし負う風景になっていく。Les Coteaux駅ではトラムの前身となる国鉄路線が開業した当初からとおぼしき駅舎が線路の上空を跨いでおり、他の駅でも年季の入った古い駅舎が保存されている様子を度々目にした。とある高台の駅ではブーローニュの森越しにエッフェル塔が美しいシルエットで聳え立つさまを眺めることが出来たりと、車窓は変化に富んでいてなかなか興味深い。
Issy Val de Seineから約25分。左手にトランジリアンが寄り添ってくると風景は閑静な住宅街から突然ビル街へと変わり、地下駅の趣のラ・デファンス(La Défense)に到着。この先でも延伸工事が行われているが、目下のところここがトラム2号線の終着駅である。到着した電車はそのまま折り返し列車となり、家路を急ぐ人々を満載してIssy Val de Seineへ向けて走り去って行った。
(2008.04.05)
〔関連記事〕パリトラム3号線
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