フランス (2-14)ラ・デファンスにて
ラ・デファンスはパリ市北西の郊外に位置するパリの副都心。景観保護を目的として厳しい建築規制が敷かれているパリ市内では殆どお目に掛かれない超高層ビルが林立し、ヨーロッパ大陸最大の都市の面目躍如たる一大ビジネスセンターを形成している。Défenseは英語のDefenceと同義で、1870年に勃発した普仏戦争においてこの付近でパリ防衛の戦闘が行われ、その記念碑が置かれたことから名付けられたそうな。
ラ・デファンス駅にはトラム2号線の他にメトロ1号線とRER-A線、そしてフランス国鉄のトランジリアンが乗り入れており、原則的にパリ市内のターミナル駅を始発・終着とするトランジリアンでも例外的にこの駅をターミナルとする系統も存在するなど、鉄道交通の面でも重要な拠点駅となっている。そのラ・デファンス駅、副駅名として「Grand Arche(グランダルシュ)」の名が付けられているが、まずはさておきこのラ・デファンスのシンボルであるグランダルシュを一目見ようと、地上へ出る階段を上る。
グランダルシュ。直訳すると「大きなアーチ」となるが、日本ではエトワール凱旋門になぞらえて「新凱旋門」と意訳される事が多い。一辺が105mの巨大な立方体となっており、『地球の歩き方』によるとこの105mという数値はルーヴル宮の真ん中にある方形広場の一辺の長さと一致しているとか。「新凱旋門」とは言っても1989年(=フランス革命から丁度200周年)に完成した新しい建築物なので戦勝の記念碑でもなんでもなく、実態はオフィスビルである。
このビルのてっぺんは展望台となっており、中央の広場から頼りなさげなエレベーターのフレームが伸びている。日没までにはあと少し時間があるが、もう午後7時半過ぎなので展望台への入場受付は終わっていた。風が強くなり、遮る物もなくグランダルシュをビュービューと吹き抜ける風に当たってワイヤーが怪しい音を立てている。
広場から東南東方向を見渡すと、オフィスビルの谷間の向こう側にエトワール凱旋門が遠望できる。更にシャンゼリゼ通りを経由してコンコルド広場、そしてルーヴル宮殿の中庭まで8kmに渡る一直線上にこれらのモニュメントが並んでおり、近代から現代へ連綿と続く壮大な都市プランに脱帽である。
パリを訪問する日本人は多かれど、本家の凱旋門を差し置いて先にグランダルシュを訪れる人間はそういないだろうなぁ。凱旋門観光は明日のお楽しみである。
反対側(都心とは逆方向)はラ・デファンスの外れで、その向こうには果てしなく郊外の風景が広がっている。東京の西郊といえば立川、八王子、そして関東平野ぎりぎりの高尾まで延々と市街地が途切れないが、ここから見える丘陵は自然のままの姿を留めており、パリ首都圏のコンパクトさ、そして東京の異常な人口密度を実感させられた。
ラ・デファンスを通る高速道路・幹線道路・鉄道は外周や地下に配置されているので、地区の中央を貫く人工地盤上のメインストリートは歩行者天国となっている。だだっ広い歩道の真ん中に立ち、未来的な人工都市に身を置く私の脳裏をふとよぎったのが、出身地である神戸市の西神中央駅前の風景である。流石にこちらの方が10倍凄いけど。
純粋なオフィス地区というわけではなくホテルや大型商業施設も多いので、殺風景どころか結構活気がある様子である。とはいえショッピングに興味があるわけでもなく、強い風は吹き付けるしこれからエッフェル塔にも行かなきゃならんしで、20分程の滞在でラ・デファンスを後にすることにした。
La Défense (Grand Arche)―[RER-A]→Charles de Gaulle Etoile―[M6]→Trocadéro
ここからエッフェル塔へ向かうにはまずシャルル・ド・ゴール・エトワール駅を目指すことになるが、メトロ1号線だと6駅に対しRER-A線ならたった1駅。RERならゾーンを越えるために運賃が高くなってしまうもののTicket Jeunesではそんな事を気にすることもなく、ごく自然な形でRERを選ぶことになったのだが・・・
いやいや、実は大誤算でした。RERは高速地下鉄とは言っても基本的には郊外電車なので、メトロと比較すると本数が目に見えて少ないのである。そして乗換駅のシャルル・ド・ゴール・エトワールでもホームが地下深くに位置し、後日乗車した1号線の浅さとはそれこそ天と地の差。エスカレーターを延々と乗り継ぐ羽目になってしまった。シャトレやリヨン駅辺りまで足を延ばすのならともかく、短距離乗車ならば並行するメトロの方が便利なようだ。
シャルル・ド・ゴール・エトワールからは今しがた乗車した6号線で3駅のトロカデロへ。今日一日を締めくくる、エッフェル塔の最寄り駅である。
(2008.04.05)
« フランス (2-13)パリトラム2号線 | トップページ | フランス (2-15)エッフェル塔 On Stage »
« フランス (2-13)パリトラム2号線 | トップページ | フランス (2-15)エッフェル塔 On Stage »
コメント