ドイツ (1-5)フライブルクトラムその1
《Bertoldsbrunnenですれ違う1系統の電車。「コンビーノ」と呼ばれる最新鋭の低床車両です》
Bertoldsbrunnen ―[2]→ DorfStraße [Günterstal]
Bertoldsbrunnenからトラム試乗のスタート。ストラスブールの場合とは異なり、フライブルクでは特に全線の制覇に拘ってはいなかったので、沿線のちょっと良さそうな景色を見つける、所謂「ロケハン」的な乗り方をしてみたいと思う。
まずは2系統の電車で南へ。ここを真っ先に訪れるつもりでいたのは、以前NHKの某番組でこの区間の沿線に住む家族にスポットが当てられ、緑豊かな風景が広がり何やら良さげな雰囲気だったのを確認していた為である。
ここで試乗の際の留意点として申し添えておきたいのは、電車の方向幕には「行先の駅名」ではなく「行先の地域名」が書かれていることである。例えばこれから向かう2系統の南の終点の停留所名は「DorfStraße」なのだが、方向幕にはその停留所が属する地域名の「Günterstal」が表示されている、といった具合。当ブログでは終着駅を示す場合、混乱を避けるため 駅名 [地域名] という風に併記することにする。
Bertoldsbrunnenで乗り込んだ電車はドイツ・スイスやオランダ辺りではよく見掛けるタイプの、先頭が台形状に窄まった細身の車両である。ストラスブールのトラムやコンビーノのような最新型の車両を見慣れた目にはやや古典的にさえ映るが、走りはあくまできびきびと、そして出入り口付近はノンステップになっていたりと、現代のLRTに求められる要件はしっかりと満たしている。
運転席の真後ろ、前面展望が眺められる「かぶりつき席」に腰掛ける(ちなみにここは優先席です)。出発するとすぐにマルティン塔の門をくぐり、旧市街の外側へ。まもなくトランジットモールも終わり、線路は幹線道路の真ん中へと飛び出していく。次のHolzmarktを出ると、フライブルクの市街地を南北に分かつドライザム川(Dreisam)に架かる橋を渡る。この川から分岐した疎水が旧市街を流れるベッヒレとなり、再び川に合流するとやがてライン川に注いでいくことになる。
《Holzmarkt~Johanneskirche》
2駅目のJohanneskircheで3・5系統の線路が右手へ分かれていき、2系統の単独区間へ。程なく中層の建物が道路の両側に建ち並ぶ市街地は尽き、木々の合間に一軒家が建ち並ぶ緑溢れる住宅街へ入っていく。並木道には道幅の2/3を占拠するように線路が敷かれ、北行きは自動車と共用する区間となるが、幹線道路ではなく渋滞の心配もない為問題にはならないのだろう。
しばらく進んでいくと次は道路の脇を走る専用軌道に。里山の風情漂うのどかな谷間を走る軌条はヘビーレール仕様のしっかりとしたもので、乗り心地・スピード共にまるっきり郊外電車そのものといったところ。Wonnhaldeを出たところで進行方向右手には確かに見覚えのある緑の草原が広がり、例の番組のワンシーンが脳裏に蘇る。
《専用軌道区間》
やがて専用軌道区間も終わり、集落の真ん中に出て狭い通りをしずしずと進んでいく。最後は単線区間となり、アパートらしき建物をくぐったり終点のすぐ手前で対向列車と行き違ったりと楽しませてくれ、終点のDorfStraße [Günterstal]に到着。デジカメ写真のタイムスタンプによるとベルトルトの泉からの所要時間は15分だったが、都心からそんな短時間で来れるとは思えない程に山深い場所でちょっとビックリである。
この駅では21系統というバスに接続していて、これに乗って行けばロープウェイに乗り換えてシャウインスラントという標高約1200mの展望台へアクセスできるようになっており、フライブルクの身近なピクニック・ハイキングコースとして人気があるそうだ。ちょっとだけ山へ上っていく道を歩いてみたが、道路の傍らには山から下ってきた清流が流れ、沿道の住宅はまるで別荘地にも見えてしまうほどに優雅な空気が流れている。仮にここからフライブルクの都心部へ通勤するとすると、トラムを使えば所要時間は僅かに15~20分。こんな清らかな山の懐に抱かれて、しかも痛勤地獄とはまったく無縁の暮らしとあっては、都会で毎日のように通勤ラッシュに揉まれる日々を今すぐにでも考え直したくもなってしまう。
次回へ続きます。
(2008.04.09)
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