阪神なんば線に試乗しました・その3
快速急行の後続となる普通東花園行きに乗車します。この車両はロングシートとクロスシートの切り替えが可能な、通称「L/Cカー」。阪神線への乗り入れ運用に就く際には原則としてロングシートに固定されるそうで、実際この列車もロングシートで運行されていましたが、聞いた話によるとクロスシートで走っていた快速急行もあったとか。今日は初乗り組、そして高校野球の観客輸送で特に混雑していますが、平常時ならば平日のラッシュ時でなければクロスシートでも問題なさそうですし、実際の運用はかなり柔軟に行われているようです。これもお仕着せの規則に囚われない大阪の良さかも。
西九条を出るとしばらく地上区間を走りますが、前のエントリでも触れたように軌道は防音シェルターで覆われ、高架区間ながらも景色を見ることは出来ません。このシェルターが途切れると、安治川に架かる橋梁を通過。この橋のすぐそばには河底をくぐる人道トンネルが通っており、私も2006年の夏に見学に訪れたことがあります。当時はようやくなんば線(線名はもちろん未定でした)の軌道の橋脚が立ち始めたばかりで、「本当にここに電車が走るのだろうか・・・?」と半信半疑でしたね。また機会を改めて地上からこの高架区間を眺めてみたいと思っています。
【追記】
後日、地上からこの高架区間を眺めてみました。こちらのリンクから
安治川を渡りきると、地下の九条駅へ向けて急勾配で下っていきますが、この付近は騒音を懸念した商店街や住民によって建設の反対運動が行われ(正確には“地上を走るプラン”の、ですが)、訴訟にまで発展し交渉が難航したいわくつきの場所。シェルターはそのままトンネルの坑口まで続き(篇額に何やら意味ありげな文が書かれていましたが・・・)、地下区間に入って間もなく九条駅に到着します。
西九条~九条間で乗車した電車。帝塚山大学の広告がラッピングされていますが、キャンパスは奈良県内なので東花園行きでは辿り着けません(笑)。
昨秋に開業した京阪中之島線もそうだったのですが、此方なんば線の地下駅も識別効果を狙い、それぞれに趣向を凝らしたホームデザインとなっています。ここ九条駅はホワイトの壁面に丸い窪みが規則的に並び、みるからにポップな印象。ベンチも円形になっており、座面も丸型。とことん「丸」にこだわっているようです。
九条は大阪市営地下鉄中央線の同名駅との乗り換え駅。これはトリビア的なトピックなのですが、中央線は近鉄けいはんな線に直通しているので、九条駅から生駒駅へは阪神なんば線+近鉄奈良線と地下鉄中央線+近鉄けいはんな線のどちらを使っても乗り換えなしで行く事ができます。ちなみに運賃は前者が590円、後者が650円なので、後者が全列車各駅停車であることを考えると、この区間では阪神なんば線+近鉄奈良線に軍配が上がります。さらにさらに、九条という名前の駅はここ大阪の他に、奈良県内の近鉄橿原線、京都府内の京都市営地下鉄烏丸線にも存在し、どの駅の相互間をとってみても十分通勤・通学圏内にあるため、「九条⇔九条」なんて定期券も発行できてしまいます。
【追記】
九条駅の地上の様子はこちらのリンクから。
次の区間準急大和西大寺行きでドーム前駅へ移動。区間準急は阪神線内には初登場の種別ですが、曜日を問わずなんば線内は各駅停車となります。阪神の9000系電車でしたが、何度も乗ったはずのこの電車、近鉄への乗り入れ改造に伴い塗色が変更され、1000系と瓜二つに。実際、私も入線してすぐ近くに寄って来るまで分かりませんでしたし。
ドーム前駅はその名の通り京セラドーム大阪(大阪ドーム)の下車駅。オリックス・バファローズの本拠地なので、甲子園球場を本拠地とする阪神タイガースの双方がリーグ優勝なんて事になれば、関西版「サブウェイ・シリーズ」が実現することになりますね。地下鉄長堀鶴見緑地線のトンネルをくぐる為に、ホームは線内最深となる地下30mに位置します。2駅手前の西九条駅が地上16mの高さにあるので、電車は2km弱の距離で50m近くの高低差を上り下りすることに。ホームの中央部分はその深さを逆に活かして吹き抜け構造となっており、地下駅であることを忘れさせる開放感に満ちた空間になっています。
この地は大阪ガスの発祥の地であり、ガス工場が煉瓦造りだったことから、この駅ではホームからコンコースに至るまで壁材として本物のレンガがふんだんに使われており、その総数たるや何と16万個。職人がひとつひとつ積み上げて作られたそうで、いやはや脱帽です。
ちなみにホームからエスカレータを一本上がった地下4階にもコンコースがあり(大阪ドームの下車駅なので混雑時のバッファとして機能するのでしょう)、ここから足下をくぐっていく電車を眺めることが出来る密かなビュースポットとなっています。
【追記】
ドーム前駅の地上の様子はこちらのリンクから。
4分後の快速急行は構内見学のために見送り、その次の普通東花園行きで最後の新駅・桜川駅へ。地下鉄千日前線との接続駅ですが、千日前線は全線に渡り阪神なんば線~近鉄奈良線(難波線)とほぼ並行しているため(特に桜川~鶴橋間は複々線同然の完全並走区間)、乗換駅としての意義は薄いです。また、南海高野線の汐見橋~岸里玉出間、通称汐見橋線の始発駅である汐見橋駅も同一駅と言ってもいい位の至近距離に位置するのですが(実際なんば線桜川駅の1番出口と汐見橋駅の駅舎は隣り合っています)、本格的に乗換駅としての機能を発揮するのは、汐見橋線が現在構想段階のなにわ筋線の一部として組み込まれてからのことになるでしょう。(下の写真はなんば線桜川駅ホームです)
ホーム壁面はストライプ模様になっており、上り線と下り線とでデザインが異なります。
《奈良方面行きは縦縞》
《神戸方面行きは横縞》
この駅では阪神と近鉄の乗務員の交代が行われ、また大阪難波駅の引き上げ線の一部がなんば線の本線に転用されたことから、桜川駅の神戸方にはこれを補完するための引き上げ線が設けられています。そのため阪神の駅ながら、阪神線内に乗り入れない大阪難波駅始発・終着の近鉄電車の姿もこの駅で見ることが出来ます。アーバンライナーでも来ないかな?と期待していたら・・・
おお、本当に来ましたよ。近鉄特急のほかにも大阪難波始発・終着の奈良線急行・普通電車が回送でしょっちゅうやって来るので、桜川~大阪難波間だけを見れば御堂筋線にも匹敵しそうな高密度区間となっています。桜川駅の折り返し線を使用する場合、大阪難波止まりの電車の乗務員交代もこの駅で行われるので、乗降客の少なさに反してなかなかホームは慌しい様子です。
【追記】
桜川駅の地上の様子はこちらのリンクから。
次回は阪神線を脱出し、近鉄奈良線に入ります。
(2009.03.21)
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