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2009.06.02

ドイツ (7-7)ラインの高速クルージング

列車はフランクフルト中央駅を出発すると(同時にフィッシュアンドチップスのパッケージもオープン)、10分も経たないうちに都会らしくもない雑木林の合間へと分け入っていく。最初の停車駅は中央駅からわずかに10分強のFrankfurt (M) Flughafen Fernbf(フランクフルト国際空港長距離駅)。1999年に供用を開始したばかりの真新しい駅で、未来的なデザインが目を惹く。この駅には私も4時間後に実際に降り立つことになるが、当方の列車への乗車は殆どなし。

この空港駅付近では連絡線が複雑に絡み合い、趣味的にもなかなか興味深い配線なのだが、列車の中からでは実感には至らず。ずっと続いていた雑木林を抜けると、特急らしい貫禄でもってマイン左岸の田園地帯を力走し始めた。

途中畑の真ん中で不自然に徐行する一幕もあったが、FF中央駅から約30分、マイン川とライン川の合流点のすぐ傍でライン川を渡河し、マインツ中央駅(Mainz Hbf)に到着。ここから次の停車駅・コブレンツまでの約50分間がこの列車のハイライトである、ライン渓谷沿いの景勝区間である。

マインツを出発するとしばらくの間ライン川とは距離をとって進み、いよいよ河と寄り添い始めるのはブドウ畑が山の斜面を埋めるビンゲン(Bingen)付近から。この町はライン下りの観光船の発着場にもなっており(最寄り駅はBingen (Rhein) Stadt)、通過する列車から眺める街並みもツーリスティックな雰囲気に溢れている。

川は満々と水を湛え、かなり大型の貨物船も頻繁に行き交っており、「父なる川」と畏敬の念を込めて呼ばれているこの大河は現代もなお、国際河川らしい物流ルートの一翼を担っているようである。そしてフランクフルトとルール工業地帯を結ぶこの鉄道もドイツの最重要幹線のひとつで、ICEやICといった優等列車が主に走る左岸線、そして対岸には貨物列車が主に使用している右岸線が通り、実質的に複々線区間となっている。先述のように2002年には高速新線が開通しており(但しライン川から遠く離れた丘陵地帯を通過している)、現在は三複線にまで達しているとも言えよう。

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川は行けども行けども蛇行を延々と繰り返し、流れを忠実にトレースする鉄道にとってもスピードアップの大きな足枷になっていたことは火を見るよりも明らか。それでも高速新線が開通した今なお、1時間に1本ないし2本のペースで優等列車が運行されており、リクライニングシートに座ってゆったりとクルージングを楽しめるのが嬉しい。80~90km/hという全力疾走には程遠いスピードも、ここでは全くもって問題ではない。

ラインの流れと流域に連なる小さな街々、そして山の上に点在する古城を眺めつつ進み、マインツを出て25分、列車はいよいよこの区間最大の景勝地であるローレライの岩へと差し掛かる。河岸に大きく掲げられた「554(スイスのバーゼルからの距離)」の文字を見送ったのち、じっと車窓に注意を払っていると、てっぺんに青い旗を頂いた断崖絶壁が見えてきた。ご丁寧に河岸には「LORELEY」と書かれており、列車は右カーブを描いてぐるりと見回すような格好で通過していく。

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《ローレライの岩》

「世界三大がっかり名所」などと揶揄されることも多いこの景勝地だが、確かにボーっとしていてはついつい見逃してしまう程度のインパクトかも。その険しい地形からここを航行する船にとっては古くから難所として知られていたポイントで、そこから生まれた妖精伝説の方にむしろ惹かれるのかもしれない。

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やがて両岸の地形が穏やかになり、川幅も広がってくると、もうコブレンツ(Koblenz)も近い。ここは父のラインに対して「母なる川」と呼ばれるモーゼル川との合流点に開けた町で、マインツから下ってくる遊覧船の最終到着地でもある。もっとも、マインツからの所要時間は5時間以上、ハイライトのリューデスハイム/ビンゲン~ザンクト・ゴアルスハウゼン/ザンクト・ゴアール間だけでも1時間半~2時間にもなるので、さすがに中だるみして結構退屈してくるという話も聞く。鉄道で駆け抜けた50分という時間は、集中力が維持できるという意味で丁度良い塩梅だったのかもしれない(ただ、左岸の古城は全く見えないけれど)。

ケルンまでの行程としてはコブレンツで残り1時間を切ったというところだが、依然としてライン川が少々距離を開けて並行しているものの、もうこの先は車窓に特に見るべきものはない。旧西ドイツの首都だったボン(Bonn)を過ぎれば残りは20分。煙突から煙がモクモク、というわけではないが、さすがに土地も工業地帯らしい密度になってきた。

そして列車は大都会の中へ。最後はライン川を鉄橋で渡り、右へググっとカーブしてケルン中央駅のホームへ入線。終始乗車率は2~3割と、編成の短縮どころか列車自体の設定の見直しさえも予感せずにはいられない乗り具合ではあったが、お蔭様で優雅な汽車旅を楽しませてもらったのだった。

(2008.04.15)


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