香港2008 (2-3)三棟屋博物館
三棟屋博物館(Sam Tung Uk Museum)は、かつてツェン湾にあった客家村(客家=中国北部をルーツとする少数民族)の集合住宅のひとつを保存・復元したもの。この一帯は1982年のMTRツェン湾線開業に伴う再開発地域に指定され、この博物館も高層マンション群に埋もれるようにして存在している。客家村といえば錦田の吉慶圍が日本人団体客もバスで乗り付けるほどに著名ではあるが(私は近くまで行っただけで実際に入ったことはないのですが)、あちらの見所は城壁くらいなのに対し、客家の人々の暮らしぶりを学ぶのにはこちらの博物館の方が断然良い。
《三棟屋博物館・外観》
《正面玄関》
エントランスホールに入ると、正面に中ホール、そしてその向こうには祠があり、この部分を軸にして建物はほぼ正方形の線対称になっている。吉慶圍や世界遺産にも指定されている福建省の土楼群ほどの堅固な城砦ではないにせよ、通路はすべて建物の内側を通り、住居部分は外壁沿いと通路の間の島に碁盤の目状に配置されている。真っ白に塗られた壁がまぶしい。
《広い通りだとこれくらい》
《狭い通り》
《風水の定番文句らしい「出入平安」と書かれた札。「鬼は外、福は内」のようなニュアンスでしょうか》
《正面奥の祠》
住居部分には家具やキッチン、農具などが展示され、かつての生活を色濃く伝えている。建物の性質上採光が著しく悪いのは致し方ないところだが、一つ一つの住居は今で言うメゾネットになっており、狭い空間ながらも機能的につくられている(申し訳ございませんが写真はありません)。
《再開発前、1970年代に撮影されたツェン湾の客家村の全景》
《博物館の空中写真。構造がよく分かります》
博物館最奥左の広い部屋は展示ルームになっており、客家村の歴史のほか、20世紀後半、この地が漁村から紡績産業の中心地として急激に発展していく様子を伝えている。現在製造業は中国本土の珠江デルタ地域へ軒並み移転してしまい、いまや香港は第三次産業のみで身を立てているのは知られている所である。
右奥のレクチャーホールでは客家の人々の漁業風景や手工芸品の製作風景などが上映されており(香港のテレビ局の製作らしい)、住居や展示室のほかにこのビデオまでじっくり見ていたら、早くも1時間以上が経過していた。訳あって銅鑼灣に11時半頃には着いておきたいので、11時前に三棟屋を後にする。この博物館、入場料は無料なのだが、そうとは思えないほどの充実した展示内容だった。寄り道候補には間違いなく最適な場所である。
(2008.12.22)
« 香港2008 (2-2)ツェン湾西~ツェン湾 | トップページ | 香港2008 (2-4)2世紀越しの罰ゲーム »
« 香港2008 (2-2)ツェン湾西~ツェン湾 | トップページ | 香港2008 (2-4)2世紀越しの罰ゲーム »
コメント