香港2008 (5-8)米埔自然保護区にて
バス通りをしばらく先へ進んでいくと「米埔自然護理区(Mai Po Nature Reserve)」と書かれた道路標識があり、これに従って左折。大型トラックの駐車場の横を抜けると、池と原っぱしかない無人地帯へ入っていく。午後2時と最も気温の上がる時間帯だけあってジリジリと肌を刺す日差しは初夏を思わせ、道沿いの草むらから聞こえてくるジージーという虫の声がその暑さを増幅させる。木陰なんぞは行けども行けども全く見当たらず、快晴の空の下、地平線に向けてただひたすらに一本道が延びている。
時折車が通り過ぎるのみで歩行者とは一切出会わないまましばらく歩いていくと、やがて池越しに忽然と現れる深センの街並み。手前の鄙びた風景と奥の高層建築群が、ミスマッチという言葉ではとても表現し切れないほどの奇怪な景観を生み出している。昔アフリカのどこかの国で、野生動物が闊歩するサバンナの向こうに都会のビル群がゆらゆらと浮かぶという映像を見た記憶があるが、あれに似た違和感を抱いた。
《米埔から眺める深セン・福田口岸。MTR落馬洲駅の駅舎も確認できます》
道沿いで見掛けた政府公告の立て札。この辺りを広州-深セン-香港を結ぶ高速鉄道の線路が通過するらしい。広州-深セン間は2010年、深セン-香港間も早ければ2014年に開業する計画とのことで、中国の鉄道事情に疎い自分にとっては日本や欧州の数倍ものピッチで急速に高速鉄道網を伸ばしていることに驚きを禁じえず、中国の底力をまざまざと見せ付けられる思いである。
それにしても、歩けど歩けど一向に自然保護区の何かしらの施設に突き当たる様子がない。徒歩では無理なのだろうか?と引き返すことも考え始めた頃、進行方向へ走っていったタクシーがほとんど間を置かずして空車のまま戻ってきた。もしかするとすぐ先に施設があるのでは、と推理し、あと少しだけと歩き続けたところ… お、ありました!WWFの事務所が!!
ここには来訪客のための駐車場があり、ラムサール条約にも登録されている湿地帯の入り口はすぐそば。付近は小規模ながらも集落になっており、長いこと無人地帯を歩いてきたせいで人家の匂いに安堵する。その湿地帯の入り口へ行ってみるが、散策道がしっかりと整備されているものの、ここから先は禁区(*注)内なので、WWFの事務所で発行してもらえる許可証が必要とのこと。ほんの数分散策するだけにしては手間がかかり過ぎるので、今回は外から眺めるに留めておく。くれぐれも無断で入ろうなんて考えませぬよう。ちゃんと監視員が見てますよ…
*注:禁区(Closed Area)=かつての香港と中国との国境線周辺に設けられた緩衝地帯。大陸からの不法入境者の拿捕を目的として設定されたと考えられる。住民を除く一般人の立ち入りは制限されており、中国返還後の現在も一国二制度の下で存置されている(それでも情勢の変化を鑑み、緩和の動きがあるとか)。ちなみに香港側が一方的に警戒しているだけなので、本土側には禁区に相当する区域は存在せず、境界線ギリギリまで開発が進んでいる。
《(上2枚)湿地散策道の入り口付近》
《入り口の門。禁区への無断侵入は罰金5万ドル(約60万円)!》
WWFの事務所内で一応資料として自然保護区の案内パンフレットをもらっておき、また一本道をポテポテと歩いてバス停まで戻る。パンフのアクセスガイドには「最寄りのバス停から徒歩20分」と記されており、一般的にこういうガイドに徒歩○○分とある場合は足の遅い人を考慮して余裕を持たせてあるものだが、ココについては例え健脚でもガチで20分は優に掛かってしまう。とはいえ往復40分なんて私にとってはナンということもないのだが、今日も早朝からあちこち歩き回っているわけで確実に体力の消耗を痛感させられる。
《深センの遠望をもう一枚》
《自然保護区周辺の集落》
《米埔の街並み》
午後3時前、バス停に戻ってきたところで次回へ続きます。
《米埔村入り口の門》
(2008.12.25)
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