四国62h プロローグ、あるいは前口上
▼12 Years Ago
今回は思い出話から入ります
今は「周遊きっぷ」という微妙な使い心地の切符に退化してしまいましたが、約10年前の1998年3月まで発売されていた周遊券。なかでもワイド周遊券という、一定の地域内が特急自由席を含めて乗り放題になる券と、周遊区間までの往復乗車券がセットになったきっぷは、その利便性と非常に高い割引率が相まって、かつて一世を風靡した「カニ族」を筆頭とする鉄道旅行愛好家御用達のチケットでした。
そして物心つく前から既に「テツ」への道を歩み始めていた私も、中学に入り一人旅が許可されるように。初めは青春18きっぷなどを使った日帰りの旅で経験を積んでいましたが、慣れてきたらやはりある程度の遠出をしてみたくなるのが当然の成り行きというもの。とはいえ中学生一人ではホテル等の宿泊施設にはまず泊めてもらえないわけで(例外はユースホステルくらいでしょうか)、そこで白羽の矢が立ったのが父親が赴任していた四国。赴任先が今治の近くだったので、ここを拠点として3日間に分けてJR四国を全線制覇するという、今から考えても見事と言うほかない芸術的なプラン(もちろん切符の購入まで全て独力)を実践に移したのでした。少しでも旅費を節約するため、京都から「ムーンライト松山」で四国入りし、伊予西条で折り返して初日のターゲットである牟岐線方面へ向かうという(今治からでは始発で出ても牟岐線の1本目の特急に間に合わない、という理由の方が大きかったのですが)、上級者顔負けの妙技も披露。自分で言うのもナンですが、えらく聡明な子供だったようです。
で、この旅行の際に利用したのが下の「四国ワイド周遊券」だったわけですが、学割とはいえ\17,340というのはやはり破格です。名古屋~児島の往復だけでも約1万円ですから、7日間有効の乗り放題きっぷは一日あたり1,000円相当。18きっぱーを尻目に悠然と特急列車の車内に入っていくのはさすがに快感でした。
《今は亡き四国ワイド周遊券。本来だと上のA券は回収されるものなのですが…》
ただ、さしものオールマイティチケットも、阿佐海岸鉄道や土佐くろしお鉄道といった第三セクター路線には効力がなく、わざわざ別料金を払って乗るのも勿体無かったのでパスしてしまったのですが、特に元国鉄でありJRの特急列車も直通している土佐くろしお鉄道中村線はやはり心残りでした(とはいえ今治からの日帰りだと、とても中村辺りまで足を延ばしている余裕は無かったわけですが)。
▼そして第2章へ
それから約10年、この土佐くろしお鉄道は中村~宿毛間が延伸開業したほか、ごめん・なはり線という全くの新規路線も誕生。ごめん・なはり線にはオープンデッキの車両も走っており、これも含めてそろそろ長年の懸案(大げさな…)を解消したいところ。周遊券はなくなってしまいましたが、それを上回る絶大な効力を持つきっぷが用意されており、いよいよこれを使う時がやって来たようです。
それが『バースデイきっぷ(→JR四国の公式サイトへ)』というものなのですが、誕生月に限って連続した3日間のあいだ、四国島内のJR路線が全線乗り放題。しかも土佐くろしお鉄道にも効力があり、最も凄いのが特急のグリーン車が利用できるという点。これでお値段1万円。
私の誕生月は7月と、夏の盛りのクソ暑い時季になってしまうのですが、夏休み期間中には予土線にトロッコ列車が運転されており、自然の風を楽しめる列車2種に土佐くろしお鉄道の全線制覇と、動機は十分。阿佐海岸鉄道の海部~甲浦間は依然として残ってしまいそうですが、まぁこれは気にしないことにして(笑)、7月19日~21日の三連休を使い、11年越しの四国完結編といってみることにしました。
▼きっぷを手に入れよう
このきっぷの入手方法ですが、近くのみどりの窓口に行けば買えるわけではなく、JR四国管内のみどりの窓口やJR四国直営の旅行センターである「ワーププラザ」、そして島内の旅行会社で発売しているのみ。他の地域からだとJR四国の予約センターを介した通信販売という方法に頼るのが一般的です。ただ、大阪梅田にもワーププラザの支店があるため(島外で唯一の支店!)、対面販売の方が安心できるのもあってそこへ出向くことにしました。
予め乗車する列車は決めているので、指定席のリストを差し出してきっぷを所望すると、まず運転免許証で私の誕生月を確認。それが済むと慣れた手つきでポン、ポン、ポンと次々に指定券を発行。あっという間にきっぷの束が出来上がってしまいました。グリーン車の座席が全て一人掛けかどうかを改めて確認し、ぴったり1万円を支払って入手完了。本体とご案内、そして指定券が10枚で、合わせて12枚という堂々たる陣容です。ちなみに指定券の発行料金は無料。下にピラミッド状にして並べた写真を添付しておきます。
▼海上ルートで上陸
効力自体は無敵を誇るこのチケットですが、有効期間は周遊券の7日間に対し、泣いても笑っても3日間。短くはないですが途中下車を織り交ぜるとなると決して長いともいえず、無駄なく有効活用する方策が求められます。となればやはり朝の早いうちに四国へ上陸するというのが考えられますが、京阪神からでは距離が短すぎて夜行バスというのはナシ。そこで神戸三宮と高松の間を運航している『ジャンボフェリー』を利用することにしました。というのも一便だけ夜行便というのが存在し、深夜出発・早朝到着ではありますがきっぷを最大限に利用でき、運賃も安いとくれば一挙両得。さすがに往復ともフェリーというのはしんどいので、帰りはこのフェリーのグループ会社が運行する高速バスを利用することに。共通利用券というのが用意されており、セットで使うとかなりお得です。
▼いざ出発
こうしてプランが固まり、ホテルの予約も完了して出発の日を迎えました。近場なので海外旅行のような期待感や緊張感はありませんが、久々となる「乗り鉄」メインの旅になるわけで、ただ乗ってるだけで楽しかった昔に戻ったような感覚も。
というわけで、本編は次回から。
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