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2009.11.11

四国62h (2-3)高知の果て、日本の果て(後編)

中村駅は中村市の中心駅…と書こうとして、2005年に四万十市となっていたことに気が付く。人口約3万6千人、四万十川の河口近くに開けた、幡多(はた)地方と称される高知県西部地域の中心都市であり、四万十川や足摺岬、そしてホエールウォッチングなど、観光の拠点としても県都高知に次いで華やかな街だ。戦後間もなく地震によって古い建物は壊滅してしまったが、土佐一条氏の城下町として「土佐の小京都」の異名もある。そして市街地から路線バスで足摺岬方面へ45分ほど揺られると、土佐清水市という町に入る。ここは東京からあらゆる公共交通機関を駆使しても、最も移動時間の掛かる市だと言われており(地理的な端である稚内市や石垣市には空港がありますので)、もう一つの日本の果てと呼べる場所かもしれない。

宿毛線普通 中村(11:32)→宿毛(12:02)

さてそんな魅力たっぷりの観光都市も、乗り鉄野郎は豪快にすっ飛ばして西へ旅を続ける。ここから先は1997年に開通した宿毛線となり、開業以来しばらくは従来中村発着だった特急列車の殆どが宿毛まで延長運転されていたのだが、2007年に2往復に大幅削減されてしまった。2005年に発生した宿毛駅衝突事故が尾を引いているのかと思ったが、それにしては2年のタイムラグは不自然。実際の所は下のニュース記事にあるような経緯に拠るものでした。


『宿毛線特急6本廃止 くろ鉄が経営改善目指す』

 経営改善に取り組む土佐くろしお鉄道(本社・四万十市)は22日、宿毛線(中村―宿毛)の特急列車について、利用率が低い上下計6本を廃止し、中村―宿毛は普通列車で接続するなどのダイヤ改正を発表した。来年3月18日から実施する。

 同社は昨年10月、資金不足対策や安全対策の徹底などをまとめた再生計画(18―22年度)を国土交通省に提出。その中で、経費削減策として利用率が低い列車の見直しを提案していた。今回の改正で、人件費や燃料費など年間約3000万円が削減できる見通し。

 ダイヤ改正は、宿毛行き「しまんと1号」「南風3号」「南風23号」を中村止まりとし、中村―宿毛を接続する普通列車を運行する。また宿毛発「南風6号」「南風16号」「南風24号」は中村発とし、各特急列車に接続する普通列車を宿毛から運行する。

 さらに、宿毛線の普通列車上下計2本を減便。通勤、通学の利用者のため5月から増便している中村、宿毛線の普通列車上下計2本と、9月から増便、延長運転しているごめん・なはり線の普通列車上下2本は運行を継続する。

 青木郁夫常務は「宿毛線の利用者には不便をかけて大変申し訳ない。だが、厳しい経営状態を考えると仕方がない」と理解を求めている。(2006年12月23日・高知新聞)


この施策は当を得ているというか、観光シーズンということもあって特急列車の乗客の大部分が中村駅で下車してしまい、普通列車に乗り継いだ人数は数えるほど。3~4両の列車をガラガラで走らせるよりは1両にまとめてしまった方が合理的には違いなく、宿毛までの直通客にとっては所要時間が延びてしまうものの、ぎゅうぎゅうに詰め込まれているわけではないからこれは良しとしよう。車内には吊り革と一緒に風鈴が多数ぶら下げられており、クーラーの冷風と走行中の振動で絶えずチリンチリンと涼しげな音を立てていた。

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列車が出発すると間もなく四万十川を渡る(中村駅手前で渡るのは支流の別の川)。河口近くでありながら、夏空に映えて“日本最後の清流”の名にし負う美しさを見せてくれる。窪川からここまでは鉄道で40kmちょっとの道のりだが、四万十川の方は逆U字型に大きく2倍以上の距離を迂回しており、山国である日本では珍しく勾配の極めて緩い川となっている。

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線路は終始国道56号線に沿って明るい谷間を走っていく。もうこれまでに辿ってきたような山深い土地ではなく丘陵地帯となっており、新しい路線らしく積極的にトンネルを使って直線的にルートが取られている。それだけに鈍行ではなく120km/hで爆走する特急で通ってみたかったものだが。

線内の途中駅では唯一の特急停車駅でありながら、1面1線の棒線駅でぱっとしないのは有岡。ここを出ると5kmという長大トンネル(聖ヶ丘トンネル)に入り、普通列車なりの高速走行で通過して田園地帯に躍り出れば、もう終着駅は近い。東宿毛は宿毛市役所のある旧市街地に近く、この駅に限らず普通停車駅の利用者にとっては中村発着の特急列車に接続するパターンが格段に増えているわけで、特急のリストラは却って朗報なのかもしれない。

奈半利ほどではないにせよ高架橋が唐突に途切れれば、2面2線の宿毛駅に到着。中村からは普通列車で30分、仮に特急だと17分の道のりとなる(営業キロは23.6km)。以前岡山駅で「宿毛ゆき」の方向幕を出して停車している《南風》を見た時には、気が遠くなるほどの遥かな土地だと感じたものだが、とうとう本当にやって来てしまった。

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《宿毛駅ホームにて》

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《宿毛駅・改札口》

とりあえず到達証明の写真を撮影すべく(自分が写っているわけではないので自己満足に過ぎませんが)、駅舎の全体像が見える位置へ。朝の7時に岡山を出発しても、宿毛に到達するのは正午。台湾島最果ての地である台東を訪れた際にも感じたものだが、「思えば遠くへ来たものだ」という言葉がぴったりのシチュエーションである。そういえばあの日も暑かったっけ…

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それと忘れちゃいけないリアルタイム旅日記もここでアップ。ここでも「思えば遠くへ~」って言ってますね。他に気の利いたフレーズが思い浮かばないもので。

宿毛駅は旧市街地と佐伯行きのフェリーの埠頭がある片島地区とのちょうど中間あたりに位置し、駅開業に伴い各種施設が集積して新たな商業地が誕生している模様。私もその一角にあったレストランで軽く昼食を摂っておいた。

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《駅前広場》

線路の延長線上となる駅西側はこんな風景。時代が時代ならば、このままR56に沿って宇和島まで繋がっていたのかもしれないが…。高知・愛媛県境はすぐそこで、土讃線方面へは愛媛県側からの利用もあるそうだ。

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折角はるばるやっては来たが、本日のメインイベントである予土線のトロッコ列車に間に合わせるべく、12時50分発の中村行き普通列車でとんぼ返りという、乗り鉄ならではの奇矯な行動を取る。出札窓口の上には高知往復の割引きっぷの案内が掲示されており、ここからだと高知でさえ都会に思えてしまうのは不思議なものだ。

次回へ続きます。

(2008.07.20)


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