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2011.12.30

タイ (1-6)マハーチャイ線・Part2(ウォンウィエンヤイ→マハーチャイ)

低床式ホームからどっこらせとディーゼルカーに乗り込む。発車5分前だが、既にラッシュも終わりしかもバンコクからは離れていく列車ということで、どの車両も各ボックス1~2人程度の乗り具合。4両編成の先頭車両に空のボックス(進行方向左側)を見つけたので、ここに腰掛ける。

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《(上3枚)車内のようす》

座席はプラスチック製で2等というよりは3等相当ではあるが、そもそも運賃があの値段なので、この路線では等級は大して意味を持たないのだろう。前述のようにこの便は全車両非冷房なので、午前10時前というこの時刻でもじんわりと汗が出てくるような車内の熱気を、ブンブンと唸る扇風機がかき回している。都市近郊路線らしく吊り革もぶら下がっているが、位置が高すぎてまったく用を成していない。これは体操選手用なのか。

9時40分、定刻どおり発車。線路に沿って左側にぴったりと並行する商店・露店街を車窓から見下ろしながら、ウォンウィエンヤイ駅を離れていく。開け放った窓からは生暖かいながらも風が流れ込み、ようやく人心地ついたような気分に。街の匂いもそのままダイレクトに伝わるため、車内に居ながらにして市場の中を散歩しているようだ。バンコク市街を抜けるまでは踏み切りが多く、列車は道路を横切る度に「フワーン」という警笛を鳴らしながら進む。

バンコクの下町を裏側から覗き見るような感じで走り、3分ほどで最初の停車駅・タラートプルー(Talat Phlu)駅に到着。ホームのすぐ西側で太い高架道路がクロスしており、この駅には後ほどBRT試乗のために下車することになる。

更に市街地を進む。水の都らしく水路を渡るポイントも多い。5分ほどでワットサイ(Wat Sai)、続いてワットシン(Wat Sing)駅に停車。ワットとは寺という意味で、タイを訪れたならば必ず覚える単語の一つだ。その名の通り両者とも同名の寺のすぐ前にある駅で、如何にもタイらしい三角屋根の豪奢な本堂が目の前に。タイで初めて遭遇する寺が観光地のそれではなく偶々車窓から見えたものだというのが、自分らしくてまたよい。

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《ワットシン駅にて》

列車は市街地を抜け、車窓には次第にだだっ広い野原が目立ってくるようになる。駅間隔が狭いのでそれほどスピードは上がらないが、保線状態が悪いので走行中は常に動揺に晒された状態だ。実際に線路を観察したのはウォンウィエンヤイ駅とマハーチャイ駅でのみだが、直線でも線路はひょろひょろと波打っており、曲線部分では短尺レールを繋いで間に合わせている箇所すらあるとか。まぁとにかく乗り心地の追求など歯牙にも掛けず、脱線しなければいいという程度の最低限の整備状況である(その最低限すら下回っている感もあるが)。

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《野原》

そんなタイを象徴する言葉のひとつが「マイペンライ」。スペイン語でいうところのケセラセラ、細かいことは気にしない、何とかなるさ、というニュアンスで使われ、良く言えば大らか、悪く言えばいい加減なタイ人の気質を最も端的に表した単語とも言われている。上手く使えば社会の潤滑油になる、実に素敵なマジックワードではあるが、しばしばそこは有耶無耶にしたり手を抜いてはあかんやろ、という場面にまでこのマイペンライ精神が拡張され、ビジネス・プライベートの両面で外国人の頭を悩ませたり、更には当のタイ人自身にまで降りかかるような社会問題の火種にもなったりするという。チャランポランな奴がこの言葉を多用しているとイラっと来そうだが、真面目すぎる日本人(自分も含めて)はここは一つ見習ってみるべき姿勢かもしれない。閑話休題。

10時05分到着のランポー(Rang Pho)駅では列車の行き違いが行われる。マハーチャイ線の閉塞方式は文献が見つからなかったので不明だが、発車の際に乗務員が緑色の旗を振って合図を送っている場面をしばしば見掛けた。

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《ランポー駅にて》

この辺りで道半ばというところだが、郊外路線なのでバンコクから離れるに従い乗客は減る一方…かと思いきや、存外にも途中駅からコンスタントに乗客が乗り込んでくる。私のボックスにもそんな途中駅からの乗客がひとり加わった。

その後も野原の合間に新興住宅地を眺めたりしながら小駅に停車していく。郊外の小駅は常に水辺にあるという感じで、ウォンウィエンヤイ駅がそうだったように集落の拠点として、地域住民によって常に手が入れられている様子が頼もしく思えた。

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ウォンウィエンヤイから50分、列車は町らしい町の中へ。もうマハーチャイ駅のホームはすぐそこという所で、生鮮食品の露店の横スレスレをすり抜けていく。身を乗り出したならば、車体に接触するかどうかのギリギリにまで広げたパラソルに直撃しそうだ。

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そして10時36分、定刻ぴったりに終点マハーチャイに到着。路線距離が短いということもあるが、全区間に渡って極めて正確に運行されていたのは、900万都市バンコクの近郊輸送を担う重要な交通手段としての責任感からか。全開の窓からは激烈なエンジン音とジョイント音が絶えず流れ込む、実に騒々しくもまた刺激的なミニトリップであった。

(2011.12.09)



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