マレー縦断編Prologue (2)微笑みの国へ
新阪急ホテル発21時30分、最終の一本前となるリムジンバスは、私を含めても片手で余るほどの乗客で関西空港に到着する。時刻は午後10時10分頃となり、こんな時間に関空を訪れるのは初めてのこと。既に国内線の出発は終了しているものの、午後9時で全ての発着が終了してしまう伊丹空港とは違い、24時間空港の関空らしく深夜まで国際線の発着便がある。そのうち日付が変わってから出発するのは00時20分発のカタール航空ドーハ行き、そして私の搭乗する00時30分発のタイ国際航空バンコク行きを送り出し、本日の発着便はすべて終了となる。
チェックインカウンターへ赴くと、手荷物の持ち込み制限がいつの間にか厳しくなっており、私のキャスターバッグのサイズ自体は適合しているのだが、重量が7kgまでとのこと。重量計では10kgを超えており、「これまで一度も重量制限に引っかかったことがない。ロストバゲージが怖いので極力預け入れにはしたくない」と粘ると、今回だけは…ということでお目こぼしにしてくれた。往路は何とかクリアしたが、やはり帰路のシンガポールからは預け入れも止むを得ないだろうなぁ。
2Fのマクドナルドにて現地での両替用に1万円札をくずすのを兼ねてコーラで一休みし、出発まで1時間を切った所で出国審査を抜ける。出国してからは店が少ない、という印象の関空だったが、昨年あたりに「KIX Airside Avenue」と称して免税店街がリニューアルし、多少は賑やかになったような気がした。しかしこの時間ではブランドショップは既にがっちりとシャッターを閉じ、まだ開いているのはレストランや書店、ドラッグストアといった程度。もう出発便は日付が変わってからの2便しか残っていないため、人通りは全くない。
《通行人ゼロのKIXエアサイドアベニュー》
それでもウイングシャトルの乗り場には三々五々に人が集まり、5番ゲートへ。今回の特典航空券ではスターアライアンス加盟各社から自由にキャリアを選べるため、往路の日本→タイはタイ国際航空、復路のシンガポール→日本はシンガポール航空と、ご当地キャリアで固めてみた。航空券本体が無料なのもさることながら、最早当初の設定意義から姿を変え、航空会社の新たな収入源になっているとしか考えられないほど不透明極まりない燃油サーチャージを払わずに済むのも大きい(今回の旅程では2万円)。
《5番ゲート》
TG673 大阪関西(00:30) → バンコク・スワンナプーム(05:00)
12時ちょうど、搭乗開始。「サワディーカー(こんにちは)」と合掌つきでクルーのお出迎えである。事前リクエストでエコノミー最前列から2列目の32Gがアサインされていたが、搭乗が落ち着いたところでキャビンを見渡してみると、目測で搭乗率は30%以下といったところ。まるまる空席のブロックも多く、私も窓側の2列ぶんを占拠。機内後方はより一層空いており、中には4列分を使って横になっている人もいる。
誰かの携帯電話の呼び出し音が延々と鳴り響き、クルー総出で探し回るという珍事もあったが、乗客が少ないため、定刻より20分も早い00時10分にはプッシュバック。当然離陸の順番待ちもなく、すぐに滑走路に出てテイクオフとなった。飛行時間は5時間55分とのことで、日本とタイの間には2時間の時差があるため(タイの方が2時間遅れ)、到着予定時刻は4時30分頃になりそう。バンコク空港からの空港連絡鉄道の始発時刻の関係で、あんまり早く着かれても別に有難くはないのだが、まぁ遅れるよりはずっといい。
ベルトサインが消え、ドリンクに加えておにぎりとサンドイッチの夜食のサービス。タイ人クルーだったので覚えたてのタイ語である「コップンカップ(ありがとう)」を使ってみたところ、いかにもアジア人らしい柔らかな笑みでニッコリ。上手く通じたようだ。どこの国でもそうだが、最低限「こんにちは」「ありがとう」程度でも現地語を駆使してみると、相手の親近感がぐっと増す。その後このクルーも、心なしか他の乗客に対してよりも親身に接してくれたような気がした。
《夜食》
ちなみに語尾の「カー」と「カップ」の違いだが、これは話者が男性か女性かで使い分ける(前者が女性、後者が男性)。そういえばポルトガル語でも「ありがとう」は男性だと「オブリガード」、女性だと「オブリガーダ」と使い分けていたっけ。タイに多いというニューハーフだとどちらを使うのかが気になるところだが…。もう一つ、タイを象徴する言葉として「サバーイ」と「マイペンライ」というものがあるのだが、また後々本文中で取り上げていきたい。
夜食後は消灯となり、2列席で無理やり足を折り曲げて横になっていたのだが、やはり6時間という短いフライト。現地時間で2時45分というやたら早い時間に朝食のため再び明かりがついた。
《朝食》
食べ終わったところでフライトマップに目をやると、ベトナムのダナン付近からインドシナ半島に上陸するところ。その後1時間余りの間、無為に時間を過ごし、間もなく最終着陸態勢に入ろうかという頃、クルーからタイを象徴する花であるランのコサージュを手渡される。本来は女性にだけのサービスのはずなのだが、搭乗率が低い故、余らせるくらいなら…ということだろうか。
《蘭のコサージュ》
いよいよ機はバンコク国際空港への最終着陸態勢へ。眼下には満月の光を照らし返した水面がキラキラと輝いている。あのタイ全土を襲った大洪水からまだ日は浅く、この水面が水田のものなのか、それとも未だ排水もおぼつかない地域のものなのか、夜の闇の中では今ひとつ判然としない。
そして4時30分、バンコク国際空港に到着。なんと沖止めである。機から降りてタラップに足をかけると、早朝のこの時間にも拘らず、湿気を含んでムワッとした空気が体に纏わりつく。やれやれ、自ら望んで来たとはいえ、この熱帯の空気の中でこれからの9日間を過ごすことになるのか。
次回は空港内から。
(2011.12.08~09)
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