マレーシア (4-4)マスジッド・ジャメで、モロッコ人と、出会った。
*記事タイトルは下條アトムさん風に読んでネ。
今日はクアラルンプールのヘソと呼べる地区を散策することにする。最初の目的地はKL最古のモスクであるマスジッド・ジャメ(Masjid Jamek)。KLCCへ行く際に使ったLRTクラナ・ジャヤ・ラインでKLセントラルから2駅目が、ずばりこのモスクの名を冠した駅となっている。ホテルへ戻ってきた頃から降り出した雨が未だに止まないのだが、折り畳み傘を広げるのは億劫なものの、こればかりは仕方ない。
地下ホームから地上へ出ると、目の前の大通りに沿ってもう一つのLRT路線、アンパン・ラインの高架が走っている。マスジッド・ジャメ駅が接続駅になっているものの、同じ「RapidKL」という運営母体ながら、乗り継ぐ場合はいちいち切符を買い直さねばならないのだとか。これはKLモノレールの場合も同様で、何故このような理解に苦しむシステムになっているのだろうか。
《マスジッド・ジャメ駅前にて》
モスク入り口は駅のすぐ横。高層ビルが林立するこの地区で、さながら台風の目のようにポツリと静かに佇んでいる。
《マスジッド・ジャメ 入り口》
敷地内へはムスリムでなくても自由に出入りできるが、金曜礼拝の時など、一部立ち入りが制限される時間帯もある。建物の中へは入りにくい雰囲気だったので、外観をぐるりと一周して眺めるに留めておいた。また女性の場合、少しでも髪や肌を露出しているとそのままの格好では入れないが、入り口で隠すためのローブとスカーフを無料で貸してもらえる。
あまり見るべき物もないので早々に立ち去ろうとすると… 入り口前の詰め所から、30代くらいのアラブ人男性が「おーい!」とこちらを向いて手招きしている。周囲には誰もいないので間違いなく私を呼んでいるわけだが(汗)。
そんなわけで彼と対面し、なんで呼んだの?と話を聞いてみると、単に親しみを込めて、ということらしい。彼はモロッコから来ているそうで、日本人・韓国人・中国人が大好きだから、なんだとか。うーん、この3つを十把一絡げにするのはあまりにも乱暴ではないかと…。それも日本が好きな理由が、「優れた工業製品を作っているから」というよくあるもの。私もMade in Japanブランドは単なる信仰ではなく確かな品質に裏打ちされたものだと確信してはいるが、その一方で四半世紀日本に暮らしていると、中世から精神構造が進化していないのでは…と疑わしくなるほどの社会の未熟さに辟易することも多々あるわけで(非国民呼ばわりは最高の褒め言葉!)、別に聞かれてもいないのに勝手に思考の深みに嵌り込んで返答に窮してしまう。多分実体験が伴わないイメージ100%なんだろうなと思っていたら、案の定、彼は一度も日本を訪れた経験がないそうだ。
その後彼はおもむろに携帯で電話をかけ始め、藪から棒に「これに出て!」と私に携帯を手渡す。えっ?? 電話口に出てきたのは日本人の中年男性で、当然面識が無いわけなので私が何者で現在どういう状況でこうして電話を掛けているのかから説明するハメに。何このムチャ振り。 この男性、モロッコ人の彼の友人らしく、中小企業の社長によくいそうな「饒舌だけど人の話をあまり聞かない」タイプだったので会話内容は省略するが(笑)、日本語での会話だったので彼のパーソナルデータを詳しく引き出すことが出来た。あんまり嬉しくないけど。
“テレホンショッキング”のあとは彼がマスジッド・ジャメをバックに記念写真を撮ってくれたのだが、これまた初めてカメラを持った幼稚園児でももう少し綺麗に撮れるでしょ、とツッコミたくなるようなムチャクチャな構図。そんなKYの気があるナイスガイと異文化コミュニケーションを実践しているうちに、長く続いていたシャワーも漸く上がりはじめた。さてそろそろ出発しますか…という去り際に、イスラム文化の入門書(↓の画像)をお土産にプレゼントしてくれる。「Ahmed Yassin」というムスリム・ネームも賜ったことだし(パレスチナのイスラム原理主義組織、『ハマス』の創設者と同姓同名なのは知ってか知らずか)、縁遠かったイスラムがぐっと身近な存在に感じられたような気がした。ありがとう、いつかまた。
あまり濃密な人間関係は好まない私ではあるが、それでも出会いへの渇望が無意識のうちに放つオーラに共鳴してくれるのか、旅を重ねる毎にいつの間にかこうしてまた誰かと繋がっていく。アジアらしいステキでちょっぴり微妙な出会いにほっこりしながら、雨上がりの街をふたたび歩き出した。
(2011.12.15)
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