マレーシア (5-1)待チ人来ズ
12月16日、金曜日。シンガポール行きの列車の発車時刻が午前9時ちょうどなので、2時間半前の午前6時半に起床する。何はともあれ朝ごはん、ということで、今朝はKLセントラル駅構内のレストラン街で朝食セットを(下の写真)。高級ホテルの朝食もたまにはいいが、やっぱりこういうカジュアルな雰囲気が一番。
因みにル メリディアンの宿泊料金は、ルームチャージが円建てで一泊約8,600円(税・サ込/キャンセル不可の制限あり)、朝食+インターネット24時間接続のパック料金(或いは抱き合わせ?)はRM100(2,500円)。満足度は高いとはいえないが、まぁ妥当な線ではある。
朝食後、その足で同じく駅構内のセブンイレブンへ。シンガポールまでは7時間掛かるため、3日前のバターワース→KLの時のように飢えぬよう、昼食のパン・サンドイッチやおやつ、ジュースをしっかりと買い込んでおく。
《お菓子と飲み物。一番下は咳止めのドロップ》
一旦部屋に戻り、最後にもう一度見納めとなるガーデン・シティの風景を網膜に焼き付けておく。もう少なくともジジイになるまでマレーシアを再訪する機会は無さそうなので(てか、そもそもジジイになるまで生き長らえることが出来るのか)。
出発30分前の8時半頃にチェックアウト。今回の乗車券もE-チケットで入手済みである。通常は乗車開始までコンコースで待機する形になるのだが、1等旅客には専用のラウンジが用意されているので、そちらの方へ。KTMでは積極的に案内されていないため、知る人ぞ知る存在である。
下の写真がそのラウンジの入り口。動線からは完全に外れた場所に位置する上に殺風景な鉄扉があるのみで、前もって存在を知らなければ絶対に気が付かない。
中にはソファで横になっている先客が2人いるのみで、入った時点では照明さえも点いていなかった(というか私が点けた)。コンコースの喧騒とは一転、耳鳴りがするほどの無音空間である。
《(上3枚)KLセントラル駅の1等旅客用ラウンジ》
予備知識によると出発15分前に係員が列車へ案内してくれるらしく、実際にラウンジ入り口の立て札にもそのような旨が記載されていたはずなのだが… 案の定というか、やっぱりそんな人は現れなかったのだった。まぁ、劣等生KTMに今更何を期待してるの?という話ではあるが。
そんな訳であくまで「自主的」に、ラウンジ内からホームへ直通するエレベーターに乗り込む。ホーム階へ到着し、扉が開いた瞬間にプラットホームに渦巻く轟音が流れ込んできたが、どういうわけか入れ替わりにエレベーターへ乗り込んでくる乗客がいる。KL着の夜行列車は両方向とも定時では6時半頃に到着しているはずなのだが、もしやまた2時間も遅れて到着、ということなのか。下の写真がそのホームに停まっている列車だが、サボが出ていないのでどこ発どこ行きなのかがサッパリ分からない。
《8時48分、KLセントラル長距離ホームにて》
ホームを歩いていると駅員に声を掛けられ、チケットを見せると「上で待ってて!」ということなのでコンコースへ。そこには乗車開始を待つ乗客の塊が。あのー、もう発車10分前を切ってるんだけど。私もその塊にくっついて暫く待っていたのだが、定時の9時を過ぎても列が動き出す気配はなし。コンコースとプラットホームにはLEDの発車案内板があるのだが使われておらず、アナログな立て札さえも出ていない。列車にもサボがついておらず、要するに視覚情報が皆無の状態というわけ。
「もうコイツあかんわ」と、幾ら指導をしても暖簾に腕押しな部下を持った上司のような心境で列を離れ、ベンチに腰掛けて待機。そうしている間に何故か乗車を待つ塊がバラバラと解散していくではないか。ハッ、ハハハハ…(乾いた笑い)。
その後、目を皿のようにしてホームへ降りる階段を監視し続けていたが、定刻から1時間も経過した午前10時、アナウンスが入ったかと思うと(内容は聞き取れず)、やっとの事で乗車の開始。旅先での貴重な時間を何食わぬ顔で奪っていくコイツらには憤懣やるかたないところがあるが、ともあれようやく旅の再開である。
《これで救われた、と思ったが…》
ホームで列車と対面。1時間前に停まっていた編成とは別のものというのは確実なのだが、サボがないのはこちらも同じ。指定された「S4」号車を探すのだがなかなか見つからず、ホームに立つ駅員に尋ねてみたところ…。 予想だにしない、とんでもない答えが返って来る。
「この列車はバターワース行きだよ」
…????…
「今は10時。この列車(シンガポール行き)の発車時刻は9時だよ」
…………。
お前、何言ってんの?
バターワース行きってシンガポール行きの15分前、8時45分にとっくに出発しているはずなんだけど。何をドヤ顔で「発車時刻過ぎてるよ」などとほざけるのか。ていうか、朝からずっとホームに立ってたんでしょ?たった2本しか発着しない列車の運行状況さえも把握してないの?? 私が二の句を継ぐ間もなく、
「次の列車は14時発だから、そっちに変更してもらってよ」
としれっと言ったその瞬間。積もりに積もっていた鬱積がついに弾けたためか、頭の中で血管がプチンと切れる音がした。
……もうエエわ。
飛行機で行くわ。
《事件現場》
ここでこの判断の理由について解説しておくと、クアラルンプール~シンガポール間は300km程度なので路線バスでもそれ程時間は掛からないのだが、マレーシア・シンガポール国境を通過する際に通る堤防道路、「コーズウェイ」が慢性的な渋滞ポイントらしく、時間のロスに更なる拍車がかかる可能性が高いと考えたためである。
一旦決断すればあとは行動あるのみ。KLセントラル駅構内でたまたま見掛けた旅行代理店へ航空チケットの手配に向かうのだが、その前に用済みになった列車の乗車券を窓口で払い戻しに。しかし、窓口の姉ちゃんは「これは発車時刻を過ぎているので払い戻しは無理ですね」と。動じず「乗れなくなったのは俺の責任ではない」と食い下がるも、「どうすることも出来ませんね」と取り付く島もなく、そのあまりに事務的な対応に生まれて初めて「The F-Word」を口に出しそうになってしまった。「発車時刻を過ぎてます」だと? そんなセリフはダイヤ通りに運行出来るようになってから言え!!
日本円でほんの1,700円とはいえ、紙屑と化したチケットを怒りの捌け口にするかのようにバッグの中へ乱暴にねじこみ、旅行代理店へ。クアラルンプール~シンガポール間は東南アジアの最重要幹線のひとつで便数は豊富にあるはずだが、アジアでも台頭著しいLCC(ロー・コスト・キャリア)は機材の遣り繰りの関係で定時性に不安を覚えるため、まずはLCCじゃない便で空席を照会してもらう(LCCの対義語が思いつかなかったのですが、後で調べてみると「レガシー・キャリア」でした)。するとこれまた予想だにせず、何と午後3時頃まで全て満席らしい。流石にそんなには待てないので、LCCの代表格である「エア・アジア」のダイヤを調べてもらうと、大体1時間おき位の高頻度で飛んでいるようだ。ただ、チケットはここでは発券できないので空港で購入して欲しいとのこと。確約がないのは心許ないものの、まぁ頻発しているのでどうにでもなるでしょ、と、そのまま空港へ向かうことにする。
というわけで旅のゴールへと向かう汽車旅の思い出を綴るはずが、タイ国鉄に続いてまたもや運命の糸に翻弄される男の不幸話へ突入したところで… 本当はKLセントラル駅の中心で叫びたかった一言を、代わりにここで。
ファッキン、ブミプトラ!!
(あっ、言っちゃった)
(2011.12.16)
次のページへ:マレーシア (5-2)Road to KLIA
« マレーシア (4-6)クアラルンプールのチャイナタウンにて | トップページ | マレーシア (5-2)Road to KLIA »
« マレーシア (4-6)クアラルンプールのチャイナタウンにて | トップページ | マレーシア (5-2)Road to KLIA »
コメント