サヨナラ…じゃないけれど。城東貨物線・赤川鉄橋
鉄道ファンにはお馴染みだったあの珍景も、見納めの日が近いようです。
『あの「歩ける線路」赤川鉄橋、歩道閉鎖へ NHK朝ドラロケ地 惜しむ声広がる』大阪市東淀川区と同市旭区、都島区境の間の淀川にかかるJR城東貨物線(おおさか東線)の通称「赤川鉄橋」の歩道が、旅客営業に向けた線路複線化のため今秋に閉鎖されることになった。「歩道のある鉄橋」「人と電車が渡る橋」として鉄道ファンや地元住民らに親しまれ、NHKの連続テレビ小説のロケ地としても利用されてきた趣のある場所だけに、関係者らを寂しがらせている。
■複線仕様の片側を“改造”
鉄橋の正式名称は「淀川橋梁(きょうりょう)」。長さ約600メートル。昭和4年、当時の国鉄片町線貨物支線が吹田駅(吹田市)まで延伸・開通した際に架けられた。複線仕様だったが、当初から単線の営業で片側は線路が設置されなかったため、大阪市が借り受けて歩道を設けた。
歩道の名称は「市道赤川仮橋」。幅1・8メートル。安全柵を付け、木を敷き詰めて整備した。開通後は、両岸の住民が生活道路として、またサイクリングロードとして利用。「電車と人が渡る橋」として知られたことから、貨物列車と歩行者を一緒に収めるなどの写真を撮影しようと、鉄道ファンらが集まるスポットにもなっている。
さらに、NHK連続テレビ小説で、平成10年秋~11年春に放送された「やんちゃくれ」、14年秋~15年春の「まんてん」のロケ地にもなった。こうした経緯もあって地元住民らの愛着は高まる一方だ。
■整備される「おおさか東線」
閉鎖される要因は、おおさか東線の複線化だ。
同線は、大阪府東部を南北に走る城東貨物線を改良して整備する。久宝寺(八尾市)-新大阪(大阪市淀川区)間20・3キロのうち、平成20年に、久宝寺-放出(はなてん)(大阪市鶴見区)間9・2キロが開通した。
当初予定より工事が大幅に遅れている放出-新大阪間11・1キロも、30年度開業を目指して整備が進んでおり、その途中にある赤川鉄橋も今秋から複線化工事に入ることになった。もともと複線仕様になっていることから、歩道のスペースに線路をもう1本設置する計画。これによって「人と電車が渡る鉄橋」ではなくなるのだ。
■「80数年間にわたり…」
鉄橋の両側には、大阪市建設局と、おおさか東線を建設する第三セクター「大阪外環状鉄道会社」の連名で、歩道の閉鎖を知らせる看板が設置されている。
「赤川仮橋は80数年間にわたり皆様にご利用いただきましたが、『おおさか東線』整備のため、平成25年秋頃に閉鎖となります…」。看板にはこう記され、利用者に対し、閉鎖後は約1キロ上流の菅原城北大橋の利用を呼びかけている。
地元住民らによると、歩道の床部分は数年前に木製から鉄製に敷きかえられ、以前より歩きやすくなったと好評だったという。それなのに、今回の寂しい知らせ…。通りかかった住民らは、看板を見てびっくり。旭区に住む主婦は「東淀川区への用事が多くて、毎日のように利用している。迂回(うかい)するのは大変ですね」と残念そうだった。(2013年1月20日・産経新聞)
2008年に久宝寺~放出間が部分開業し、あとは放出~新大阪間の竣工を待つばかりのおおさか東線。当初は新大阪止まりだったものが、うめきた(大阪駅北地区/梅田北ヤード)乗り入れへと計画が変更になったという経緯があるとはいえ、あまりに長すぎる建設期間に私も関心が薄れかけていたのですが。ここ2年ほどでようやく工事が動き始めたようで、80年以上もの間“かりそめの姿”を保っていたあの名物橋梁も、いよいよ本来のお役目を担うことになります。
さて、今回は私が7年前の初冬にこの橋梁を見学に訪れた際の写真をご覧いただくことにします。旅客開業前の現在は「城東貨物線」という単線の貨物線として営業しており、JTBや交通新聞社の時刻表で列車のダイヤが確認できるわけではないため、貨物列車に出会えればラッキー、という軽い気持ちで訪問してみたのでした。
阪急淡路駅から徒歩で訪れたため、淀川の北岸からスタートします。まずは橋の全景をパノラマ写真で。長さは600mとのことで、さすがの貫禄です。
橋北詰の踏切から。橋の西(下流)側に貨物線の線路、そして東(上流)側にはトラスに木製(現在は鉄製に改装)の歩道を渡すという、ハイブリッドな橋として使用されています。
同じく踏切から線路を南岸方面へ眺めて。
橋を渡りはじめ、少し進んだところで北岸を振り返って。実際に訪れてみて分かったのですが、この歩道、とても人通りが多いです。
同じポイントで南岸方面を。
橋の上から梅田の高層ビル群を遠望してみました。旅客開業の暁にはこの橋を渡る電車で、あのビル街のど真ん中へダイレクトに乗りつけることが出来るようになります。
北と南、双方の線路の先をチラチラと見やるも、人生そう運良くいくはずもなく。歩道をポテポテと進み、そろそろ南岸が近づいてきたようです。
同じポイントで北岸方面を振り返って。
橋を渡り切り、南詰からの赤川鉄橋の全景をパノラマ写真で。
河川敷に降り、複数の角度から橋梁を眺めてみます。しっかりと保守整備されており、架橋から約80年という古さを感じさせません。
撮影を一通り終え、あとは貨物列車の通過を待つばかりなのですが…。2時間ほど橋の上で粘っていたものの、結局列車は一度も通過することなく、次の目的地へ向かうことになってしまいました。一口に鉄道ファンといっても様々なタイプに分類され、私はブログタイトル下のキャッチフレーズ?にもある通り、列車に乗るのが大好きな「乗り鉄」。自分はかなり短気な性格だと自覚しているため、こんな鉄橋の上で徒然無聊に2時間も待つという行為は相当な異例事態なのです。そんなわけで、線路際で時として何時間もお目当ての車両を待ち続ける「撮り鉄」の皆さんには、ある意味畏敬の念すら抱いてしまいますね。さすがは人情の街大阪というべきか、橋の上ですれ違った気のいいオッチャンに、「兄ちゃん、せっかく来たんだから記念写真撮ったるわー」と、強制的にスナップを撮影されるというイベントも発生(笑)。
新聞記事の最後にもある通り、歩道閉鎖後は約1km先の橋への迂回を余儀なくされることになります。となると徒歩ならば30分前後のロス。やはり生活に大きな影響が生じることは否めず、吉野川のふれあい橋のように、鉄橋の横に並行して歩行者・自転車専用の橋を新設するという方法を実現できないものか…と考えてしまいます。市や府が全額負担で造ってくれるのがベストではありますが、私も鉄道ファンとしてコミットした身。1,000円くらいならばカンパしても良いのですが。
そんなわけで現在の姿を見られるのもあと一年足らず。まだ未訪問の方がいらっしゃいましたら、まだ静かであろう今のうちに是非どうぞ。半狂乱の人々の渦中に巻き込まれる前に。
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おおさか東線・直通快速に乗ってみました
(暫定開業区間・放出~久宝寺間の試乗記録)
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