フランス2013 (2-2)TGV南東線Part1(パリ→リヨン・前編)
TGV6607 Paris Gare de Lyon(08:58) → Lyon Perrache(11:09)
8時58分発、リヨン・ペラーシュ行きTGV6607列車。使用車両はオール二階建ての「TGV Duplex(テージェーヴェー・デュプレックス)」である。営業運転開始は1996年12月なので、既に17年目に入っている“ベテラン車種”。今年3月に東北新幹線のE5系《はやぶさ》が320km/h運転を開始し、LGV東ヨーロッパ線の記録に並んだが、こちらは依然ダブルデッカー車として世界最高速車両のレコードホルダーである。
フランスの二大都市圏であるパリ~リヨン間を結ぶ系統は、東海道新幹線・東京~新大阪間に相当するSNCFの最重要幹線。ピーク時には最短30分間隔で運行され、旺盛な利用に応えるためにTGV Duplexが集中投入されている。実は今回のエクスカーションの目的地をリヨンにした理由の一つが、このTGV Duplexに確実に乗車できるから、というもの。13番ホームに2編成併結の20両編成、約400mという長い身体を横たえているが、客扱いを行っているのは手前側の編成のみである。
ダブルデッカー客車のサイドビュー。ホームが低床式なので、デッキから1階席へは小さな段差を2段下がるだけの準バリアフリー構造である。その分、2階席へは長い階段を上らなければならないのだが。
こちらは1等車と2等車の間に挟み込まれたビュッフェ車。1階部分は機器室になっているので、厳密にはオール二階建てではない。
SNCFの列車は全席禁煙で喫煙スペースも無いので、ホームには乗り込む前に煙草を吸い溜めする人が目立つ。そんな白昼のホタルたちを横目に私は車内へ。指定された座席は7号車の84番、2階の窓側である。2等車なので片側二列なのだが、気になるお隣さんはフランス人の可愛い女の子でラッキー。そういえば一人旅で偶々若い女の子と隣り合わせで座っていると、たまにカップルと間違えられることがあるのだが、そのほぼ全てが海外での出来事。もしかしてこれは国際結婚せよという神からのご託宣だったりするのだろうか。
《TGV Duplex・2等車2階席車内》
予めシートマップで調べておいた(→こちらのリンク)ところ、こちらの席は進行方向向きのはずだったのだが、何故かこの編成は前後が逆転しており、後ろ向きに進むことになってしまった。この第245編成はアトランティック線所属なので、その関係だろうか。そういうわけで本来手前側に停まるはずの1等車は奥の方である。
2等車座席のシートピッチは飛行機のエコノミークラスよりもほんの少し広い程度で、リクライニング機構も省略。このアコモデーションで日本の新幹線に対抗しようなどおこがましいにも程がある、という感じだが、坐り心地自体は決して悪くはなく、長時間乗車でなければ特急列車の座席としての水準はクリアしていそう。いっぽうで2等車でも床がカーペット敷きなのは好印象で、内装にファブリックが多用されていることもあり、空間デザインについてはフランスが一枚上手である。車体断面がコンパクトなので荷物棚には小さいバッグや上着くらいしか置けないが、客室入り口手前と室内に分散して荷物スペースが設けられている(私の席の真後ろがそのスペース)。路線やシーズンによっては熾烈な争奪戦となりそうだが、この列車についてはまだまだ余裕があった。
このところSNCFでは定時出発率を上げるため、発車時刻の2分前までに車内へ入らなければ乗車を保証しないと案内しているが、この列車は普通に発車時刻ぴったりにドアをクローズ。リヨン駅を出発してまず最初、約10kmの区間は在来線を進んでいく。リヨン駅は山手線の内側に収まる面積であるパリの南東側に位置しているため、列車はものの5分ほどで市内を脱出。早朝に南仏方面各地を出発した上り列車の第一波が到着する時間帯のためか、平屋・Duplex交えてTGVと頻繁にすれ違う。やがて大きく左へカーブを切って在来線を離れると、LGV南東線・アトランティック線・東ヨーロッパ線・北線を相互に結ぶ連絡線へ。あくまでパリを中心に組まれているTGVの路線網だが、意外に地方都市同士を直結する系統も充実している。
リヨン駅を出発して15分、列車はいよいよ高速走行を開始。日本の二階建て新幹線の最高速度は240km/h止まりのため、300km/hのめくるめくスピード体験が出来るのはフランスだけである。といっても車窓は基本的にだだっ広い平原なので、感覚の主な拠り所となるのは次々とすっ飛んでいく架線柱の間隔。線路敷が壁や金網で隔離されているわけではないので、車窓は新幹線とは一味違う開放感がある。1983年に全通したヨーロッパで2番目に古い高速新線という事もあり、心なしかカーブが多いような気が。5年前に乗車した東ヨーロッパ線よりも沿線の地形の起伏が大きいため、日本からやって来た旅人にとっては親しみやすい風景と呼べるかもしれない(727化粧品の看板はないけど)。
そして後ろ向きに流れる景色も、いざ腹を括って(?)眺めてみれば案外気にならないもの。それよりも窓側にも拘らずシートピッチの半分くらいが壁という席に当たってしまったのが不満といえば不満である。ヨーロッパの列車の場合、窓側であっても「進行方向に向いているか」「壁のすぐ横でないか」で絞り込んでいくと、良席の割合というのは非常に少ないのが困りものだ。TGVのような完全予約制の列車の場合、実際に目で確かめて選ぶことが出来ないだけ、尚更に。
後編へ続きます。
(2013.04.16)
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