遠回りすると運賃が安くなる駅【加美駅&新加美駅】
FIFAワールドカップ・ブラジル大会が閉幕しました。日本の一次リーグ敗退は実力通りの規定事項だったとはいえ(敗戦の弁もいかにも日本人らしい、精神論に終始する内向き加減でした)、しばしば「ピッチに悪魔が棲む」と表現されるW杯。前回優勝国のスペインがグループリーグまさかの2連敗で早々と敗退が決まるなどの大番狂わせもやはり健在だったものの、決勝トーナメントは世界最高峰の技が火花を散らす激闘に次ぐ激闘。PKまでもつれ込む接戦のオンパレードだった今大会において、決勝戦のドイツvsアルゼンチンはまるでその総決算のようにドラマチックな展開となりました。私は決勝戦のカードは開催国のブラジルvs四度目の正直となるかに期待がかかるオランダ、と開幕前に予想していたので、ネイマール離脱後のブラジルサッカー史に残る惨劇にはブラジル国民ならずとも遺憾千万でしたが、大半のチームがおおむね下馬評通りのパフォーマンスを発揮してくれ、なかなかいい大会だったなと思います。
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さて先日、所用で大阪府八尾市の久宝寺を訪れる機会がありました。往きはJR大和路線の久宝寺駅を利用したのですが、色々と歩き回っているうちにかなり西の方まで来てしまったため、帰りは別の駅から電車に乗ることにしたのでした。
久宝寺は大和路線とおおさか東線の接続駅で、両路線はしばらく併走して大阪市平野区へ入ったのちに袂を分かちます。その分岐点に大和路線の「加美」駅とおおさか東線の「新加美」駅、二つの路線が別個に駅を構えており、加美駅と新加美駅を結ぶ道のりはわずか100m、徒歩1分という近さです。
加美駅は、かなり古びた橋上駅舎をもつ地上駅。
そしてこちらが今回利用した新加美駅。2008年のおおさか東線開通と同時に開設され、こちらは高架駅となっています。住宅密集地に新設された駅ということで、スペースの制約上、うなぎの寝床のように細長いコンコースが特徴的です。
で、両駅に掲示されている運賃表を見比べて気付いたのですが……。
今回乗車したのは大阪駅までだったのですが、ほぼ同じ位置にある駅にもかかわらず、新加美駅からだと220円なのに対し加美駅からだと300円と、80円も運賃が違うんですね。前者は新加美-放出-京橋-大阪で15.0km、後者は加美-天王寺-大阪で16.1kmと、加美からだと大阪環状線を半周するぶん若干距離が長くなり、運賃区分が変わってしまう結果というわけです。日中の運転本数は双方とも毎時4本でほぼ条件は同じではあるものの、加美駅から大阪駅へは天王寺か新今宮で1回乗り換えるだけでよいのですが、新加美駅からおおさか東線経由のルートだと、放出と京橋で2度乗り換えなければなりません。
もっとも、大阪近郊区間内発着なので新加美-久宝寺-天王寺-大阪というルートも取ることができ、これならば久宝寺で大阪環状線直通の快速に乗り継げば1回の乗り換えで済むのですが、これだと久宝寺まで逆方向へ向かう形となり、しかも新加美駅のすぐそばにある加美駅をまた通らなければならないという、甚だ非効率なルートとなってしまいます。
普通乗車券だとまだこのような自由度があるだけマシなのですが、定期乗車券だと経路が指定されるうえ、通勤定期1ヶ月の比較で新加美発着(放出経由)は6,480円・加美発着(天王寺経由)は9,070円と、かなりの差が出てきてしまいます。確かに前者は安いのですが、その一方で乗り換え回数が増えたり、データイム以外の運転本数が大和路線よりも少ないうえに大阪駅からの終電が50分近くも早かったりと、その代償は決して小さくはなかったりします。まぁ、放出経由の定期で天王寺・久宝寺を経由したとしても、車内改札があるわけではないので絶対にバレはしないわけですが……。
ただ、JR東西線方面ならば放出経由一択ですし、天王寺経由ならば繁華街の天王寺で途中下車できるというメリットもあるので、案外住み分けは上手くおこなわれているのかもしれませんね。本来なら大阪駅と北新地駅のように、運賃計算上は同一駅として扱うという特例を設けたならば、話はぐっとシンプルになるのですが。もう一つ、新加美駅が特定都区市内の特例による大阪市内の駅に含まれないという問題もあり、こちらはおおさか東線が全通して新大阪と直結する頃に急浮上しそうな予感。いずれにせよ、これらの二駅の並存によって生まれたのが、大都市近郊区間制度のイタズラによる「加美駅“二度”通過問題」だったりするわけです。
これに類似した話は鉄道が四通八達した大都市圏を中心に全国津々浦々でみられるのかもしれませんが、今回のケースでは大阪駅という「超大物」が絡んでいるだけに非常に興味深いなぁ、と感じたりしたのでした。
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