関西矯正展@大阪刑務所(2014年)
普段はお気楽な乗り鉄&お散歩日記を書いとります弊Blogですが、たまには変化球を…… ということで、大阪刑務所で開催された『第27回関西矯正展』を見に行ってきました。
大阪刑務所の最寄り駅は、JR阪和線の堺市駅。南海高野線の堺東駅からも近いですが、大阪梅田からだと直通で行けるJRが便利です。関空・紀州路快速の途方もないトロさはまた別として…。
大阪刑務所へは駅の西側へ出て、徒歩でたったの5分。刑務所といえば所謂「NIMBY」の代表格のような施設ではありますが(究極のNIMBYは原発ですね)、かなり市域の広い堺市内でもこんな街のド真ん中に存在するのには非常に驚きました。刑務所のすぐ東側には火葬場もあるので、他人事ながら何故こんな街の一等地に…?という疑義がフワフワと頭の中を舞っていたのでした。
刑務所の敷地へ入ると、“万里の長城”がお出迎え。東京・府中刑務所や名古屋刑務所・福岡刑務所と並んで日本最大規模の刑務所となりますが、都心からの近さという点ではここ大阪刑務所が群を抜いています。
会場では色々なイベントが開催されていますが、おそらく来場者の9割がコレがお目当てであろう、というのが、刑務所作業品の展示・即売会。靴やサンダル・雑貨・おもちゃといった小型の製品からテーブル・椅子・たんすのような大型家具まで、様々なジャンルの品が揃っています。あまり相場とかには詳しくはないのですが、聞く所によると家具なんかは市価の半額というのも珍しくないらしく、もちろん作りの良さも一級レベル。ニ○リの比ではない「お値段以上」、といったところでしょうか。
イベントステージでは、『マッサン』に島爺役で出演している一日刑務所長の高橋元太郎さんがトークイベント中。府中刑務所の方には麻里子さまが来場したそうですが、まぁ、下手にアイドルを呼んで「場違いの人々」に押しかけられても困りますし。私は朝の連続テレビ小説は見てない(『あまちゃん』さえも一度も見てない)ので、マッサン関連の話は右から左へ、でしたが……。イベント進行は「The NHKフォーマット」とも言うべき安定の上滑り感だったものの、高橋さんはさすが俳優兼歌手ということで、声の張りが素晴らしかったです。もしかしたらマイク要らないんじゃないの?
本部近くの庁舎ガレージ付近でもイベントが開催されています。こちらは表門(※当エントリー1枚目の写真)に掲出されたプレート。英語では「OSAKA PRISON」…と身も蓋もない感じ。
あまり写真は撮っていないのですが、こちらは「ちびっ子刑務官」のコスプレコーナーの看板。私の刑務所のイメージといえば、どうしても『ミッドナイト・エクスプレス』や『ショーシャンクの空に』のような陰惨な様子になってしまうので、いいのかこんな軽いノリで、なんて思ったりも。
体育館(職員の共同官舎の付帯施設)の中もバザールでござーる。
もう一つの即売会場、武道場の中に展示してあったお神輿(富山刑務所製)。普通に職人レベルです。
お値段は税込みで273万9千円。お買い得……なんでしょうね、きっと。
即売会を一通り見て回ったあとは、イベントの目玉(という言い方もおかしいですが)である刑務所内見学へ向かいます。入口はイベント会場とは少し離れた北東側の作業門。午前の回には間に合わずに午後の回を待ったのですが、受付開始20分前の時点で長蛇の列になっていました。
ちなみに刑務所の敷地のすぐ横には、このような高層住宅が。上層階からは所内が見放題?
ムショとシャバの境界、作業門です。
早目に並んでおいたので、午後の第1グループにギリギリ滑り込むことが出来ました。
塀の中はセキュリティの観点から撮影禁止。門が二重になっていて、必ず片方の門を閉めてからもう片方の門を開くようになっています。そして入場時と退場時に人数が同じかどうかも厳格にチェック。気軽な見学といえども、この雰囲気では自ずと神妙な面持ちになってしまいます。
他のブロガーさんの記述を見るに、過去の所内見学と比べるとかなり簡略化されたコースになっていた模様ですが、作業場に運動場に独房(これは本物ではなく再現でしたが)にと、一応エッセンス?を体験することは出来ました。一言ずつ印象をコメントすると、
【作業場】
今回は木工工場と印刷工場を見学。一般の工場を見たことがないので比較はできないのですが、整理整頓が行き届いていて効率的に作業が出来そうな感じでした。出所後の再就職をスムーズにするため、パソコンの訓練を実施するコーナーもあり、最新型のiMacが設置されていました(ちなみに私は未だにCore 2 Duoを絶賛愛用中)。希望者には重機の免許を取得するプログラムもあるそうです。
【建物をつなぐ渡り廊下】
公立の小中学校とまったく同じ雰囲気なことに、懐かしさと驚きと。まぁ、「浮きこぼれ」の子にとっちゃ、学校も刑務所と同じようなものでしょうしね……というのは余計な一言か(でも、怨嗟は深いぞ)。
【運動場】
ひっ、広い…。 さすがに収容定員2703名(※見学前に配布されたプリントから。とはいえ、常時キャパオーバーの状態とのこと)の巨大刑務所なだけあります。ここではソフトボール大会や運動会などのイベントも行われるらしいです。
【模擬居室と朝・昼・夕の食事】
見学コースの最後に、独居房を再現した部屋を見ることができました。縦に長い畳敷きの部屋の広さは2畳弱という感じで、トイレと洗面所との仕切りはない“完全ワンルーム”。本棚に加えてテレビも設置されていますが、大阪刑務所では自由にチャンネルは選べず、指定された番組しか見られないようです(当刑務所が犯罪傾向の進んだ受刑者を収容しているという事情もありそうです)。
三食の食事のサンプルも用意されており、きわめて質素ながらも栄養士によって万全にcal/栄養計算がされており、いわゆる「クサいメシ」とは無縁とのこと。というか、塀の外でもこれよりはるかにヒドい食生活を送っている人なんてゴロゴロいるんじゃないでしょうかね。就寝は午後9時とのことで、これまた毎日残業続きのサラリーマンとはどちらが(以下略)。
見学コースの範囲内には受刑者の方が一人もおられなかったので、率直な所まるで映画のセットの中を歩いているような感覚でしたが…。刑務所にはその国の人権レベルの高低が最も如実に現れると言われますが、第三世界は論外、北欧辺りは別格として、少なくとも先進国を名乗るのに恥ずかしくない態勢での運用を切に願いたいところです。もっとも現場レベルとはまた別に、刑務所は受刑者に苦痛を与えるのが目的ではなく、あくまで社会復帰のための矯正施設である、という共通認識が国民レベルで浸透しなければ、如何に施設運営が適切に行われようともその効果は限定的に留まってしまうことでしょうね。私は「幸運にも」犯罪被害とも加害とも無縁なので、受刑者の方といえども我々とは本質的にはまったく同じで、しかしながら家庭環境や社会情勢といった星の巡り会わせが偶々悪かった――位の認識でいます。DIO様のように「ゲロ以下のにおいがする、生まれついての悪」がいるかどうかは知らん(笑)。
最後に、関西矯正展の名物となっているらしい、所内の工場で作られたコッペパンを長い列に並んで購入。2本1組で100円、一日二回販売で各回600組の限定販売となっています。
▲「ハッピーベーカリー オオサカプリズン」謹製のコッペパン
保存料不使用で日持ちはしないので、さっそく翌日の朝食にいただきましたが、こういうのそこらのスーパーやベーカリーじゃ売ってないよなぁ、という感じの素朴で優しい味わい。人気を博しているのにも納得でした。
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関西矯正展、と聞くと何だか物々しい響きではありますが、実際には毎年恒例の地元のお祭り、という印象。皆さん近所から自転車でシャーっとやって来て、中国人観光客もかくや…の買い物袋にパンパンに詰め込んだ戦利品を載せ、満足げに帰っていくのでありました。普段は全く接点のない世界ではあるものの、人間社会に生きている以上は「臭いものに蓋」では済まされないわけで、社会勉強としてこういった機会に一度訪れてみるのもいいかもしれません。
(2014.11.08)
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