15/07/01 (5)鉄道博物館 その3(ヒストリーゾーン<戦前・戦後>)
1F「ヒストリーゾーン」のちょうど中央には転車台が設置されています。その上に鎮座しているのは――
【EF55形式電気機関車】です。こちらは3ヶ月前の4月12日より展示が始まったばかりのニューフェイス。そういえばリニア・鉄道館を訪れた当時も、700系新幹線が展示に加わったばかりの時期でした。双方とも特に狙ったわけではなかったのですが。
展示されている1号機の製造年は1936(昭和11)年。この形式は前後で先頭形状が異なり、流線形側のユーモラスな見た目から「カバ」や「ムーミン」といった愛称でファンに親しまれてきました。この車両が製造された当時は世界的に鉄道車両に流線形を採り入れることが流行していた時期でしたが、EF55形については流線形の空力効果が発揮できるほどの速度が出せなかったのと、流線形側を常に先頭にするには転車台での方向転換が不可欠で電気機関車の特性をスポイルすることになったため、量産はされず計3両が生産されるに留まりました。もっとも、戦前の国鉄の看板特急である「富士」や「つばめ」の牽引機としての栄誉を担ったため、当時の国鉄利用客にビジュアル面で多大なインパクトをもたらしたであろうという、PRに貢献したという点では決して無意味ではなかったのでしょう。
なお、この車両は12時と15時の2回、転車台での回転実演と汽笛の吹鳴のパフォーマンスが行われます(下の写真は15時の回で撮影)。まぁ、身も蓋もないことを言えば単に回るだけ(笑)で特にスペクタクルもないのですが、展示車両が生で汽笛を鳴らすのを聞けるのはこの実演中だけなので、ご興味があればどうぞ。
ついでに7年前に訪れた『梅小路蒸気機関車館』の転車台で行われた、C61形蒸気機関車の回転実演の様子を貼っておきます。同館は今年8月末をもって一旦閉館し、来年春開館の『京都鉄道博物館』の一部として統合されますが、再オープン後も今と変わらずくろがねの馬の回転実演が見られることでしょう。
こちらは国産初の高速旅客用機関車として製造された、【C51形式蒸気機関車】。展示車両は1920(大正9)年製の5号機です。性能が優れていたために289両という大量生産がなされ、古い設計の形式でありながら国鉄無煙化が達成される1975(昭和50)年の9年前である1966(昭和41)年まで活躍を続けていたそうです。
お次は【C57形式蒸気機関車】。ご存知国鉄の蒸気機関車の傑作モデルとして、北海道から九州まで全国各地で活躍した形式です。展示されている135号機は同形式の製造初年である1937(昭和12)年に製造されました。ちなみにEF55形がやって来るまでは、このC57形が転車台のヌシだったそうです。1975年12月、北海道で国鉄最後の蒸気機関車牽引による定期旅客列車(イベント用の列車を除く)が運転され、この135号機はその際の牽引機でした。
蛇足ですが説明板にはレールファンの間で自然発生的に使われるようになった「シゴナナ」のニックネームは紹介されていますが、他方でマスコミで多用される「貴婦人」は豪快に無視されているのが小気味好いです。300系新幹線の「鉄仮面」もそうですが、マスメディアの鉄道車両関連の報道には須らく非実在ニックネームを添えなければならないというテンプレートでもあるのでしょうかね。C57形はリニア・鉄道館にも139号機が展示されており、以前書いた訪問レポートでは写真を省略したのでこちらの方に載せておくことにします。
続いては【マイテ39形式客車】。戦前の1930(昭和5)年に登場し、東京-下関間の特急「富士」に連結されていた1等展望車両です。欧亜連絡特急の一員として海外からの観光客誘致という任を担うべく、桃山様式の壮麗なインテリアとなっています。
車両の最後尾はオープンエアの展望デッキ。こういったデッキ、2015年現在現役の車両だと『やまぐち号』の展望車風客車やバンコク-シンガポール間で不定期運行されている『イースタン&オリエンタル・エクスプレス』の展望車両、あとはプアマンズ展望デッキこと台湾の復興号の最後尾デッキあたりが思い浮かびますが、とうとう日本国内でも『トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)』で往年の1等展望車を受け継ぐオープンエアの展望デッキが復活するようです。
次は【クモハ40形式電車】。20m級の半鋼製車体に3ドアロングシートという、戦前の通勤型電車としては完成形に達した車両となっています。こちらの情景再現は特に出色で、電球色の照明に照らされた車内でシートに座っていると、本当に1930年代の通勤客になって家路に就いているような気分になれました。
(鉄道博物館では、車内へ立ち入ることが出来る車両については座席への着席が可能です)
こちらは【オハ31形式客車】。1927(昭和2)年製造の車両で、国鉄の客車では初となる半鋼製車体を採用しています。リベットが浮き出ているのは溶接技術が未発達だった証拠。晩年は津軽鉄道に譲渡され、1983(昭和58)年まで運用されていたとのことです。
車内へ。内部が公開されている展示車両の中で最も印象深かったのがこの車両でした。飴色の照明と字面通りの網棚、つややかに輝く木製ニス塗りの化粧板が醸し出す重厚な雰囲気が、90年前にタイムスリップさせてくれます。この座り心地の悪い椅子で当時は数十時間もの長旅を強いられていたのですから、現代人の我々も飛行機のエコノミークラスなんかで音を上げていてはいけませんね。
津軽鉄道で運用されていた車両ということで、津軽鉄道名物のダルマストーブも設置されています。
次回は戦後に登場した車両群です。
(2015.07.01)
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