17/05/08 (6・終)観光特急青の交響曲 その4【復路/吉野→大阪阿部野橋】
それでは帰途に就くことにしましょう。こちらは吉野発の青の交響曲の空席状況。言うまでもなく第4便(最終便)は満席となっています。第2便(吉野12:34⇒大阪阿部野橋13:51)と第3便(大阪阿部野橋14:10⇒吉野15:26)については吉野へ日帰り観光するには不便な時間帯なので第1便・第4便のように熾烈な座席争奪戦にはなっておらず、実のところ試乗する「だけ」ならば既に座席の確保は容易な状況です。日帰りパックツアーでも阿倍野のレストランや料亭でランチを賞味したあとに第3便で吉野へ向かうというコースを設定するなど、企画担当者は限られた“資源”を活かすべく頭をひねっている様子。
観光特急青の交響曲 吉野(16:04) → 大阪阿部野橋(17:22)
列車は15時26分に入線してきているのですが、折り返し準備のために乗車が始まったのは発車の約10分前となりました。幾らなんでも作業が30分も掛かるとは思えないので、心情的には乗車開始をもう少し繰り上げてほしいものですが。
帰りは先頭となる1号車に乗車します。どうしたことかアテンダントでもない職員が複数人バタバタと慌ただしく車両を出入りしていて何事かと思ったのですが、どうやら2便か3便で乗客が座席の座面に飲み物をこぼしてしまったらしく、1号車の2席がビッショリ濡れて使えなくなっていた模様。普通ならば空いている席へご案内、となるのですが、何しろ満席なので代替の席は用意できず、ラウンジスペースへ避難してもらうということになったようです。当然特急料金とDX料金は全額払い戻しとなったようでしたが、乗ること自体が目的の列車ですしこれでは到底収まりがつかないでしょうね。
そんな災難の現場を横目に、我々は指定された席へ。固定テーブルをはさんで4席が向かい合う「サロン席」です。この区画については3名か4名での乗車の場合にのみ発売。3名だと1席余ってしまいますが、グループ専用席なのでここに他の人が座ることはありません(料金は3名分だけでOK)。座席そのものはリクライニングしない(ある程度傾斜したポジションで固定)のとインアームテーブルが省かれているのを除けば1人席・2人席と共通です。
▲(3枚)サロン席。通勤型車両時代、ここにはドアがありました
なお、このサロン席と2人仕様の「ツイン席」についてはインターネットのチケットレスサービスでは取り扱っておらず、近鉄の窓口か旅行代理店でのみ販売しています。しまかぜならばサロン席も個室もネットで買えるのに、どうしてこれだけがこういう扱いになっているのかは不可解ですが…。私は阪急沿線の住民で近鉄の窓口は近くにないため、旅行代理店へ赴いて特急券を購入することになりました。オンラインで空席状況が分からないのは不便ですし、JRと違って私鉄特急の予約の場合は手数料を取られてしまう(今回は540円)のも癪。一応、1人席・2人席がネット経由で発売直後に瞬殺してしまってもサロン席・ツイン席の方ならばしばらくの間残っている“可能性がある”というメリットがないことはないのですが。
復路便でもバーカウンターにてお買い物。今回はせっかく立派なテーブルがあるので自席へ持ち帰ることにしました。私はこちらの「地元ワイナリーの国産ぶどうジュース(税込450円)」をチョイス。同じ100%でも濃縮還元のものとは違い、生のぶどうの風味そのままという感じです。ちなみに720mlのボトル一本丸ごとならば1,200円(税抜)と、下手なワインよりも高いというなかなかの貫禄(→メーカーの商品ページへ)。
吉野川を渡ります。
大和上市や下市口といった吉野線の主要駅では、下校の高校生がプラットホームを埋めていました。尤も、彼/彼女らが乗り込んでくるのはこのすぐ後を追いかけてくる急行(※橿原神宮前までは各駅に停車)です。正直、青の交響曲でなくともこの高校生たちと混乗にならずに済むだけで特急料金を払う価値があるかと。
揺れに揺れる吉野線を抜け、列車は南大阪線の複線線路を疾走。楽しかったデイトリップも瞬く間に最終楽章を迎え、次第に情報量を増していく車窓が我々を現実へと引き戻していきます。この時間帯だとサロン席側(=大阪阿部野橋行きだと進行方向左側)へは思いっきり西日が射し込んでしまい、しまかぜのようなロールアップカーテンだと日光を遮りつつ視界を確保できて機能的なのですが、こちらに設置されているのは高級感のある横引きカーテン。まぁ、あくまで雰囲気重視ということでこれについては文句を言う気はさらさら無いのですが。
17時22分、定刻通り大阪阿部野橋駅に到着(してしまったよ)。きょう一日お付き合い頂いた母と妹に感想を尋ねてみると、二人ともしまかぜよりも青の交響曲の方が好みとのことでした。それにしてもJR九州の観光列車の一部が運転士+アテンダント1人の2人乗務で運転されていることを考えると、定員65名の列車に合計6人の乗務員がいるというのは随分贅沢なマンパワーの使い方だなぁと感心。ここは流石にJRや三セク系の観光列車にはない、大手私鉄ならではの底力でしょうか。サービスというものが得てして「慇懃すぎる接遇の押し売り(正しく金銭的な意味で)」に堕しがちな中で、近鉄の観光特急のようにハードウェアに注力する一方でソフトウェアを吟味・取捨選択して乗りやすい料金を実現するという方向性は大変好ましく感じられました。こんなコスパモンスター達を繰り出された日には、さしものドーンデザイン陣営も真っ青だぞ、と。もちろん個性は三者三様なわけなので、今後の旅で全国各地の観光列車に一つでも多く乗車してその真価を自らの目で確かめてみたいものです。
<完>
(2017.05.08)
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