17/09/25 (2)京阪8000系「プレミアムカー」に乗ってみる(後編)
たった2分の遅れは超速の折り返し作業で完全に吸収し、9時00分、電車は定刻通りに淀屋橋駅を後にしました。まずは淀屋橋・北浜・天満橋・京橋の大阪都心部4駅で乗客を集めていきます。プレミアムカーへは北浜と天満橋からも若干の乗車がありましたが、やはり御堂筋線と接続する淀屋橋、そして京阪電車も含めて3社5路線が集まるターミナルである京橋からの乗車が圧倒的です。プレミアムカーの運用開始から1ヶ月が経過し、今回は一人だけ誤乗があってアテンダントにより隣の一般車両へと誘導されていったものの、みな心得た風で紙のチケットやスマホを手に乗り込んできます。全車自由席だった時代には先の3駅で大部分の席が埋まってしまい、京橋からの乗車では列の前の方でないと着席は絶望的…というシチュエーションが多々あったのですが、指定席ならばそのような心配は無用。私も北新地駅→淀屋橋駅の徒歩連絡を利用する機会が確実に減りそうです。
京橋を出ると、枚方市まで13分のノンストップ区間へ。車内放送によると一般車両は混雑している模様で、終点出町柳まで補助イスの使用を中止する旨の案内がありました。それに比べてプレミアムカーの優雅さといったら……。なお、アテンダントは京橋で入れ替わっています(ここに基地があるのでしょう)。今回の乗車ではお二方とも女性でしたが、男性のアテンダントもおられるとか。二人とも比較的長身だったので、プレミアムカー導入にあたって新規にデザインされたコスチュームもより一層映えています。事前にプレミアムカー券の発券を受けている乗客に対しては車内でのチェックは省略されるため、アテンダントは携帯端末で発売状況を照合しつつ、車内を素通り。未確認ではありますが、空席がある場合は車内でのプレミアムカー券発券にも対応しているそうです。そしてもう一つ、実は後方の座席のリクライニングに不具合が起こっているらしく、寝屋川車庫から派遣されてきたと思われる作業服姿のメンテナンス要員が京橋で複数名“闖入”してきました。もし満席ならば少々厄介なことになったのですが、今回は空席があったので該当の席が指定されていた乗客は改めて隣の列にアサインされ、一件落着。すぐに修理は済んだようで、次の枚方市で彼らは下車していきました。
複々線区間を疾走する車窓から。座席がオリジナルの920mmピッチから1,020mmピッチへ拡大されたために、この手の改造車では避けられない窓割りのズレが発生してしまっています。私の座る4列目では柱の部分が真横に来るものの、斜め前方の視界は良好なのでまだマシな方。乗降扉を埋めた場所に配置された10・11・12列目は柱が太くなっているので、進行方向によっては外がほとんど見えないこともあるようです。私は何十回と通っている路線なので特に重視はしませんが、プレミアムカーの特設サイトには窓割りが明示された配置図が掲載されているので、気になる方はこちらで前もってのチェックを。
なお、カーテンはオリジナルの横引き式からロールアップ式に変更されています。ガイドレールは元々の窓割りとは無関係に現在のシートピッチに合わせて配置されているため、個別に調整が可能。柱を避けて内側に設置されているので、カーテンを完全に閉めてしまうと窓框が物置き、或いは肘掛けとして使えなくなってしまうのですが、先述のように代替設備はすべて揃っているので不便はありません。
私の隣の4A・4B席には、天満橋から乗車してきた母娘が。女の子は幼稚園の年長くらいで、グミキャンディを頬張りつつお母さんとカードゲームのUNOをプレイしています。これも大型テーブルが付いているプレミアムカーならではの風景。一人客の割合が多いのと、二人以上でも話し声が控えめなこともあって、車内は終始アッパークラスらしい品位が保たれていたのは大変好ましかったです。子供料金の設定がないことについては大人にもやかましい人間は掃いて捨てるほどいる、寧ろこちらの方がいい年こいて空気を読まないぶんタチの悪いことが多い…という理由から子供を排除する意図は含めるべきではないと考えますが、上の女の子も騒ぎたい盛りだろうに大人しく遊んでいて誠に頭が下がる思い。もちろん、時間帯や曜日・シーズンによって客層は大きく変わってくるのでしょうが、今回に関してはもっと写真を撮影したかったところ、静粛を乱すのを憚られてほとんど車内を移動できなかった――という“嬉しい”事情があったことを特筆しておきます。また、懸念していた一般車利用客の車内の通り抜けですが、そもそも混雑のために一般車両自体の通り抜けが困難だったためか、今回の乗車では一度もみられませんでした。貫通路扉に窓が付いていないので、前後の車両の混雑状況を目で確かめることは出来なかったのですが。
(下の写真は一度だけ大阪側車端まで歩いた時に撮影したもの)
9時20分、枚方市着。京都方面行きの特急の場合、プレミアムカーからの下車が始まるのは事実上ここからとなります。この車両からの下車はなかった一方で、新たに片手で余る程度の乗客を迎え入れました。枚方市以遠からの乗車だと、どこまで乗っても料金は400円。線形の関係で距離のわりには時間の掛かる区間なので、そういった意味でも利用価値は高いです。
枚方市から6分走って、次は樟葉(下は樟葉停車中の写真)。ここも枚方市と同様に、下車ゼロ・乗車数名となりました。最混雑区間は京橋-枚方市という予断があったのですが、この時間帯なので大阪都心→郊外方向の流れは少なく、郊外→京都都心方向の利用が相対的に目立ったということになるようです。
こちらはシートポケットに入っている、車内サービスの案内リーフレットです。一応車内販売も実施されているのですが、飲食物の販売はなくオリジナルグッズ(現在はブックカバーと扇子の2種)のみ。当然のことながら外からの飲食物の持ち込みは自由なのですが、では車内で販売するとなるとやはり「出口の方」の面倒を見る責任を負うことになると考えるのが自然ですし、実際に社内の企画段階でも俎上には載ったものの、トイレの設置が見送られた時点で却下されたのでは……と、まるで根拠のない想像を巡らせています。
裏面です。ブランケットの貸し出しはこれからの季節には嬉しいサービス。無料Wi-Fiサービスも実施されており、試しにAndroidタブレットで接続を行ったところ、メールでの認証を経てあっさりと繋がりました。
その「KEIHAN Free Wi-Fi」の接続画面。外国人観光客に限る…などといった制限は一切ありません。
3回スピードテストを試みた結果はこちら。速度は様々な要因に左右されるのであくまで参考程度ではありますが、無料Wi-Fiでこれだけ出れば御の字でしょう。車内がうるさければネットラジオでも聴いて逃避しようか、と考えていましたが、結果的には上記の通りの静粛空間だったので、スピードテストを実施しただけでタブレットの出番は終わりとなりました。
【追記】
他のBlogで大阪方の車端だとWi-Fiがつながりにくい、というコメントを見ましたが、
1. 車両の端から端まで18m強しかない(細長い空間なので、APの設置にあたってアンテナの指向性は考慮しているはず)
2. その間にある遮蔽物はガラス製(=電波がほとんど減衰しない)のパーティション程度
3. 抑々バックボーン回線がネックになっているので、多少の速度低下は実質的に影響しない
という点から、APからの距離については関連性は薄いと考えられます。寧ろ最大41名という同時接続数や、都市部を走る路線ゆえの2.4GHz帯での混信の方が要因としては大きいかと。いずれにしても公衆Wi-Fiの場合はこれといった原因の特定が非常に難しいのが現状です。
このほか、京橋を出たところでアテンダントさんによる希望者へのフリーペーパーの配布(同じものが駅でも配布されていたので、車内誌ではないらしい)もありました。
樟葉-中書島間は11分と、停車駅が増えた京阪特急にしては京橋-枚方市と並び、まとまった時間の無停車区間。桂川・宇治川・木津川の三江併流エリアではほんの一時ですが延々続いてきた市街地が途切れるため、インターアーバンながら車窓を通してちょっとした旅情さえも味わえます。この景色をプレミアムカーから見るか、それともダブルデッカー車の2階席から見るか。……いや、テツならばやっぱり先頭車のかぶりつき席が特等席!という意見で満場一致でしょうかね。
9時40分着の中書島では宇治線と接続しますが、乗降ともにゼロ。2分後の丹波橋は近鉄京都線との乗り換え駅ですが、こちらもまた乗降ゼロでした。アテンダントさんもここからはまた忙しくなり、停車駅での閉扉の度にホームへ向けてお辞儀をしています。
東福寺を通過すると地下へ潜り、京都都心部に入ります。七条ではプレミアムカーからの最初の下車客が1名。満席ではないものの、ほぼ全区間に渡ってそれなりに高い乗車率をキープしていたようです。そしてやはりというか、繁華街最寄りの祇園四条で一挙に十数名が降りていきました。アテンダントさんも「ありがとうございました。お気を付けていってらっしゃいませ」と声をかけながらお見送りです。
▲祇園四条到着
三条でも祇園四条に近い多くの下車があり、まばら…というほど少なくはない乗客を乗せたまま、終点出町柳へ向かいます。
▲三条到着。神宮丸太町のためだけに準急と接続を取ります
9時55分、定刻通り到着。ここでも「所定で」4分というタイトな折り返し時間が設定されています。フロントマスクの写真を撮るために3両分歩いた頃にはもう座席の転換作業は終わっていたようで、すました顔でもって再び淀屋橋へ向けて出発していきました。
というわけで導入発表から2年、首を長くして待っていた甲斐のある上質なサービスを体験することが出来ました。高頻度運転の一部指定席列車という括りでは名鉄特急の名古屋本線系統やJR北海道の快速エアポートという先例がありますが、やはり3列シートの衝撃は大きかった。全体的な印象としてはべた褒め基調で構わないと思いますし、敢えてツッコミを入れるのならば、せいぜいトイレがない位なもの。あとはプレミアムカー券の販売チャネルが限られていることですが、今後プレミアムカークラブの会員が増加していくにつれ、駅での直前購入では既に先発便の席が埋まっている、又は希望の席が残っていない…というケースが多発することも考えられるので、ホーム上への自動発売機設置も当然視野に入れつつ、ひとまず今のところは推移を見守る段階、といったところでしょうか。そのほかの希望・提案としては……
〔一般車の混雑緩和〕 一般車の補助イスが使用停止になっていた件について触れましたが、プレミアムカーの導入によって編成定員が減少し、特急のデータイム10分間隔化以降慢性化していた混雑に拍車がかかったとするならば、これはちょっと看過できないかなと。この混雑を嫌ってプレミアムカーへ避難するというニーズも間違いなくあるのでしょうが、やはり混雑には輸送力の増強で対応し、プレミアムカーは純粋にワンランク上の空間を求めて、という形になるのが望ましいと考えます。
〔運転間隔の統一〕 プレミアムカーが連結されている8000系電車は10編成。これだけでは日中の特急の運用を賄いきれないため、3本に1本程度が3扉車の新3000系で運転されています。まぁ、先発が新3000系ならば次の電車を待つまでもなくそのまま乗ってしまう人も多いのでしょうが、せめて日中だけでもプレミアムカー連結の編成に統一できたらなと。改造するとすればやはり新3000系ということになりそうですが、8000系と違って朝ラッシュのピーク時にも駆り出される形式なので、実質的に1割以上編成定員が減少してしまうような改造は難しいかもしれませんけれども…。
〔下位種別への投入〕 8000系電車はかつては普通・区間急行・準急といった下位種別の運用にも若干ながら入っていたのですが、プレミアムカー連結後は急行以上の種別にしか充当されなくなりました。というよりも、急行運用があるということにちょっと驚いたのですが。名鉄の一部指定席車の場合は急行以下の種別に入る際には指定席車では客扱いを行わないので。そこで――ですが、8000系の運用の対象を全種別へと戻し、下位種別でのプレミアムカー営業を実施してみてはどうかなと。これはある意味新3000系など他系列へのプレミアムカー連結を見据えた地ならしとも言えますが。インターネットを使えば必ずしも全駅で発券に対応する必要はないですし、どうせアテンダントが乗務するのだったら車内発券を主体にしてもよいでしょう。首都圏の普通・快速列車グリーン車やヨーロッパの都市内・近郊列車の1等車のような例もありますし、アッパークラスは優等列車の専売特許ではないですよ、と主張しておきたいところです。
最後に…… 今回は京橋-出町柳間を担当したアテンダントさんに主にお世話になりましたが、凛とした仕事ぶりとナチュラルな笑顔に感激しました。それこそ料金500円でこのクオリティ?と不思議に感じるくらいに。きょうは二人とも女性でしたが、そのうちまた男性にもお目にかかってみたいものですね。
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ここからはオマケ。往路のプレミアムカー乗車が物足りなければ出町柳-枚方市間の「おかわり」をするつもりでしたが(料金も400円で済みますし)、往路だけで満足できたので復路は一般車両に乗車することにします。
一瞬改札を出ただけで構内へUターンし、トイレを経由して再びホームへ。10時09分発の特急は、往路の特急を追いかけてきた「洛楽」の折り返しとなります。特急よりも所要時間が5分短縮されているので、在線時間も9分とこの駅にしては非常に長め。しばらく見ないうちに前面の貫通扉下部に液晶ディスプレイが新設されており、鳩マークと「COMFORT SALOON 3000 SERIES」の文字が表示されていました。
新3000系も横3列配置です。プレミアムカーとは設計思想が180度異なりますが。
始発駅からの乗車なので、難なく先頭のかぶりつき席をゲットです。何だかんだでやっぱりここが一番プレミアム(笑)。途中で2本目の「洛楽」とすれ違いましたが、液晶ディスプレイには鳩マークではなく洛楽専用のデザインが表示されていました。
往路とはまた違った意味で時間の経つのは早く、目的地の枚方市に到着。
次回へ続きます。
(2017.09.25)
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