17/09/25 (1)京阪8000系「プレミアムカー」に乗ってみる(前編)
また3ヶ月ほど更新が滞っておりましたが(平常運転です、念のため)、ようやく夏が過ぎ去り日中の暑さも和らいできたので、乗り物ネタ2題を単発記事としてアップすることにします。
今日のメインイベントは枚方からスタートするのですが、枚方といえば京阪沿線、そして京阪といえば―― というわけで、先月20日に運用を開始ばかりの特別車両、『プレミアムカー』(→京阪電鉄の公式ページへ)の初乗りをしてみることにしました。本当はもっと早くに体験しておきたかったのですが、こんな時に限って京都方面にとんと用事がなかったりするもので。
自宅から京阪沿線へ向かうには福知山線~JR東西線で京橋に出るのが最適なコースなのですが、今回は記念すべき初乗りということで、北新地駅から15分ほど歩いて始発の淀屋橋から乗車することに。座席指定券(京阪では「プレミアムカー券」と呼称)はインターネットでも購入できるのですが、列車(車両)の性質上、本格的に席が埋まり始めるのは発車直前の段階のはずなので、事前予約はせずに駅のインフォステーション(事務室)で入手することにしました。下の写真は乗車予定の列車の発車25分前における発売状況。このとおり直近4列車は全区間で十分な空席がありました。尤も今日は閑散期だからであって、これから迎える秋の行楽シーズンには平日であろうと一転してバツ印のオンパレードとなるのは必至でしょうね。
こちらが淀屋橋駅のインフォステーション。従前より企画きっぷを購入する際にお世話になるコーナーでしたが、1ヶ月前からは京阪版みどりの窓口ともいえる機能を兼備することになりました。カウンターにはプレミアムカーのシートマップが用意されており、ちょっと早目に来たので席は選び放題……かと思いきや、さにあらず。2人掛け席には余裕があったものの、1人掛け席については何と最後の1席が残っているだけでした。私のような試乗目的でない限り、駅に着いた時点でプレミアムカーの連結/空席の有無に関わらず先発の特急に乗って行ってしまうはずなので、恐らくインターネット経由で予約されていたのでしょう。乗換案内サービスを併用すれば他線からの乗り継ぎでも(輸送障害が発生していなければ)正確に乗車列車が割り出せるので、一本目の列車の車内でスマホを使ってチョチョイと予約……という感じのスマートかつ合理的な購入方法が早くも定着し始めているのかもしれません。
というわけで、意外と難産だった「紙の」プレミアムカー券です。よく見ると、券の地紋が伝統の鳩マークに三ツ星をあしらったプレミアムカーのシンボルマークになっていました。席番は選択の余地なく4C。まあ、2人掛け席でも全然差し支えなかったのですが、せっかく残っていましたのでね。下に敷いてあるのは予約専用サイト「プレミアムカークラブ」の案内チラシです。
今回は終点出町柳まで乗車するので、料金は500円。料金体系はシンプルで、大阪市内~京都市内相互間の乗車の場合は500円、その他の短・中距離区間は400円という二段階制となっています。ほぼ全列車が快速特急・特急・ライナー(後述)のいずれかによる運行ですが、ほんの僅かながら急行として運行される列車も存在し、この場合は例えば寝屋川市~出町柳や守口市~祇園四条間のように、大阪市内~京都市内相互間でなくても500円となる区間が。旅客ヘ向けて公開はされていないものの、京阪本線・鴨東線、そして現在のところ定期運用のない中之島線の全46駅相互間に料金が設定されているものと思われます。なお、子供料金はありません。近鉄のように特別車両料金にも子供料金が適用される例はありますが、プレミアムカーについてはJRのグリーン車と同様に奢侈品扱いとなっているのでしょう。
無事に席を確保したら、駅でトイレを済ませたのちにホームへ下りることにします。わりと(人によっては極めて)重要なことなので強調しておきますが、プレミアムカーには「トイレは付いていません」。JRで言うグリーン車みたいなものだからトイレなんてあって当然でしょ?という思い込みは、実は心理的なデス・トラップ。ネット予約にせよ駅での購入にせよ、先発の列車が必ずしも「最適解」であるとは限らない、という点は留意しておく必要がありそうです。
朝ラッシュもそろそろ終盤近くとはいえ、相変わらずピーク時に近い頻度で電車が押し寄せるホームへ。8両編成の後ろから3両目(※京都方面へ向かう場合)、6号車がお目当てのプレミアムカーなので、その乗車位置へと移動します。傍のベンチには、私の乗車する9時00分発の列車を待っているとおぼしき人達が。というか、淀屋橋駅のホームにベンチなんてあったんですね。今回初めて知りました。特急にしろその他の種別にしろ、ラッシュ時のみならず日中でも出ていったと思ったらすぐに次の電車が入ってくるので、かつてはこんな“長っ尻”の人は居なかったはず。ある意味全車(全列車)自由席だった時代には見られなかった風景なのかもしれません。
3番ホームの発車標。しばらく来ないうちに液晶モニタータイプのものに置き換えられていました。レイアウトの自由度が高いLCDとはいえ、情報を詰め込みすぎて雑然としている感は否めませんが……。ご覧の通り、後続の9時10分発の列車は京橋-七条間ノンストップの快速特急「洛楽(らくらく)」。当初は行楽シーズン限定の臨時列車として運行が始まりましたが、昨年春のダイヤ改正で土日祝日ダイヤにおいて定期化、そして今春のダイヤ改正では平日ダイヤでも定期化されました。私はまだ乗ったことがないのですが、残念ながら行楽シーズンの特別ダイヤを除き、快速特急の全列車が新3000系による運行。乗客の入れ替わりが少ないぶん、どう考えても2扉で座席の供給数の多い8000系の方が適任なのですが、どうしてなのでしょうね? ともあれ、今回は涙を呑みつつプレミアムカーの試乗を優先させることになりました。ちなみに洛楽の前後には通過駅をカバーするための優等列車が追加設定されるため、この時間帯は時刻表も往年の15分ヘッド時代を髣髴とさせるような賑やかさです。
【追記】後日洛楽に乗車した時のレポートはこちらから。
電車が入ってきました。朝ラッシュのピーク時に大阪へ到着する列車は特急も含めて全列車が3扉車なので、折り返しの上り(京都方面行き)特急も8000系が充当される列車については7時51分から9時00分まで1時間以上のブランクがあります。こちらはプレミアムカーのデビューと同時に運行を開始した新しい種別、「ライナー」の折り返し。枚方市発と樟葉発が各1本ずつ設定され、8時54分着の当列車は樟葉発です(始発駅から京橋まではノンストップ、以遠は各駅に停車)。いわゆる通勤ライナーで、全席指定制のために一般車両にも300円という料金が設定されているのが特徴。プレミアムカーとの差額はたった100円なので、やはりプレミアムカーから先に席が埋まっていくのだろうと思われます。
一般車からの降り具合を見逃してしまいましたが、こなたプレミアムカーからは少なからぬ下車客が。なにしろ折り返し時間が所定でも6分、この日に関しては2分遅れで到着したために4分しかないので、下車が完了したらすぐに扉を閉めて座席の転換作業が実施されます。転換クロスシートの一般車ならば一斉にバタンと背もたれの向きを変えるだけなのですが、回転式リクライニングシートのプレミアムカーの場合はただでさえスローモーなのに加え、奇数列・偶数列の2回に分けての工程となります。ああ、もどかしや……。
車内整備の間に方向幕も撮影。一般車のものについては従来の幕式がそのまま使われていますが、プレミアムカーの場合は表示する情報が増えたためにやや大型のフルカラーLED幕が新設されました。手持ちのチケットにも記載されている号数は「0900」。09時台に始発駅を出発する上りの1本目(2本目以降は02、04、06…)という付番ルールならばJR北海道の快速<エアポート>と同様なのですが、実際にはもう少し複雑な法則が存在するようです。その横には停車中の駅の発車時刻を表示。定刻通りに走っていれば特に気に留める必要はないのですが、ひとたびダイヤが乱れ始めたならば号数ともども俄かに重要度を増す情報に。というのも最短10分間隔で同じ種別/行先/車種/編成の列車がやって来るので、例として10分遅れたならば見かけ上は定刻で走っているように見えるため、自由席では混雑を別にすれば影響は無いのに対して指定席だと明らかに不都合が生じる、というわけです。尤も、実際にそういった事態が起こったならば駅でも構内放送などでしっかりと案内が行われるとは思いますが。
……こう書くと結構な時間、ホームで待ちぼうけを食らっていたような印象を与えてしまうのですが、写真のタイムスタンプによるとライナーの開扉から車内整備完了後の再開扉までは2分を切るという早業でした。
というわけで発車2分前にようやく車内へ。プレミアムカーには専従のアテンダントが1名乗務しており、停車駅では出入口に立ってお迎えとお見送りをしてくれます。乗降扉はプレミアムカーへの改造に際して大阪側のものが撤去され、京都側の1ヶ所となりました。客室とはガラスのパーティションで仕切られているので、2011年登場の阪急『京とれいん』に続いて京阪車両初のデッキ、ということになるでしょうか。
メインの客室となる、3列目から14列目にかけての全景。横3列のシートが1,020mm間隔(一般席からは100mm拡大)で配置されており、単純なスペックだけならば近鉄特急のデラックスカーにほぼ比肩するものとなっています。デッキから車端にかけて12列がずらりと並んでいるため、一見しただけでは19m級の車両とは思えないような奥行き感がありました。
1人掛け席(上)と2人掛け席(下)。まず目を惹くのは大きく張り出したヘッドレストで、同じくプレミアムを冠する南海の『サザンプレミアム』の座席を思い起こさせる造りです。座り心地についてはこれといった印象はなかったのですが、裏を返せば全く違和感がないということでもあり。短距離乗車だからといって決して等閑にすることはなく(どこかのスピード番長とは役者が違う!)、アッパークラスを標榜するのに相応しい優れたフィット感を提供しています。ヘッドレストの外側にはプレミアムカーのシンボルマークが。上部に取り付けられた球形の持ち手と共に、金色というこの上なく直球なカラーが配されていました。アームレストの先端には一方にリクライニングレバー、もう一方にはモバイル機器用のコンセントがあります。
デッキと通路部分の床材は塩ビですが、座席部分の床はカーペット敷き。京都を沿線に擁するおけいはんらしく、枯山水の砂紋を模したデザインとなっています。壁面にフットライトが取り付けられているのもお洒落。
座席背面です。大型テーブル・シートポケット・フック・ドリンクホルダーと、今時の特急型車両のシートに備わっているものは一通り揃っています。フットレストだけは省略されているものの、私個人としてはほんの些細なことです。
テーブルの展開状態。背面テーブルが使えない客室端の席にも小ぶりながら壁面テーブルやインアームテーブルが装備され、全ての席で何らかの形でテーブルが使用できるようになっています。
自席からデッキ方向を眺めて。もう一方の車端部には2人掛け席が2列配置されており、車椅子スペースを除いた座席数は合計で40席となります。
その車端部内、1人掛け席側のスペースにはアテンダント用の乗務員室と荷物置き場、そして車椅子スペースがあります。今回は車椅子の乗客は居なかったので、アテンダントさんがここに立って客室全体に目を配っていました。
始発駅ながらも2分間では充分なアコモデーション観察もできないまま、発車時刻を迎えることに。後編では出町柳まで55分間の行程を追いつつ、更にファーストインプレッションを綴っていきます。
(2017.09.25)
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