« ちょこっと、福井へ。2日目後半【ランチ、永平寺、そして帰路】 | トップページ | 19/10/31 (2)富山への道 後編【北陸新幹線・金沢→富山】 »

2019.11.11

19/10/31 (1)富山への道 前編【特急サンダーバード・大阪→金沢】

 直前までのエントリーで3回に分けて書いてきた通り、先月クルマで福井を旅してきたのですが、旅自体はとても楽しかったもののやはり彼の地の鉄道路線に触れるチャンスが全く無かったのが心残りで、帰ってきてからというものまだ見ぬ鉄路への思いが募るばかり(オーバー)。というわけで、ようやく秋らしい気候になってきたのと時間も確保できるということで、まだ3週間しか空いていませんがえちぜん鉄道と福井鉄道の完乗を目的として一人で福井を再訪することに。当初は日帰りでもいいかなと考えていたのですが、折角の機会なのでもう少し奥地にも足を延ばすことにし、相当な駆け足ではありますが3日間を使って富山・金沢・福井の北陸三大都市を周遊するプランへと拡張することにしたのでした。



 初日は富山市内をうろうろするので、往路は一気に最奥の富山駅を目指します。北陸線特急の下り始発に間に合わせるために、自宅最寄りのJR川西池田駅を5時45分に出る電車で出発。関空から発つ朝イチのLCCだと阪急の雲雀丘花屋敷駅を4時25分に出るパターンが多いので、これでもまだ遅いな、と思ってしまいます。


Hokuriku19_01_01


 大阪駅に着いたら11番ホームへと移動。これから乗車する<サンダーバード>および、<ひだ><サンライズ出雲><サンライズ瀬戸>の4種の特急列車のみが使用するホームとなっており、忙しない大阪駅においてここだけは長距離ホームらしい落ち着いた空気に満ちています。


Hokuriku19_01_02

Hokuriku19_01_03

Hokuriku19_01_04


 今回の旅では珍しく飛行機や高速バスは利用せず、往復ともに鉄道利用。きっぷは往路・復路いずれもe5489(JR西日本の会員制予約サイト)限定販売の「WEB早特1」を購入しました。制約が小さくない(席数限定、前日までの購入に限る、指定列車の乗り遅れの場合は後続列車の自由席も利用不可)わりに割引率はそれほど高くはないのですが、とはいえみすみすフルプライスを払うのも何だかしゃくですしね。大阪→富山では正規運賃・料金の9,590円に対して7,950円と、1,640円(17%)の割引となっています。


Hokuriku19_01_05


 余裕をもって発車20分前にやって来ましたが、電車はまだ入線していませんでした。こちらは指定された12号車の乗車位置案内。無性に「急行」の文字が気になるところですが…。定期列車としては消滅した急行列車ですが、料金制度が維持される限りはこの表示もまた残り続けることになりそうです。


Hokuriku19_01_06


 この早朝でも寒くはないので外で待っていてもよかったのですが、12号車の乗車位置の真ん前に待合室があったので、ここでしばし待機。


Hokuriku19_01_07


特急サンダーバード1号 大阪(06:30) → 金沢(09:13)


 電車の入線は発車7分前と、意外に遅めでした。<サンダーバード>の基本編成は9両ですが、この日は明後日からの3連休に備えてなのか、3両増結の12両編成。ホームいっぱいに横たわっての停車です。


Hokuriku19_01_08


 本日の1号は9両(1~9号車)+3両(10~12号車)の組成で、双方とも683系。大阪方・金沢方どちらの先頭車も貫通型となっています。<サンダーバード>充当の編成については681系も含めて全車にリニューアル工事が施工され、カラーリングが一新された外観に関しては旧塗色からだいぶ印象が変化しています。


Hokuriku19_01_10

Hokuriku19_01_11


 2015年3月の北陸新幹線金沢開業を受け、現行のダイヤでは和倉温泉発着の1往復を除き、定期のサンダーバード全便が金沢始発・終着となっています。尤もこれも過渡的な措置となり、3年半後に控えている新幹線の敦賀延伸の折にはまたしても運転区間が短縮されることに。敦賀なんて今や新快速でも直通で行けてしまうのですが。


Hokuriku19_01_09


 それでは編成最後尾となる12号車車内へ。下の写真1枚目にはJR西日本の在来線特急車両の特徴ともいえる、ドア横に設置された縦書きの号車・席種表示が写っていますが、乗車の際に自然と目に入る位置にあって合理的。JR西以外の他社が追従しないのが不思議なくらいです。


Hokuriku19_01_12a

Hokuriku19_01_13a


 電球色の間接照明で温かみのある車内(下1・2枚目)。座席(3枚目)の座面は硬すぎず柔らかすぎず、幅は標準的な体型ならば十分な広さ。背ずりの厚みもペラペラ感は皆無で、普通車の座席としてはたいへん優れた座り心地です。枕カバーも薄っぺらい不織布ではなく、昔ながらのちゃんとした布なのも高ポイント。あとは窓框や壁面にも然るべき素材が使われていたりだとか。この部分、特急ですらFRP剥き出しという車種も少なくないですからね(寧ろ多数派?)。Wi-Fiサービスが未供用だったり、フック・ドリンクホルダーやコンセントが付いていない(※普通車のコンセントはリニューアル時に車端部の座席にのみ新設)のは最先端ではないものの、総じてJR東日本の車両のような安っぽさがほとんど見当たらず、485系の衣鉢を継ぐのに相応しい、特別急行らしい風格を備えたアコモデーションだという印象でした。


Hokuriku19_01_14

Hokuriku19_01_15

Hokuriku19_01_16


 復路に乗車した681系には荷物棚の下にも照明が設置されていましたが、こちらの683系では省略されている代わりに読書灯が取り付けられています。間接照明はムード作りに優れている一方で照度がやや抑え気味になるために補助照明の必要性は高いのですが、個々のニーズに応じてON/OFFが切り替えられるという点において、個人的には683系の方が好みです。


Hokuriku19_01_17


 普通車のシートピッチは970mmです。後刻乗車する北陸新幹線よりはやや狭いのですが、座席の下が空間となっていて足を伸ばせるので、居住性になんら不満はありません。


Hokuriku19_01_18


 さて、e5489ではシートマップからピンポイントで座席位置が選択できるので、往復ともに少しだけこだわって選んでみました。往路は12号車の運転席寄り。681系・683系の先頭車には運転席側にドアがない(一部例外もあり)ので袋小路となっており、乗客の通り抜けがないために落ち着いて過ごすことができるというわけです(編成中間に挟み込まれている場合は貫通路となるために不可)。こういう事情を分かっている人も多いらしく、この列車では最後部の14Dはすでに先客によって確保済み。ということで琵琶湖側の12Dを押さえておきました。……で、ここで一つ罠が。この車両は14列なので当然ながら2列分の窓が7枚並んでいるのだろうと考えて、何の疑いもなく偶数列を選んだのですが。


Hokuriku19_01_19a


 車両に詳しい方ならば常識なのでしょうが、実際には上の写真が示す通り、1列分×1枚+2列分×6枚+1列分×1枚という変則的な配置だったのでした。復路に乗車した車両では2列窓オンリーの配置で“成功”だったため、運が悪かったと諦めるしかないですね。それにしてもこの1列窓、横幅狭いなー。


Hokuriku19_01_19ba
▲先頭車両のどんづまり


 ひとしきり車内の観察を終えたところで、6時30分、大阪駅を定刻どおり出発です。この時点では12号車は12D・14Dの2席のみが埋まり、新大阪での乗車はゼロ。特急らしい疾走が始まったところで、持参した朝ご飯を背面テーブルに広げることにします。この時間ではまだ駅弁は売っていないだろうと考え、かといってコンビニのサンドイッチやおにぎりというのもちょっと味気ないので、前日に近所のスーパーで仕入れておいたちらし寿司(398円)を。お味の方は可もなく不可もなく…でしたが、ま、美味しいモノは現地でたっぷり味わうとしましょう。


Hokuriku19_01_20


 サンダーバード系統は速達タイプと主要駅停車タイプに大別でき、当方の1号は速達タイプに属するのですが。「らしくない」というか、2016年春の列車線(外側線)へのホーム設置に伴って一部のサンダーバード・はるかが停車するようになった高槻にも停まります。進行方向右側の席だったので下の写真では電車線(内側線)側のホームが写っていますが、列車線側のホームにはロープ昇降式のホーム柵が設置されており、新快速に充当される3ドア車だけでなくドア配置が不規則な特急車両の停車にも対応しています。


Hokuriku19_01_21


 朝食を食べ終わってトイレに立ったついでに、デッキ付近を撮影。トイレにウォシュレットが付いているなんて、随分と時代も変わりました。


Hokuriku19_01_22a

Hokuriku19_01_23a


 高槻に停まったので新快速と所要時間は変わらず、京都に到着。指定席車へのまとまった乗車はここが最後になると思われますが、時間帯が早すぎて山陽新幹線方面からの接続がないこともあってか、ここでの12号車への乗車もゼロでした。長らく北陸特急下りの始発は大阪7時10分発(不定期運転の<ビジネスサンダーバード>を除く)という時代が続き、現行の1号のスジは北陸新幹線開業の翌年に新設されたものなのですが、今日は増結があることを差し引いても早朝下りの需要はこんなもの、ということなのでしょうか。


Hokuriku19_01_24
▲京都停車中


 京都を出ると、金沢までの停車駅は敦賀・福井の2駅のみ。車内案内装置(下3枚目)も何も表示していない時間が長く、手持ち無沙汰な様子です。


Hokuriku19_01_25

Hokuriku19_01_26

Hokuriku19_01_28


 というわけで…… 窓割のよい11Dへと移動し、ついでに前の座席をひっくり返してボックス状に。リクライニングを深めに倒し靴を脱いで足を投げ出せば、簡易カウチソファの出来上がりです。特急車両でシートピッチが広めということもあり、私の短足ではふくらはぎより上が宙ぶらりんになってしまうのはご愛敬。観光需要も多い特急らしく、向かい合わせにしてもインアームテーブルが使えるのは流石に抜かりがありません。


Hokuriku19_01_27a


 山科からは湖西線へと進みます。実を言うと雷鳥~サンダーバード系統への乗車は今日が初めてなので、新快速・普通とは走行ルートが異なる山科駅~長等山トンネル(の途中)間も今回が初めての通過。近鉄の新ノ口連絡線以上にささやかな初乗りではありますが。

 高規格の湖西線なのでほぼ常時130km/h近いスピードでの高速走行が続くかと思っていたのですが、下り方向ながらもラッシュ時間帯のために先行する2本の普通列車につっかえてしまい、どうにも煮え切らない走りぶり。まずは堅田で1本追い抜いたのですが、その先の2本目が終点の近江今津まで待避なしで逃げ切るというダイヤとなっており、隣の線路の枕木を一本一本目で追えるくらいの低~中速走行がかなりの長時間に渡って続くことになったのでした。

 とはいえ、そのお蔭で湖岸を走る風景をじっくり眺められたわけですが。今日の北陸地方は全般的に晴れという予報ですが、こちらの今の時間は下の写真のように曇り。ほぼ無人の車内のなんちゃってカウチソファでくつろいでいると、同じ景色でも新快速の車内から眺めるそれとはまた印象が違って見えます。


Hokuriku19_01_29

Hokuriku19_01_30

Hokuriku19_01_31


 先行列車が近江今津駅の待避線に入り、既に湖西線は7割走破済みではありますがここから漸く特急らしいスピードに。やがて琵琶湖の北端に達すると、曇りの度合いも更に増してきました。


Hokuriku19_01_32

Hokuriku19_01_33


 米原・長浜方面からやって来た北陸本線と合流し、近江塩津駅を通過(下の写真)。近郊区間大回りの途上でお世話になったという方も多いのではないでしょうか。敦賀までの直流切り替え後は湖西線方面と北陸線米原方面との接続が改善され、私も今春湖西線経由(←同行者のリクエスト)で長浜へ日帰り旅行に行った際、この駅にてごく短い待ち合わせで新快速同士を乗り継ぐことができました。


Hokuriku19_01_34


 山間らしからぬ複々線がこれまた山間らしからぬ立体交差を経て複線に収斂していくと、すぐに列車は深坂トンネルへ突入。約5キロのトンネルで福井県側へ抜ければ、滋賀県側とは打って変わっての快晴となっています。この深坂峠、それほど険しい峠というイメージはないのですが、前後でここまで劇的に天気が変わるとは思ってもいなかったので大変驚かされました。


Hokuriku19_01_35

Hokuriku19_01_36


 京都から1時間ノンストップで走り続け、7時57分、福井県嶺南地方の中心都市である敦賀に到着。先述のように、3年半後には<サンダーバード><しらさぎ>と北陸新幹線の乗り換え駅としての機能を担うことになります。新大阪延伸まではかなり間が空くことになるため、言い方を変えれば大阪・京都・名古屋方面からは富山のみならず金沢・福井へも乗り換えを余儀なくされる、「冬の時代」の幕開けとも呼べますが。大阪・京都は期限つきなのでまだしも、名古屋に至っては現時点では半永久的ですからねぇ。地上からはかなりの高さとなる新幹線の敦賀駅も、着々と工事が進捗中。現在の在来線ホームからは線形の関係で少し離れた場所に設置されるため、接続する特急列車は新幹線駅の直下に新設されるホームへ発着する予定となっています。


Hokuriku19_01_37
▲敦賀停車中


 敦賀を出発すると485系時代(※当時の<しらさぎ>で一応経験済み)のように照明が消えたりすることなく交直境界のデッドセクションを通過し、矢継ぎ早に北陸トンネルへ。車内放送でもこのトンネルを通過する約7分の間、携帯電話の電波が入らない旨のお知らせがありました。といってもここだけでなく深坂トンネルや長めのトンネルが複数ある湖西線内でも、しばしば携帯が圏外になっていた(復路の列車にて確認)わけですが。


 今回は先月のようにクルマのドライバーではないので、車窓から見える建設中の新幹線の高架橋をばっちり撮影。最初は珍しがってパチパチ撮っていましたが、あまりに頻度が多いもので、飽きてくるまでにそう時間は掛からなかったのでした。3年半後の延伸区間には6駅が新設されますが、そのうち5駅が在来線との併設駅。サンダーバードの車窓に度々現れるのももっともなハナシです。


Hokuriku19_01_38


 嶺北の田園地帯を駆け抜け、2日後に福井鉄道の電車で訪れることになる武生・鯖江エリアへ。下の写真のHOLLYWOODを彷彿とさせる「👓SABAE」看板、先月は北陸自動車道を走る車から、今日はサンダーバードの車窓から、そして明後日には福井鉄道の電車内から……と、その宣伝効果の高さには感心するばかり。まぁ今更宣伝されるまでもなく、鯖江がメガネの町だなんて今治=タオル並みの常識ではあるのですが。ちなみに夜になると光るらしいです。


Hokuriku19_01_39


 8時29分、大阪からはギリギリ1時間台にて福井到着。ここで14Dのお客さんが下車していき、とうとう12号車は完全に私の貸し切りとなってしまいました。サンダーバードでは車内販売は実施されていないため、この車両への出入りは車掌以外いっさいありません。


Hokuriku19_01_40


 プチ峠越えを経て石川県へ入っても、田園基調の風景は変わらず。JR在来線特急最速のレコードホルダーの僚友を持つこの列車も、車窓においては湖西線の一部区間を除けばごく凡庸です。


Hokuriku19_01_41

Hokuriku19_01_42
▲(2枚)小松駅通過。こちらも新幹線と在来線の併設駅


 右手に北陸新幹線の白山総合車両所、続いて既設の高架橋がぴったりと併走するようになると、終点の金沢はもうすぐそこ。仮に自由席でも始発の大阪からならば余裕で席を確保できましたが、この貸し切り状態ならばあえて指定席を取った価値も大いにあるというものです。大阪ー金沢267.6kmを2時間43分、表定速度は98.5km/h。現行最速の37号は同区間で106.2km/hにまで達するので、やはり湖西線内の減速走行が響いているようです。ともあれ在来線特急の全盛期を追体験するかのような停車駅の僅少さは新幹線網が伸長した今となっては稀少な存在であり、滅多に味わえないガラ空き具合も相まって充実した乗車体験でありました。
(後編・北陸新幹線へ続く)


« ちょこっと、福井へ。2日目後半【ランチ、永平寺、そして帰路】 | トップページ | 19/10/31 (2)富山への道 後編【北陸新幹線・金沢→富山】 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« ちょこっと、福井へ。2日目後半【ランチ、永平寺、そして帰路】 | トップページ | 19/10/31 (2)富山への道 後編【北陸新幹線・金沢→富山】 »

スポンサーリンク

Blog内検索

無料ブログはココログ