19/10/31 (10)クリカラ峠を越えていく~在来線編~
富山~金沢間の公共交通での移動手段は主に3通り。最速はもちろん新幹線なのですが、往復タイプの割引切符(前日までの購入が必要)はあるものの片道ならば正価で購入するほかなく、乗車券+自由席特急券で2,860円と60km弱の区間としては非常に割高(比較にはなりませんが阪急電車で同じ距離を移動すれば470円)。しかも先発列車が全車指定席の<かがやき>ならば次の<はくたか>or<つるぎ>を待たなければならないというマゾ仕様なので、往復とも新幹線というのはつまらないこともあってこちらは却下です。2つ目の高速バスは運賃930円と最安で両都市の中心部まで直通してくれるという利点もありますが、人気があって利用が旺盛なわりには本数は1時間間隔が基本(一部の時間帯のみ30分間隔)と案外少なめ。夕食を終えた頃には次の発車までまだ40分以上あって待ち時間が惜しいので、今回は3つ目のあいの風とやま鉄道~IRいしかわ鉄道ルートを選択することにしました。
※往路・北陸新幹線編(金沢→富山)はこちらのリンクから。
在来線ホームの高架化完成に伴って今年3月に供用を開始したばかりという新改札口を抜けてホームへ。富山~金沢間は全国の主要交通系ICカードでの乗車が可能です。北海道・東北・関東・甲信越・九州といった地域に出掛けた時にはICOCAはアウェーなのですが、北陸エリアに於いてはバリバリのホーム。現状で山口県から富山県までがICOCAエリアとして繋がっているのですから大したものです。
在来線1・2・3番ホーム(下1枚目;2番線は切り欠きホーム)と、対岸の4・5番ホーム(2枚目)。後者は高架に切り替えられて間もないですが、前者は新幹線開業翌月の2015年4月に先行して供用が始まっています。在来線ホームはあいの風とやま鉄道の所管ですが、JR高山本線の列車も発着。もちろん特急<ひだ>も含まれます。北陸新幹線開通前だと首都圏ー高山間の鉄道ルートは名古屋経由一択でしたが、現在は富山経由も選択肢のひとつに。本数は名古屋乗り換えの方が倍以上ありますが、所要時間では東京以北/以東からだと富山乗り換えが有利となります。あとはJR東海に極力金を落としたくないという向きの方もw。
ちなみに新幹線のホームは在来線ホームよりも一段高い位置にあります。両者の位置関係は下の写真の通り。
あいの風とやま鉄道・IRいしかわ鉄道普通 富山(18:42) → 金沢(19:42)
乗車するのは、18時42分発の普通金沢行き。高速バスと違って着席保証はありませんが、ホームへ上がった時点で発車までまだ20分あって乗車待ちの列は長くなく、また当駅始発でもあるので、ひとまず座席には100%座れそうです。下の写真の発車標下段にライナーがなんちゃらという文言が流れていますが、こちらは19時29分発の<あいの風ライナー4号>金沢行きの案内。別途300円のライナー券が必要な全席指定制の列車で、途中停車駅は小杉・高岡・石動のみと特急並みです。車両と座席配置については普通列車と同じなので、京急のウィング号や京阪のライナー(一般席区画)に類似していますが、乗務員の端末がモバイル回線に接続されていて車内発券でも座席指定が受けられるのは先進的。もしこちらが先発ならば迷わず乗ってみたのですが、今回は先行する普通列車が先に金沢へ到着するために待つのは無意味なので乗車は諦めることになりました。
乗車待ちの列が長くなかったのは、高岡まではこちら↓の18時24分発の列車が露払いを引き受けてくれるからという理由もあります。富山都市圏の近郊輸送と県内二大都市間のインターアーバン輸送を兼ねながらも2両編成と短いため、発車直前にはドア際まで立客でぎっしり。食パン(419系)のままで良かったとは申しませんが、当路線に限らず全国津々浦々で新車の投入と引き換えに総じて編成の短縮が実施されがち、というのは憂慮すべき風潮ではあります。
回送されてきた電車が入線。4人掛けボックス区画ではありますが進行方向向きの窓側席に陣取ることができました。ほぼ全席が地元でいつも乗っている22X系と同じ転換クロスシートというわけで、居住性は折り紙つき。4両編成なので先行列車のようなすし詰めにはならず、ラッシュ時なりにゆったりとした乗車率で出発です。
車両および駅の案内表示のデザインが変わったほかは大幹線たる北陸本線時代そのままのため、駅間距離が長めということもあり普通というよりは快速感覚で軽やかに疾走。一駅当たりの駅勢圏も広く、1駅目の呉羽からいきなり高校生を中心に大挙して下車していきます。もう窓の外は闇で景色は望めませんが、普段乗らない路線ならば車内の動きを観察しているだけでも面白いものです。スマホいじりなんて勿体ない!
富山から4駅、18分で高岡。やはりここでの下車が圧倒的に多かったです。高岡といえば在来線は高岡・新幹線は新高岡と市の玄関口が2か所に分かれているわけですが、双方の駅への二重投資と合併特例債を充当してのハコモノ建設ラッシュが招いたとされる財政難によって、公共施設の閉鎖やコミュニティバスの廃止など住民サービスにも大きな影響を与えている……という、何とも救いのない内容の地元局制作のドキュメンタリー番組(『みのたけ~富山県高岡市財政再建への道のり~』。NHKなんかよりもはるかに骨太の力作でした)が印象に残っておりまして。シャッター通りに関しては富山・金沢という大きな都市が近接していて商圏が侵食されているからという同情的な見方もできますが、富山の街が新幹線効果を取り込んで上げ潮に乗っているように見えただけに、二大都市間の明暗差がより痛ましく感じられたのでした。番組内ではメンバーの固定化による行政のチェック機構としての議会の形骸化も指摘されていましたが、国政から町内会に至るまで大抵そんなものですしね。それはともあれ私のような第三者の乗り鉄は、また万葉線(路面電車)・氷見線・城端線に乗りに来なければ……と、只々呑気な考えしかないもので。
帰宅列車らしい賑わいは砺波平野西端の石動(いするぎ)まで続き、ここを出ると空席もそこそこ現れます。この石動駅、金沢ー富山間がフル規格に変更されるまではスーパー特急区間と在来線区間の接続地点になる予定だった名残で新幹線がすぐそばを通過しているのですが、結局新幹線の駅は設置されませんでした。
富山・石川県境を越えてすぐの俱利伽羅(くりから)からは、石川県側の三セク路線であるIRいしかわ鉄道に入ります。車内に残っている乗客はもう全員金沢までの乗り通し組かなと思っていたら、その次の津幡でそれなりの下車。この駅が目的地なのか、それとも七尾線へと乗り継ぐのか。
更に3駅進み、19時42分、富山からはぴったり1時間で金沢に到着です。特急の待避がないので各駅停車ながらも表定速度は59.4km/hと高水準で、小田急の快速急行の新宿ー東海大学前間よりも早かったり。後続のあいの風ライナーならば46分ですが、普通でも高速バスと同等のスピードなのは立派です。折り返しの列車は、新潟県側の三セク路線であるえちごトキめき鉄道との実質的な境界駅である泊(とまり)行き。富山県を西から東へ縦断する行程となります。
改札を出場。運賃はJR本州三社の幹線ならば990円相当ですが、三セク化後の現在は2社の合算になることもあって1,240円となっています。高速バスは有効期限なしの回数券が一枚当たり770円と高い割引率のため、頻繁に往来するのならばやはりバスに足が向いてしまうのは致し方なしでしょうか。せっかく新幹線というインフラが整備されておきながら最大限に活用されていないのは歯痒いもので、最高速度は200km/h程度で2~3両編成、2ドアデッキなし・横6列セミクロスシートくらいの軽快版車両でコストを抑えつつ利用しやすい運賃を実現する…という手法も思い浮かんだりするのですが、そのような柔軟な発想ができる人材が日本には不在というのがまた歯痒いものです。
10時間前は特急→新幹線乗り継ぎで降り立っただけなので、コンコースに出るのはいまが初めてなのですが…… え、ここ金沢でしょ、こんなに人通り多いの? 高架下には富山駅よりはるかに大規模そうなショッピングモールが広がっていますし、部分的に、本当に部分的にですが、まるで梅田に戻ってきたかのような錯覚すら覚えました。この「金沢百番街」あんと西の2階(高架下なのにどうして2階が?と思いましたが、実際には別棟)にスーパーマーケットがあるので用事のためにちょっと立ち寄った後、ホテルへ向かうために反対側の東口へ。こちら側にも駅前広場に面して金沢フォーラスという再開発ビルが建っています。今夜はハロウィンナイトですし渋谷みたくパリピが湧いて出ているのでは…?なんて考えてもいたのですが、帰宅客がバス待ちの列を作るばかりで静かなものでした。当たり前か。
宿泊先の『ユニゾインエクスプレス金沢駅前』(翌朝撮影)。駅から新幹線の高架と金沢フォーラスに挟まれた路地を北上して5分と近いですが、ホテル直前で交差する通りの横断歩道を渡るためにコの字型に大回りしなければならないのが少し煩わしいでしょうか。入口に竹垣があるだけで古都金沢らしいと感心してしまうのですから、観光客なんてチョロいものです。
ここの特徴はサービスが簡素化されている代わりに低価格なことで、今回の宿泊料金はシングル禁煙素泊まりで3,131円(税サ込;金沢市宿泊税として別途200円が必要)とカプセルホテルクラス。日によっては普通に3千円を切るようです。特に宿泊費を切り詰めるつもりはなく他に良さげなホテルがあればそちらを選んでいたのですが、リストを見てもピンと来るものがなかったので今夜は価格重視で。なおメリハリも大事なので、明日はちょいランク高めのホテルを取っております。
部屋の内部。簡素化されてとはいってもインテリアが殺風景・クローゼットがなくハンガーのみ・タオルがバスタオルしか用意されていないくらいなもので、部屋着・スリッパや歯ブラシ等のアメニティ類はありますし、冷蔵庫も備え付けてあります。Wi-Fiの使用もOK。今年4月にオープンしたばかりとあって最も重要視する清潔感は満点で、ヨーロッパの安宿(デフレ大国から来るとそれでも高め)のみすぼらしさと較べたならば天国のようなものです。最近はビジネスホテルでもセミダブルタイプが標準なので、このような純正シングルベッドを目にするのは久々ではありますが。枕元の周囲にコンセントや充電用USB端子が無いのはモバイルバッテリーでカバー。個人的にはテレビも要らないのですが、流石にそれはやり過ぎか。
先ほどスーパーに立ち寄ったのは風呂上がりに飲むモクテルを探すためだったのですが、見つからなかったのでこちらのすいかサイダーを代わりに購入。予想通りというか、期待を裏切らないお味でした。
価格と照らし合わせれば十二分に満足のいくサービス内容ではあったものの、エアコンの不具合なのかどれだけリモコンをいじっても温風が出てこなかったのが唯一気になった点。冬ならば速攻フロントに電話して対処を求めるところでしたが、この日は空調なしでも一応大丈夫な室温だったのでそのまま寝てしまうことにします。きょうは電車の車内にいる時間も長かったのであまりハードに歩き回った印象はなかったのですが、スマホの歩数計によると2万歩近くに達していたのは意外でした。
今日の歩数カウント:19,309歩
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