19/10/31 (6)富山地方鉄道軌道線Part1/不二越線【富山駅→南富山→電鉄富山】
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2週間空いてしまいましたが、北陸編の再開です。
富山駅からは地鉄軌道線、いわゆる路面電車に乗車します。まずは路線網東側の富山駅ー南富山駅前間を片づけることにしますが、ちょっとアレンジを加えて単純往復ではなく、復路は地鉄鉄道線(普通の電車)で戻ってくることにしました。昼間でも5分毎に運転される富山駅ー南富山駅前間に対して鉄道線の電鉄富山ー南富山間については閑散時間帯は毎時1本ペースでしかないのですが、先ほどの四十萬亭を出る直前に鉄道線→軌道線と軌道線→鉄道線の2パターンで乗換案内を検索してみたところ、後者のパターンがトントン拍子で乗り継ぎ可能だったので、アドリブで変更した次第です。
トントン拍子だけに時間の余裕はまったく無いので、富山ライトレールを下車したら高速ウォークで富山駅の高架下へと移動。地鉄軌道線に関してはライトレールよりも一足早く、北陸新幹線開業と同日の2015年3月14日に高架下への乗り入れを果たしています。下の写真はライトレールの往路乗車前に撮影しておいた軌道線乗り場。現状では3面2線の配線となっており、2本の電車が同時に停車できるようになっているのですが……
歩行者通路をはさんで反対の北側には、同様に3面2線のホームが建設中。先に述べたように富山ライトレールの電車は全便が現行の軌道線へ直通する予定になっており、完成後には合計4本が停まれるようになるとはいえ縦列停車なので、運用面での自由度が高くなさそうなのがちょっと気になる所。来年3月以降は乗り換えの解消に加えて直通列車ならば運賃の二重取りもなくなる(定期券だと直通か否かに関係なく)ため、市の南北を一体化した鉄軌道ネットワークを築くという当初の構想が開通から14年を経てようやく実現する運びとなります。
発車を待っていた南富山駅前行きは、「サントラム(SANTRAM)」の愛称がある超低床式LRVのT100形電車。後ほど写真を貼りますが富山ライトレールのTLR0600形とは仕様が異なり、3連節車体で車長もTLR0600形より約2メートル短くなっています。ちなみにこれは予定よりも一本早い5分前の便。運転席直後の前向き一人掛けクロスシートへ腰掛けると同時に発車時刻を迎えました。なお、この車内で本日4枚目の利用状況調査票を受け取りましたが、乗車目的の欄をどう記入しようかと。岩瀬往復は紛れもない観光目的でしたが、こちらは…… 「乗り潰し」なんて項目はないし(笑)。「その他」を選択する手もありましたが、富山市としても路面電車自体を観光資源の一つとして位置づけていると考えられるため、これ以降も観光目的で通すことにしました。
駅前広場を横断したのち、左折して駅前通りへ。バスターミナル出入口の交差点を過ぎると、すぐに「電鉄富山駅・エスタ前」停留所に停車します。高架下乗り入れ前は「富山駅前」と名乗っており、ここが軌道線のターミナルとなっていました。
そのまま通りを直進し、2つ目の信号で右折(下の写真)して針路は南向きに。すれ違う電車は従来型の車両です。セミクロスシートで窓も大きいLRVに当たったのはラッキーでしたね。さすがに県都かつ北陸地方最大級の都市らしく、沿道にはずっと中~高層のビルが続きます。今回の旅では先に“裏側”の北から見てきたために、到着4時間後にして初めて目にするこの街の本気。繁華街はもう少し先のエリアなので、駅の近くはホテルやオフィスビルが多い模様です。
富山市最大の繁華街は、総曲輪(そうがわ)という地区のうち主に3丁目の域内が該当するとのこと。路面電車ならば、富山駅から5~7駅目の「荒町」、「中町(西町北)」(※北行き電車のみ)、「西町」が最寄り停留所となります。4駅目の桜橋付近で一時ビルが途切れて開けた景色になるので、富山駅周辺エリアとは別個の町のような印象です。今日は路面電車乗り潰しの後に訪れたいスポットがあるのでここでの下車は出来ず、車窓からアーケード商店街を一瞥するのみで。近年は金沢にストローされて中心市街地としての地位低下が著しいと聞きますが、その一方で捲土重来を期しての再開発も進んでおり、本邦におけるロールモデルを嘱望されるコンパクトシティの完成へ向けてはここが天王山といったところでしょうか。
(下の写真は西町停留所停車中)
西町交差点では、西側から後刻乗車する環状線(3系統)の単線線路が富山駅方面へ向けて合流。軌道線の3系統すべてが通過する区間はここまでの富山駅~中町(西町北)6駅間となります。
西町を過ぎると、程なくビル群は消えて郊外然とした風景に。人口規模に比して中心部の集積度が高くメリハリの利いた市街地の形成状況は、松山市を思い起こさせます。
ひたすら南下してきた線路が不二越線の踏切の直前で右へキュッとカーブし、富山駅からは14駅、実乗時間20分で終点の南富山駅前に到着。乗ってきた電車は2系統の富山駅経由大学前行きとして折り返していきます。富山駅ー南富山駅前間の区間運転列車に1系統が付与されており、昼間は両系統が各々10分間隔、合わせて5分間隔ということに。
予定より早く来たので駅を見回す時間もありましたが、駅前・駅舎・構内そのいずれもがモノクロで撮影したくなるような、はち切れんばかりの昭和感。新幹線とLRTが走るような街にもまだまだこのような場所が残っていることには感動すら覚えます。
自動券売機は食券タイプ。LCDタイプの発車標もそうですが、旅客向けの設備に専用設計ではない汎用品を採用する例も増えてきました。こちらの券売機についても磁気券が不要ならばこういうことになるのはコスト面から道理なのですが、北九州モノレール・沖縄都市モノレール・スカイレールみどり坂線のように磁気券を廃止してICカードと二次元コードに置き換える事例も出てきましたし、そう遠くない将来に「裏の黒い/茶色いきっぷ」も姿を消してしまうことになるのかもしれません。
有人改札かつ列車の発着本数が少なめということで列車別改札が実施されており、もう発車時刻も近いのでそのままホームへと進みます。『富山まちなか岩瀬1日ふりーきっぷ』のフリー区間には地鉄鉄道線の電鉄富山ー南富山間も含まれているため(だから乗りに来たわけですが)、上の券売機はスルー。本数が少ないうえに運賃も路面電車より高い(電鉄富山ー南富山間は現金320円、passca/ecomyca290円;軌道線は全線均一で現金210円、passca/ecomyca180円)とあってはこちらを利用する乗客など居るはずもなく、ここから乗車するのは私一人だけのようです。
軌道線の発着ホームの先にはまだ線路が続いており、この向こうに軌道線車両の車庫が設けられています。軌道線ホームと鉄道線ホームへ通じる構内踏切は地続きになっているのですが、間は遮断機で遮られていて一旦駅舎内の改札を通過しなければならない構造です。
やがて踏切の鐘が鳴りだしました。乗車予定だった軌道線の電車は遅れ気味だったようで、この頃になってようやくホームに入線。ツイてたなー。ま、この後その埋め合わせとしてプチ不幸にも見舞われることにはなるのですけれど。気になる車両ですが、元東急のロングシート車以外ならばどれでもいいや、と思っていたところ――
おおっ、これ、大当たりじゃね? 大手私鉄からの譲渡車ではない、地鉄オリジナルの14760形でした。先輩の10020形・14720形という2形式が今年立て続けに引退するのですが(前者は訪問1ヶ月前に運用を終了)、こちらは現時点でその予定はなし。ワンマン対応や座席の一部撤去といった改造を受けながらも転換クロスシート主体という座席配置は登場当時と変わらず、立山・宇奈月温泉への観光客輸送の任を担ったかつての地鉄のフラッグシップトレインとしての上質な設備は、登場から40年が経過する今となっても依然として地方都市の車両としては最高峰のサービスレベルを維持していると言っても良いのではないでしょうか。
この列車は岩峅寺(いわくらじ)始発。南富山を境にして北が不二越線、南が上滝線という別の路線名が与えられていますが、全列車が両線の通し運転なので通常はまとめて不二越・上滝線と呼ばれているそうです。神戸市営地下鉄西神・山手線みたいなものか。先程の軌道線よりはかなり東へふくらむルートを取っており(最も広い所で約1.5km離れる)、駅勢圏に関しては全くの別と捉えてよい模様。いっそのことこちらも富山港線と同様にLRT化してしまえばいいのにと思いましたが、それは富山市側でも既に検討されているとの話です。
本線と接続する稲荷町と終点の電鉄富山の1駅間のみは複線となり、新幹線の高架橋を見上げつつこちらも高架化が予定されている電鉄富山駅に到着。各駅停車(途中4駅)で南富山からの所要時間は12分と、ここは流石にヘビーレールの威力を見せつけてはいるのですが。
駅を離れる前にミニ撮影会。電鉄富山からは3方面へ向けて電車が出ており、乗ってきた電車は折り返し本線を進んで途中の上市までの運転となります。隣に停まっているのはパンプキンカラーに彩られた(ハロウィンだけに!…やかましいわ)、元京阪旧3000系。地鉄では10030形を名乗っています。こちらは岩峅寺行きですが方向幕にカッコ書きで(寺田経由)とあり、不二越・上滝線経由ではなく本線→立山線と進む系統。ほかに写真には撮っていませんが電鉄富山到着と入れ替わりに発車した元東急8590系の岩峅寺行き(南富山経由)、稲荷町駅構内に留置中の「アルプスエキスプレス」に改造された元西武5000系レッドアローを目にしており、京阪から来たダブルデッカー車以外にはひとまず一通り遭遇したことに。
この後すぐにパンプキンが出て行って左側が空いたので、こちらからもパチリ。二本の岩峅寺行き、2分差で出発して岩峅寺到着も3分差と、不二越・上滝線経由の方が2.7km短いものの所要時間はほぼ変わらないようです。区間列車も含めればこの時間でも発着は多いですし、地方私鉄らしい車両の百花繚乱ぶりも相まって、チョイ乗りだけでも濃密な時間を過ごすことができました。
その他、駅構内点景。高架化後は現在の3面4線から2面2線に縮小されるようです。今回の訪問では同時に3列車が停車するシーンもあったのですが、どういう遣り繰りを考えているのやら。近郊電車のターミナルであると同時に山岳リゾートの玄関口という側面も大きいのですが、立山方面はともかく宇奈月温泉方面だと新幹線開通後は首都圏からだけでなく関西方面からも黒部宇奈月温泉駅乗り換え(地鉄側は新黒部駅)が主流となったため、駅の様子も心なしかどこか寂しげです。
駅施設を内包した駅ビル、『エスタ』。きょうは天気が良いので駅前広場へ出ましたが、JR・あいの風とやま鉄道etc.の駅舎とは屋根付きの通路でも繋がっているとのこと。
南口側から見る富山駅駅舎。続いて軌道線の支線&新設路線区間の乗り潰しに入ります。
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