ICカード限定大回り乗車【丹波ループ編】
連載を終えて今後しばらく単発記事が続きますが、鉄道ネタがご無沙汰だったのでまずはそちらから。テーマはJRの大回り乗車……なんですが、従来の大都市近郊区間準拠のものではなく、同区間から外れる場合もICOCAエリア内ならば実際の乗車経路に関わらず最短経路の運賃を減額する、という約款が根拠(JRおでかけネット内のPDFファイルにリンク。第19条2が該当)。東京近郊区間はSuicaエリアに合わせて拡大したため、振替乗車などのケースを除けば基本的に紙のきっぷとICカードは同等の取り扱いですが、今回取り上げるICOCAエリアの他にも以前に実行した名古屋市交と名鉄を組み合わせる例や、SUGOCAエリアの博多-熊本-大分-小倉-吉塚と回って170円という例のように、ICカード限定で大回り乗車が可能なエリアが複数存在します。5月に入って屋外を出歩くには暑く感じる日が増えてきているのと、COVID-19が遺憾ながらショボくなってきているということもあり、久しぶりに列車に乗りっぱなしのGenuine乗り鉄もよかろうと制度を悪用…いや実践してまいりました。
というわけで5月某日。きょう乗車するのは川西池田-大阪-京都-福知山-中山寺の242.0kmですが、ネタとして美味しく頂くのは初乗り以来四半世紀以上乗っていなかった京都―福知山間(全体の37%)及びプラスアルファです。初乗り区間はまったく無いため、乗車経験のない287系特急電車に乗ってみるというイベントを付け足しておきました。
閑散時間帯のあいだに行って帰ってこれるようスケジュールを組んできたため、京都駅に到着したのは午前11時前。嵯峨野・山陰線ホームへ向かう途中の其処此処に、亀岡駅前に構える『サンガスタジアム by KYOCERA』をホームスタジアムとする京都サンガF.C.の広告がみられます。2年前の2020シーズンから供用を開始しており、近年まで単線区間が残っていた嵯峨野線のこと、開業にあたって「そんな輸送力で大丈夫か?」という懸念が拭いきれなかったのですが、蓋を開けてみれば特に積み残しが発生しているという話も聞かないため、混雑→ウイルス感染拡大という別枠の懸念を除けば「大丈夫だ、問題ない」なのでしょう。ただ、今シーズン京都サンガは12年ぶりにJ1チームとして参戦しており、入場者数制限の解除も受けて観客動員数が昨シーズンまでの比ではないはずなので、ひょっとすると地獄が発現するのはこれから……なのか?

▲京都駅嵯峨野・山陰線ホームは頭端式
乗車する電車は31番ホームで折り返し整備中だったため、隣の30番ホームに停車中のハローキティラッピングはるかをパチパチ。こちらも関西空港へ向けての折り返し整備中かと思いきや、朝の部の関空方面行きは9時30分発の<はるか15号>で終わってしまっており、このまま車両基地へ引き上げる模様でした。南海のラピートは5月2日以降、平日ダイヤ・土日祝日ダイヤともに全列車の運転を再開していますが、此方はるかの方は慎重です。来年になればうめきた地下の大阪駅新ホームへやって来るのでその頃にはちょっとは風向きが変わりそうですが、個人的にはコスト面でも心情面でもJRより南海を推したいところ。
【2023/04追記】
うめきた新駅開業後の乗車記録(但し大阪駅まで)はこちらのリンクから。




そして、こちらが11時25分発の<きのさき5号>として運転される287系電車。京都駅発着の山陰線特急は<きのさき><まいづる><はしだて>といった具合に愛称が記号的なのですが、<きのさき>に関しては城崎温泉発着の列車よりも手前の福知山および豊岡を始発・終着とする列車の方が多いというフェイクをかましてくるのが特徴。北近畿方面のJR特急は5系統が混在するために情緒的な愛称よりも分かり易さが最重要とあって、意味としては山陰線内だけで運転区間が完結する系統とだけ受け取っておけば間違いないです。


今春のダイヤ改正で<くろしお><こうのとり><きのさき・まいづる・はしだて>が全車指定席化されており、従来の自由席の代替としてはe5489のチケットレスサービスを介した割引販売へと移行。区間によっては自由席特急料金よりも割安になるくらいなのですが、更に5月末までの平日限定で今春新たにチケットレスサービスが拡充された区間(*注)において一律500円で販売するというキャンペーンが実施されていたため、今回はこちらを利用します。大回り乗車であろうと普通乗車券相当である以上は特急券との併用も当然可能ですのでね。
*注:最長で京都―紀伊田辺(1,310円相当)

乗車したのは最後尾の4号車。改正前は自由席だった為かどうかは関係なさそうですが、シートマップで見たら一番空いている号車だったので。蛇足ながらその前年のダイヤ改正までは隣の3号車も自由席でした。上述の「J-WESTチケットレス」は乗車前日以降の発売となりますが、そのぶん最新の空席状況が反映されてから選択できるのは○。4号車は16列配置なので窓が広い偶数席(6A)を選んだつもりが、またしても窓の変則配置の罠に嵌まるというサンダーバードと同じミスを犯してしまったのですが、乗り慣れていないのでこれはもう仕方がないです。287系よお前もか……


テーブル裏には全車指定席化のお知らせとチケットレスサービスの案内が。シートの座り心地についてはサンダーバードの681・683系と比べると硬めかなという印象ですが、京都→福知山の1時間15分ならばこれといった不満もなく快適。尤も、同型の車両が用いられる<くろしお>系統で4時間以上乗り通すとなればどうなるでしょうかね。電球色の間接照明は踏襲しているものの荷物棚下の補助照明(681系)や読書灯(683系)は省略されており、車両自体の乗り心地は遜色ないながらも予断どおりのLite版というファーストインプレッションでした。

なお、6月以降も京都―福知山間のJ-WESTチケットレス料金は750円、10-16時台に京都駅を発着する列車(※きのさき5号も該当)ならば100円引きの650円で利用可能です。乗車直前にならないと予約ができないという制限があるとはいえ、まさかJRでありながら近鉄特急よりも安くなるとは。他には<くろしお>系統も非常に割安ですが設定区間は紀伊田辺までなので、特急で一駅先の白浜へはみ出るとガクンと高くなります。
今日のもう一つの目的が、列車の中で駅弁を喰らうということ。あくまでコスパに絞れば一旦改札外に出てデパ地下辺りで仕入れるのが最善ですし率直に言えば私もそちらをお薦めしますが、今回は出場不可ですので。幸い、京都駅とあって目移りするほどにラインナップは豊富でした。内容基準ではなかなか決まらないので、これまた「おうちで駅弁」キャンペーンで200円引きになっていた利久プロデュースの牛たん丼弁当を(割引価格で税込880円)。


乗車開始が発車時刻の6~7分前と慌ただしかったため、車内の写真を撮り終わって弁当をいそいそと準備している最中に列車はもう動き出しました。2010年に嵯峨野線の愛称区間である京都―園部間の複線化が完了していますが、「完全」複線化ではなく京都駅西方の500mほどが用地の関係で単線のまま残存。名鉄岐阜駅手前の単線区間とは異なりまとまった長さで残っており、発着ホームによらず同時出発・到着が一切不可というダイヤ構成に於いて影響の大きいボトルネックとなっています。やっぱり……「そんな輸送力で大丈夫か?」
開館からまもなく一度訪れてそれきりの京都鉄道博物館最寄り駅として2019年3月に開業した梅小路京都西駅を通過し、高架線から京都市街を見下ろしながら北上。平安京時代には朱雀大路が通っていた南北軸にあたりますが、現代の中心軸は烏丸通なので上述の駅名のように京都「西」と不名誉な立場に甘んじています。
嵯峨野線のサブターミナル、二条に停車。私の方は駅弁に舌鼓を打っている最中ですが、初めは遠出をするわけでもないのにアホやな~と思っていたものが、こうして実際にやってみると想像を遥かに超える充実感でビックリ(笑)。お味の方は定価だと量的にちょっと物足りないところですが、流石に駅弁なので食材の質自体は一定の水準を担保しており、冷えていてもお肉が柔らかくて美味しかったです。伊達に利久ブランドを貸してはいませんね(伊達だけに)、いやーめっちゃ楽しいわーマジで! ちなみに自席の周りの人達もまた京都出発前後に揃いも揃って駅弁の包み紙を開けており、4号車前方は観光列車よろしく何か食べないといけないような空気に包まれておりました。
そうしている間に嵯峨嵐山駅を通過。嵯峨野観光鉄道のホームから線路が合流し、すぐに踏切で竹林の小径と交わるという、見どころ的に忙しい区間です。この踏切は数年前に元アイドル2名が炎上事件を起こした場所。現地に立ってみれば重軌条が2セット走り、見るからに高速で列車がすっ飛んできそうな危険を感じてサッサと渡り終えたくなるはずなのですが、彼女らが世間知らずなのは自明にしても恐らく動物としての本能すら欠損しているのかもしれません(食欲や生殖欲は別っぽいですが)。トロッコ嵐山駅手前で線路が分岐するまで、嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車は上下とも嵯峨野線の下り線を走行しており、またトロッコ列車が当該区間に在線している間は上り線の列車通過も安全上許されていないはずなので、複線化で本数が増えた今となっては随分アクロバティックな運用を行っているものだと大いに感心させられます。
弁当を食べ終えると、列車は保津峡を抜けるトンネル連続区間を通過中。このご時世ながら保津川下りの観光船も一艘のみですが走っていました。盆地に出ると程なく亀岡に停車。2019年までは阪急西京極駅そばの競技場が京都サンガのホームスタジアムだったため、京都都心部からの距離自体が遠くなったのに加えて阪急沿線からのアクセス事情は輪をかけて悪化(※嵯峨野線と阪急線が直接連絡する駅はありません)。ホームゲーム開催日にはJR桂川駅と阪急桂駅東口から京阪京都交通による臨時直行バスが運行されるとのことで、私も訪れるとしたらこのルートかなと考えていますが、座席定員制なのは安心とはいえ予約制ではないですし、特に復路はすんなり乗車できるものなのか不安です。嵯峨嵐山駅―阪急嵐山駅間の徒歩連絡(渡月橋経由で約20分)というのが案外最も現実的な選択肢かも。
今回乗車した京都―福知山には取り立てて景勝区間と呼べるところは無いのですが、この季節は山里の新緑が目に優しいですし所々川沿いに走る場所もあるので、小さな旅気分を味わうには充分ではないかなと。ポイントとしては左(A席)よりも右(D席)の方が谷間を進む区間で視界が開けて良さそうな感じがしました。頑張って走ってはいるものの単線区間のカーブの多さ・急さは最新鋭の電車をもってしても如何ともし難く、途中無停車の園部―綾部間で72.0km/hに達する表定速度ほどにはスピード感は感じられません。ガタンガタンと車体を揺らしながら速度制限の厳しい駅構内を通過していく様子は、きっと非電化時代と変わらないはず。言うなれば令和のアコモデーションと乗り心地で昭和の汽車旅を楽しむ、といった感じでしょうか。並行する京都縦貫自動車道との競合を踏まえれば、褒め言葉でありまた貶し言葉でもありますが。


長らく続いた谷間を抜け出すと綾部に到着。<まいづる>との併結(二層建て)列車の場合はこの駅で増解結作業を実施しますが、当列車はそのまま発車。「綾部に到着しております」のアナウンスに反応し、発車直前にこの号車から一人下車していきました。35分間無停車だと寝過ごし防止のために多重アナウンスは効果的のようですね、車掌さんグッジョブです。
綾部―福知山では短いながらも複線に復帰し、平地で線形の良い区間をモーターを唸らせながら疾走します(287系は全M車)。高架へ上がって12時40分、福知山に到着。京都府内の地域間連絡に加えて東京・名古屋方面から北近畿エリアへの最短ルートの一端を担い、時間帯としても良い便ではあるものの、ここまでの4号車の乗車率は2割程度という低さでした。列車によっては新大阪・大阪を発着する<こうのとり>系統と同一ホームで接続を行いますが、<きのさき5号>の場合は<こうのとり7号>(福知山終着12時43分)が不定期運転につき本日の接続はなく、5分停車ののちに城崎温泉へ向けて再出発していきます。それにしても大回り乗車で福知山へ降り立てる時代が到来するとは思わなんだ……



隣のホームには12時46分発の<こうのとり14号>が入線(289系;下の写真右の車両)。こちらも5月末までの限定で且つ柏原か谷川で特急券を分割する必要はあるものの、篠山口以遠新大阪まで1,000円で特急券が購入可能だったのですが、そもそも急ぎではないですし福知山線の鈍行事情は良好でせかせかする必要は全くないため、21分後の13時07分に出る普通列車をのんびり待ちます。

大回り乗車なので改札の外へは一歩も出られないため、ガラス張りの明るいコンコースがガラス張りの監獄に見えます。

▲手を伸ばせば娑婆が
朝と夕方・夜には大阪直通の丹波路快速がありますが、データイムは途中の篠山口で乗り換え。セミクロス配置の223系5500番台は転換クロスシート主体で、ローカル区間の車両としては全国でもトップレベルに位置しますが、特急車両から乗り換えると背もたれの高さやフィット感など、やはりそれなりの格差は感じます。とはいえこれも贅沢な注文ですね。




こちらも新緑と水田で目をいたわる時間。<こうのとり>系統のJ-WESTチケットレス設定区間は柏原以南なので、京都方面と比べると特急利用のハードルが一段上がるせいか、多くはない乗客のうち福知山―篠山口の全区間を通して乗車する割合が目立って高かったのが当列車での観察の結果です。

交換待ちの停車中にしばし車外へ出たりしながら、


篠山口に到着。ここで大阪行きの区間快速へ乗り換えです(※これ以降写真はありません)。今春のダイヤ改正ではアーバンネットワーク周縁部において閑散時間帯の減便が実施され、篠山口―新三田間も30分間隔から60分間隔への半減を食らった区間のひとつ。区間快速なので川西池田まで延々各駅停車のうえ、新三田では不定期運転の<こうのとり16号>のカラ待避で6分足止めされたりと、先程の嵯峨野・山陰線や南紀方面もそうですがまるで一昔前のJR九州を髣髴とさせる、あの手この手の特急誘導策のようにも感じられました……まあこれは下衆の勘繰りですが。
入場駅である川西池田の一駅手前、中山寺で改札を出場します。時刻は15時14分、5時間強のイケナイお遊戯。再度改札内に入って一周してもよかったのですが、自宅へはこの駅からでもわりと余裕で徒歩で帰れる距離なので、ちょっと暑いですが運動のつもりで歩くことにしました。結果としては、運賃190円+特急料金500円の合計690円が総支払額。
さて、京阪神地区のICOCAエリアで新たに大回りが可能になったエリアはこの“丹波ループ”の他にもう一ヶ所あるのですが── さて、いかがいたしましょ。
(見え透いてるね~)
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