22/10/04 (3)あいち2022 Part2【一宮会場】
一宮へ。名鉄電車・名鉄バスのフリーきっぷは今日は使わない(使えない)ので、普通運賃(ICカード)を支払っての移動です。地下鉄東山線で名駅へ戻ったあとは、JRの在来線ホームへ。名古屋―一宮―岐阜間はJRと名鉄が直接競合している区間ではあるものの、運賃・所要時間共にJRが絶対的に優位。名古屋―一宮間ならばJRの普通運賃が300円なのに対して名鉄は380円となります。有効本数に関しても名鉄特急よりもJRの普通電車の方が速いためにJRが倍(データイムの場合)。JR東海なんぞ積極的に利用したくはないのですが、かといって過去の乗車経験を踏まえれば名鉄に好感を持っているわけではない、それどころか全国の鉄道事業者の中では底辺に近い印象(今日もまた客にタメ口を利く駅員に遭遇したよ……)なので、ここはあくまで機械的な判断でのチョイスです。
13時45分発の新快速大垣行きに乗車。尾張一宮までは僅か10分と、明後日に訪れる名古屋市内の有松よりも寧ろ近い位です。因みに……鉄道クラスタにはドン引きされそうですが、313系に乗車するのは今回が初めて。たった10分では良し悪しなんて分からないものの、JR西の22Xシリーズと比較したならば随分シンプルな内装だな、というファーストインプレッションでした。肝心の転換クロスシートの座り心地は目立った差はなくここは文句なし。
JRは尾張一宮・名鉄は名鉄一宮と駅名こそ異なるものの、駅自体はぴったりと隣接しており完全に一体化しています。一宮は仙台・平塚と並んで七夕まつりの開催地として知られていますが、基本的にはこの駅にツーリストが降りることは少ないはず。そのような通常はなかなか縁のない街を探索する機会をさりげなく与えてくれる、というのがこういった芸術祭の醍醐味ではないかと感じています。尤も、今回のトリエンナーレについてはそれがほぼ全て、ではありましたが。
一宮エリアは路線バスでの移動が推奨されるような郊外にまで展示会場が散らばっているのですが、今回は駅からの徒歩圏内に絞って観覧していきます。これでも10ヶ所中7ヶ所はカバーできますからね。こちら↓は最初の展示会場へ向かう途中のラウンドアバウト(ロータリー)にあった、「ラウンドアバウト ドッグ in 一宮」という展示。トリエンナーレとはまた別の、『アートドッグズ138』と称する2007年度から継続的に行われている野外アート展の一環なのだそうで。
アーケード商店街には尾西地方(尾州)の伝統工芸品である織物の装飾が。とはいえ繊維産業はセオリー通りアジア諸国の台頭→生産拠点の移転でとっくに斜陽化、商店街の方もまたトヨタ王国=クルマ社会のセオリー通りにシャッター商店街化へ向けてまっしぐらの模様。現在の時間は自動車・原付が通行できませんが、歩いていても悠々というよりはガランという感じです。
その商店街の一角にある、旧名古屋銀行一宮支店で現在は多目的ホールとして使用されている「オリナス一宮」です。こちらはフロア全体が奈良美智氏の作品(一部落書き)の展示会場となっています。
※一宮会場の作品の解説はこちらのリンクから[会場別]→[一宮市]で。
▲オリナス一宮の外観
▲奈良 美智/Nara Yoshitomo「Fountain of Life」
▲奈良 美智/Nara Yoshitomo「Miss Moonlight」(中央の絵画)
▲(3枚)チラシの裏ならぬ段ボールの裏・封筒の裏に
僅かですがチケットなしで見られる作品も。こちらは一宮会場に2つある屋外展示のうちの一つ、オリナス一宮そば「つむぎロード」の公衆トイレに描かれた壁画です。
▲バリー・マッギー/Barry McGee「無題(つむぎロード)」
道を渡った先にある一宮市役所本庁舎。尾張第二の都市らしく、新築の立派な建物です(2014年供用開始)。
その庁舎1Fにもパブリックアートとしての作品が。
▲眞田 岳彦/Sanada Takehiko「あいちNAUプロジェクト《白維》」
〔コメント:毛織物で栄えた地域らしい展示その1。羊毛をより合わせて樹木のようなオブジェを作り上げています。そっと触るのもOK〕
次の展示会場へ向かう前に、上述の商店街の延長線上にある「真清田神社(ますみだじんじゃ)」へ立ち寄っていきます。この尾張国の一の宮が当地に鎮座していることが地名の由来となっており、今年でちょうど創建2650年…とか。
真清田神社の門前商店街です。やはり殆どがシャッターを下げたままとなっていますが、少ない営業店舗のうち2店が編み糸の店だった(※1枚目の写真手前左右)のにはいたく感心しました。
神社北東の隣接地に位置するのが、一宮エリアのメイン会場である「旧一宮市立中央看護専門学校」。5階建ての旧校舎がまるごとギャラリーとして使われています。
5階から1階へ下りていくのが順路ということでまずはエレベーターで5階へ上がると、扉が開いた瞬間にこちらの絵がお出迎え。
▲近藤 亜樹/Kondo Aki「ともだちになるためにぼくらはここにいるんだよ」
〔コメント:ゴッホばりの厚塗りでした〕
元看護学校らしい風景。閉校は昨年3月末とついこの間なので、残されている設備はまだ真新しかったです。
その先のベッドと仕切りカーテンが残された旧看護実習室は、各ベッドのそばに置かれたスピーカーから現役当時を再現するかのようなダイアローグと場景を描写するモノローグが流れてくるというインスタレーション作品となっています。
▲小杉 大介/Daisuke Kosugi「赤い森と青い雲」
4F。
▲升山 和明/Masuyama Kazuaki氏によるコラージュ作品群
3F。写真は映像作品を中心に一部省略していますが、2F~5Fでは計8名の作家による作品が展示されていました。
▲ジャッキー・カルティ/Jackie Karuti「エレクトロニック・シアター」
2Fには許家維(シュウ・ジャウェイ)/Hsu Chia-Wei氏による「土の工藝(アースクラフト)」と題されたVR作品が。VR作品は先の愛知芸術文化センターでも体験することができ双方とも予約が必要なのですが、芸文は早くから予約が埋まってしまっていたのに対してこちらは訪れる人が少な目のせいか、開始時刻直前の飛び込みでも枠が空いていたので体験していくことに──ただ、しっかりその場で手持ちのスマホで予約を入れさせられてしまいましたが。
内容はマインクラフトで構築された常滑の町並み・常滑沖の海底・セントレア・明治村にある旧帝国ホテルetc.のガイドツアー。初めてVRゴーグルを装着したのですが、重いし解像度が思ったよりも低いし眼鏡っ子なので視度が微妙に合わんしと、視聴に集中するにはやや厳しい環境でした。リアルな浮遊感や落下感は確かにVRならではなのですが。抑々頭痛持ちですし、今回は視点の移動が比較的緩やかだったので何とか完走できたものの、例えばFPSとかだったら開始早々嘔吐一直線でしょうねぇ。近年はニンテンドー3DSを最後にまたゲームから離れたのですが、今現在どのくらい3D酔いへの耐性が残っているものなのやら……
2Fのもう一つの作品↓(内臓・血管・細胞がモチーフなのでちょいグロめ)を観たのち、
▲塩田 千春/Shiota Chiharu「標本室」
1Fで当館はフィニッシュ。VR作品に時間を費やしたこともあり、1時間10分と意外と長く滞在することになりました。
▲ニャカロ・マレケ/Nyakallo Maleke「一日中頭の中にある場所」
続いて隣接する「旧一宮市スケート場」へ。今年の3月に閉鎖されたばかりだそうです。
ちょうど上映が始まったばかりでしたが、40分だか50分だかという長尺のため、10分ほど観たところで退館。こうして引いて見るとアイスショーをやっているかのようですね。
▲アンネ・イムホフ/Anne Imhof「道化師」
さらに真清田神社北側に隣接する「大宮公園」へ。
ごくフツーの公園内の小さな倉庫に、前記のつむぎロードの公衆トイレと同じ作家による壁画が描かれています。皆さん結構奥まったところにあるここまでスタスタ歩いてきて十数秒滞在したのちにまたスタスタ帰っていく……という、傍から見るとちょっとシュールな光景。
▲バリー・マッギー/Barry McGee「無題(大宮公園)」
時刻は16時15分。朝9時過ぎから昼食を挟んで立ちっぱなしなのでやはり疲れが出てきましたが、残るはあと1ヶ所なので自らを鼓舞して向かいます。よりによってこの会場だけが離れ小島のような場所にあり、来た道をアーケード商店街まで戻って更にひたすら南下。徒歩圏内エリアを北端から南端まで縦断する形になってしまいました。
トリエンナーレの公式ガイドブック(※各会場にて無料配布)では幾つかの立ち寄りスポットが紹介されており、こちら↓はその一つ「com-cafe 三八屋」。NPO法人が運営するカフェ・パブで、会期中はビジターセンターにもなっているとか。経路の途中にあるのでちょっと立ち寄っていこうと考えていたものの、今日は15時から18時までクローズとなっていました。
もう少しアーケード(&シャッター通り)が続きますがそれも終わり、
突然郊外っぽくなった風景の中をしばらく歩くと、「一宮市豊島記念資料館」に到着。大宮公園からは20分近く掛かりました。織物関係の機械・器具を多数収蔵する博物館で、普段の見学は事前予約制となっているそう。
1Fではそれらの織機群に交じり、2Fに展示されている作品の制作工程?がビデオで上映されています。入館の際に「刺激が強い映像ですのでご注意ください」と言われたのですが、チラッとしか見ていないものの羊の解体・なめしの様子が映っているのが理由だったようで。
そして2Fへ。カーテン越しに差し込む西日を受けてどこか神秘的な雰囲気を湛えており、物音ひとつしない部屋全体が味わったことのない空気感になっていました。
▲遠藤 薫/Endo Kaori「羊と眠る」
〔コメント:毛織物で栄えた地域らしい展示その2。羊毛で織られた落下傘です〕
観覧を終え、先程より西側の道を辿って尾張一宮・名鉄一宮駅へ戻ります。駅のすぐ近くにもノスタルジックな街並みが残っているもので。
こちらも立ち寄りスポットとして紹介されている「Re-TAiL」。1933年に尾西繊維織物同業組合事務所として建てられたレトロなビルで、2015年の同事務所の移転後は尾西(尾州)の上質な繊維素材を展示・販売する等といった用途で利用されています。解体を前に時限的に存続が決まった建物らしくリノベーションは行われておらず、内装もまたレトロなままで非常に年季の入った様子。内部の写真撮影には維持管理のための協力金をお願いしているとのことなので、1Fをぐるっと見て回るのみで出てきました。
駅に戻ってきたのは17時前。目論見通りというか日の入りまで少し時間を残しているので、もう“一仕事”をこなしながら名駅へ帰ることにします。
(2022.10.04)
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