23/03/20 (2)特急くろしお【大阪→湯浅】×J-WESTチケットレス390
9時03分発の白浜行き特急<くろしお3号>に乗車。湯浅に停車する本日最初の下り特急となります。<くろしお>は全車指定席なので、ベンチや待合室のある「普通の」駅ならば列車の入線が近づいてからおもむろに立ち上がって乗車口へ向かえばよいのですが…… 現実は下2枚目の写真の通り。白浜までは約2時間半、新宮行きで終点まで乗り通すとなると4時間を超える長丁場となる列車でありながら、前記のようにうめきた地下口・西口の改札内に飲食物を購入できる売店・自販機はありません。お弁当がご入用の場合は11番ホーム上または御堂筋口・南口改札内コンコースの売店までお越し下さい。どちらもうめきた地下口から往復するだけで軽く10分以上掛かると思われますが。とにかく駅も車内もないない尽くしなので、最低限飲み物くらいは事前に用意するのを推奨です。
使用する特急券はこちら↓の「J-WESTチケットレス390」。J-WESTチケットレスの期間限定割引・全区間均一料金版という設定の趣旨は昨年度版と同様なのですが、お値段は昨年の500円から更に値引かれて390円(3月20日~4月28日の平日に利用可能)。<くろしお>系統ならば最遠で紀伊田辺まで行くことができますが、通常版と同様に従来の自由席の代替という位置付けなので、発売は乗車前日または当日のみという制限はあります。今回は発売開始日=乗車日だったので、自宅での朝食の合間にスマホで予約を入れてきました。
列車が入線(下1・2枚目の写真)、そして着席後に車内からホームドアを撮影(同3枚目)。JR線でフルスクリーンタイプのホームドアが採用されたのはこれが初めてのはずですが、違いは単に事業者に留まらず。ガラスの向こうに見えるのは回転式リクライニングシートを装備する特急型車両、そして通過ではなくここから乗れてしまう──といった、これまで散々見慣れたスクリーンドアとはまるで異なる新鮮すぎる風景。ベテランのテツですら(だからこそ?)、馴染むまでは今しばらく時間を要しそうです。
こちらの3号は本来は283系(オーシャンアロー型)が充当されるのですが、本日に限り287系での運用に変更。乗車した最後尾の6号車の車番はクモハ287-23でした。この運用変更は当然シートマップにも反映されており、今回は三度目の正直ということで(<サンダーバード><きのさき>で苦汁を嘗めた)変則的な窓割りを踏まえたうえで窓が広い良ポジションを押さえておきました。
いずれはなにわ筋線の線路と接続される構内南側ですが、開業時点では梅田貨物線の一部でしかないので4線が単線1線に収斂。取り付け部が瀬野八を僅かに上回る最大23.5パーミルという急勾配(貨物列車にとっては)だけに、出発後1分も経たずに地上へ出てしまいます(下1枚目の写真)。ここで既存の線路へ合流し、早くも新線区間南側の初乗りは終わり。何ともあっさりとしたものですが、2018年春以降、ここを通過する定期旅客列車は料金券が別途必要な列車のみとなったため、おおさか東線の一部になった北側と比べれば乗車のハードルは一段高かったりも。なお、なにわ筋を横切る浄正橋踏切(同2枚目)は梅田貨物線唯一の踏切として今後も残されることになります。
あとはスロープを上って大阪環状線の複線線路に張り付く→西九条駅手前で内回り線へ転線、というお馴染みのルートとなります。2020年、同駅北側に渡り線が増設されてJRゆめ咲線電車の増発の障害となっていた中線通過が解消されましたが、他方で外回りの列車通過の支障となる平面交差は従前と変わらず。なにわ筋線開通後は旅客列車はすべて同線へ流すと予想されるため、1989年から(臨時列車を含めれば前年の88年から)続いてきたこの綱渡りな運転形態もいよいよ根本的な解決へと向かうことになります。なお、一部の<くろしお>の停車駅だった西九条駅は今春のダイヤ改正にて全列車通過に変更されました。
普通・快速電車との平行ダイヤゆえ、15分を費やして大阪環状線を半周。もとより乗車率が低めだったのに加えて大阪都心での乗車の相当数が大阪駅へ転移したせいか、天王寺では車内に目立った動きはありません。大阪~新大阪間に設定された折り返し乗車の特例を利用して新大阪駅で乗車・下車するという手段もありましたが(私も過去に何度か利用しました)、こちらは大阪駅地下ホーム開業に伴い特例が廃止となっています。
▲天王寺停車中
新線関連の新鮮な話は大体これで終え、列車は阪和線へ。スピード感については韋駄天走りと呼ぶには些か微妙なところではあるものの、関空利用客の便宜を図り2020年に標準停車駅となった日根野を除けば阪和線内はノンストップというのが、今も昔も変わらぬ<くろしお>の基本パターン。快速電車、特に日根野以南が各駅停車となる紀州路快速との差が著しいのですが、とは言うものの「和歌山(駅)は特急に乗って行くところ」という感覚は未だに全くないですね。その点、両極端なJRに対し南海の特急サザンは色々な意味において中庸ポジションにあり、一番しっくりとくるわけでして。
今日は午後から薄曇りという予報になっていますが、いまのところは清々しい快晴。白浜へ向かう国内外の観光客は思ったよりもずっと少なく車内は静粛なので、イヤホンは着けずに(オールM車である)287系のモーター音・インバーター音を愉しむことにします。尤も、列車が空いているというだけで現地の人出はかなりのものなのでしょうけれど。大阪駅ではこの時間からもうUSJに入場制限がかかっているという放送が入っていましたし。
▲近年高架化された東岸和田駅
▲りんくうゲートタワービルを遠望
▲山中渓駅手前
▲紀の川を渡河中
10時05分、和歌山着。大阪からの乗車時間は62分です。当列車の2分後に大阪駅大阪環状線ホームを出発する紀州路快速より38分も早い到着と劇的な短縮(▲36分)ではありますが、上述のように抑々の選択肢が途中2駅停車or21駅停車という極端なものなので……
和歌山からはきのくに線へ。出発してしばらくすると左手の山腹に見えてくる古刹・紀三井寺(きみいでら)は桜の名所としても知られているのですが、車窓から眺める限りではサッパリ。とはいえ開花から満開まではあっという間なので、この翌週には見頃を迎えていたようです。今年は暖かかったので見頃の時期は早いだろうと言われていましたが、畢竟ほぼ例年通りだったみたいですね。紀三井寺は一昨年の初冬に初めて訪れたのですが、同名のJR駅から歩いてすぐなので今日も時間が余ったならば最後に再訪してみようかと。参拝時間が17時までなので実際にはやや厳しそうですが。
イメージに反して意外と海が見えるポイントは少ないきのくに線。紀伊田辺・白浜まで足を延ばせば切目-岩代-南部間で同線屈指のビューポイントを通過するのですが、ずっと手前の冷水浦(しみずうら)駅付近でもこうして眺めることができます。手前の対岸は和歌山マリーナシティ、そして左手奥の対岸は和歌浦・雑賀崎。これらも一昨年紀三井寺とセットで訪問し、このエリアの魅力を再発見できて有意義な旅となりました。
平地も山腹も所狭しとミカン畑が広がるという、こちらは飽くまでイメージ通りの紀州らしい車窓。いつの間にやら特急の標準停車駅に格上げされていた海南を出ると、御坊まで停まらない速達タイプに対してこちらは箕島・藤並・湯浅と停車していきます。
(下の写真2枚目は箕島駅、同4枚目は有田川)
シートポケットに入っている、津波が予想される場合の対応が記されたリーフレット。飛行機の緊急脱出手順のそれは正直なところあまり真剣に読んだことはないのですが──保安要員(=CAの本分)が同乗していますし──、こちらはちゃんと目を通しておかなければ……という気にさせられますね。飛行機事故とニアリー3.11な南海トラフ地震とでは現実感が段違いなので。
10時37分、定刻通りに目的地の湯浅へ到着。大阪からの所要時間は1時間34分、小さな旅として長くも短くもない良い塩梅ですね。指定席特急料金も通常版のJ-WESTチケットレスならば1,450円(※4月1日以降の価格/3月末をもってデータイムに設定されていた100円割引は廃止)のところを390円! 今日は先述のとおり振り子車両から非振り子車両への運用変更が行われていましたが、差が出るのは振り子を作動させる和歌山以南ですし、この程度の距離では運転スケジュールへの影響は皆無だったようです。線形が厳しくなる区間の手前で運転区間が終わるのは不可解な運用とも取れますが、元来の沿線人口の少なさに追い打ちをかけるように阪和・紀勢道が延伸を続けているため(2023年現在はすさみICまで開通済)、最早スピード競争は無意味と割り切られているのか。事実、JR西日本社内でも白浜以遠は路線維持困難な「ローカル線」と捉えられていますし。
【追記】283系は昨春のダイヤ改正以降、振り子装置の使用を停止しているとのこと。ああ、全部納得。
やはりというかプラットホームへ降り立った瞬間から19年という歳月の経過を肌で感じられたのですが、さて、町の方はどのくらい変わっているものなのでしょうか。(次回へ続きます)
(2023.03.20)
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