宇都宮ライトレール その3【芳賀・高根沢工業団地・芳賀町工業団地管理センター前】
予定には無かった徒歩での到着となりましたが、ライトラインの路線東端(※線路自体は最後の1.6kmは北向き)の芳賀・高根沢工業団地停留所です。正式名称決定前の仮称が「本田技研北門」だったように、地域内交通の発着こそあるものの基本的には同社の事業所への通勤・出張・訪問用に設けられた停留場。態々ここまで線路を引き込んできただけのことはあり、平日には宇都宮駅東口の9,000人に次ぐ2,600人の乗降があります(参照→https://www.miyarail.co.jp/info/1839)。現在午後1時40分ですが利用は朝夕だけということはなく、真昼間のこの時間帯でも細々ながらコンスタントに利用者の姿がありました。
跨道橋から眺める線路の延長線上。5キロほど北上すると停留場名にも含まれている高根沢町の中心市街地があり、テツの習性として烏山線をライトラインと同じ直流750Vで電化して、芳賀・高根沢工業団地~宝積寺間を延伸のうえ直通運転…という、実現可能性をガン無視した妄想が捗ることになります。真面目な話をすれば、この区間は御料牧場(成田空港建設に伴い成田市から移転)で沿線人口はゼロなわけですが。
反対側のかしの森公園前停留場方向です。奥に見える山は筑波山に似ているのですが、こちらは加波山というのだそうで。この近辺も電車とこの山を交えた構図が狙える撮影スポット。更に先述の飛山城史跡公園や柳田大橋からは秋・冬の空気が澄んだ日には富士山と一緒に撮影することができ、重鎮たる富山地鉄軌道線×立山連峰に対してこちらのニューカマーはバリエーションで挑戦!ということになるでしょうか。
ホーム入口とプラットホームです。ホームの有効長に一切の余裕がなく、到着する電車はヨーロッパのように車止めギリギリまで寄せて停めていました。
発車を待つ電車内で運転台を撮影。速度計は80km/hまで刻まれており、こちらのポテンシャルを存分に発揮できる日もまた心待ちにしたいものです。
なお、宇都宮駅東口~芳賀・高根沢工業団地間の所要時間は、時刻表通りだと各駅停車で45分・快速で42分。仮に朝の電車で立ちっぱなしとなると、十数分ならばまだしもこれは相当しんどい時間です。東京・大阪圏の民である我々は悲しいことに調教済みなのですんなり受け入れてしまいがちですが、生活様式がクルマ移動に最適化された地方ではそうはいきません。ホンダの通勤バスは廃止されてしまったものの、確実に着席できるのならばそちらや自家用車の方が良い、という思考になるのは自然なことです。飛山城史跡公園の項で言及したように、現状ではスピード面でのアドバンテージが小さいですし。加えて、一日乗車券使用中ということもありここまで触れてこなかった運賃の件ですが、こちらも残念ながら富山ライトレール(現・富山地方鉄道富山港線)のように均一運賃とはいかず、初乗り150円~最大400円(大人普通運賃)の対キロ区間制。路線長が長いのと全線新設軌道で償却がこれからという理由はありますが、ライトレールという概念はコスト負担もライトという意味も包含すべしという考えに基づくと、(別運賃の)フィーダー交通を含めないLRT単体で300-400円台というのは異次元という感覚です。富山港線は南北接続で都心-郊外間のリンクが完成しましたが、こちらは2期区間の実現後も課題を引きずることになりそう。3.0kmまで150円というのは、この距離に相当する区間がドル箱だけに(後述)相当頑張っているなと思いましたが。
今度は上り電車に乗車。次のかしの森公園前に到着した時点で完乗=今回の旅のミッション達成となったので、残りの時間は途中の気になる停留所に立ち寄りながらぼちぼち戻ることにします。なお、このかしの森公園前も芳賀・高根沢工業団地と並んでホンダの事業所・施設群の最寄り停留場になっているため、平日の乗降客数は1,400人と19停留所中第4位。芳賀・高根沢工業団地と合わせれば4,000人と、ターミナルである宇都宮駅東口停留所の44%に達する数値です。
▲かしの森公園前停留所前の交差点南側の風景
“谷”を越えたところの「芳賀町工業団地管理センター前」停留所にて、さっそく下車。こちらは線内に5か所(宇都宮駅東口を含む)設けられている二次交通との結節点、「トランジットセンター」です。停留所到着時の車内放送で流されるチャイム(ジングル)も一般の停留場/始発・終着停留場とは別の(やや長めの)ものが用意されているという、こちらでも特別な扱い。
全9種のチャイムはこちら。公共空間に相応しい、柔らかく且つキャッチーなメロディの秀作揃いです。
トランジットセンターへ向けて歩き出そうとしたら、停留場内の軌道の一部が完全に水没していて目を丸くしました。昨日大雨が降ったせいもありますが、どうもここだけ排水が上手くいっていない模様。まぁ運行には支障はないですし、さっきの水田とはまた違った趣の“水鏡”、ということで。
時計台がシンボルになっている芳賀町工業団地管理センターに隣接した、トランジットセンターの風景。上下線とも横断歩道を二度渡る必要はあるものの、交差点に接して設置されています(P&R駐車場のみ、南へ1分ほど歩いた場所)。ライトラインはここの交差点で北向きへ進路を変えてしまうので、東方へ約6kmのところにある芳賀町の行政の中心地・祖母井(うばがい)地区へは当トランジットセンターにてJRバス関東の路線バスへお乗り換えです──流石にライトライン並みの頻発運転には程遠くはありますが。輪をかけて本数は限られるものの更に先、真岡鐵道の市塙(いちはな)駅・茂木(もてぎ)駅へ向かう便もあり、スケジュールが合えばですがこちらもショートカットルートとして活用可能です。なお、真岡市内へは当トランジットセンター経由ではなく、従来から東武宇都宮駅を起点に運行されている関東自動車のバス路線の利用が便利。
LRTであるからには停留場スペースの関係上、どうしてもオミットせざるを得ない設備もあるわけですが、こちらのトランジットセンターには待合室(下の写真右手前)及びトイレ(同左奥)が用意されており、勿論LRT停留場の付帯設備としても利用できます。
ホンダの事業所の送迎バス。ライトラインではカバーできないエリアでは依然として不可欠です。
交差点の急カーブを通過していく電車です(2・3枚目は往路の車内から)。早いもので、栃木SCラッピングの編成がもう折り返してきました。
千と千尋のアレの如く水上を渡って入線してきた電車に乗り込み、再びゆいの杜を抜けて5駅先のグリーンスタジアム前へ。停留場の間隔ですが、各エリア内は殆どが500m前後なのに対してエリアの境界を跨ぐところは2km近くになる区間も存在したりと疎密があるため、全線の平均は810m。各駅停車の宇都宮駅東口~芳賀・高根沢工業団地間の表定速度は19.5km/hと、最高速度40km/hの路線としてはLRTらしくまずは健闘しています。尤も、ここまで見てきたように現状ではラッシュ時・閑散時ともにダイヤを攪乱する要因が複数あるわけですが。
構成の都合上、ここで一旦分割します。
(2024.05.14)
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