宇都宮ライトレール その1【宇都宮駅東口→駅東公園前→飛山城跡】
定期券うりばのオープン待ちの間にプラットホームの風景を撮影しておいたので、まずはこちらから。朝ラッシュも終わりかけという時間帯のため、待望のファーストコンタクトに相応しいゆったりとした雰囲気です。4月1日のダイヤ改正にて計画当初から予告されていた快速運転が始まっており(途中17の停留場のうち6つを通過)、現時点では平日の下り2本、宇都宮駅東口6時58分発と7時46分発の便が該当。といっても運転区間の宇都宮駅東口~芳賀・高根沢工業団地間全体で各駅停車と比較してたった3分の短縮となり、やはりというか速達ではなく遠近分離が目的のよう。今回の日帰り(?)訪問ではどのみち間に合いませんでしたが、混雑した電車に遊び乗りの私が交じるのも気が引けるので、心残りのようなものはゼロです。


広くはないホームなので、かなり苦心して整列のための線が引かれていますが……

流石にこれ↓はツッコまざるを得なかった(笑)。

車止めの後方、2本の線路の延長線上には建物は建てられておらず、いつでも延伸工事へ入れる準備が出来ています。

続いて、これからの宇都宮の顔となる役割を課せられた車両です。全長29.5mの3連接車で、形式名は【HU300形】。開業時点では17編成が投入され、今のところ更に2編成が増備される予定とのことです。仕様が近い福井鉄道のF1000形《FUKURAM》をベースに製造されており、私も乗車経験があるので比較が可能ですが(→FUKURAMの乗車記録)、デザインの妙でエクステリア・インテリア共にまったくの別物のような印象を受けます。外観の写真についてはこの後もちょくちょく貼っていきますが、ひとまずはラッピング車両から。



車内です。暖色の間接照明+ドア付近の補助照明のダウンライトもそうですが、カラースキームも外観の標準色である黄色+ダークグレーを踏襲しており、優等・長距離列車ではなくコミューターに供される車両としては国内のみならず国外を見渡しても(ヘビーレールを含めても)異例といえる、シックな空間が演出されています。圧迫感を軽減するヴォールト(ドーム型の天井)にはデジタルサイネージ以外に目立つ機器は取り付けられておらず、広告はそのデジタルサイネージに表示されるものだけというのも、見栄えの良さに直結。実用的なスピードが出るかどうかはともかくとして、フリーWi-Fiサービスもあります。



天井と壁面の一部のパネルには溝付きのものを採用。これも他の鉄道車両では意外にも見ない仕様です(小田急ロマンスカーくらい?)。

座席をクローズアップ。上述のFUKURAMと同様、現時点で最長50分弱、第2期区間開通後には最長1時間数十分という長めの乗車時間に対応し、肉厚でふんわりとしたこれも超低床式LRVとしては異例の大変座り心地の良いシートが採用されています。合皮とモケットを組み合わせた表地も上質感抜群。デザインはGKデザインが担当しているだけあり(叡山電鉄の『ひえい』が一例)、どこかの雰囲気番長とは格が違うという感じです。ひとつ体験しそびれた事に「ボックスに膝を突き合わせた状態で腰掛ける」というのがあるのですが、座席配置はFUKURAMと揃えているとなると(下3枚目の写真がその再掲)、この点に限っては居住性に期待できそうにないようです。



ロングシート部分は優先席。立ち座りの際に体重をかけるのにも使えるアームレストが設置されています。

車椅子・ベビーカースペース(写真右)。

近年の熱線・UVカットガラス装備の車両では省略されがちなロールカーテンも設置。柄は宇都宮の伝統工芸品である「宮染め」をモチーフにしているのだとか。

前記のように現金使用で降車するときだけは運賃箱のある最前部のドアを使う必要がありますが、ICカード使用の場合はドア横のカードリーダー(下の写真)にタッチのうえ、どのドアからも乗降OK。一日乗車券利用時に至っては完全にハンズフリーで水平エレベーター感覚と、よもや日本国内でこんな体験ができる日が来ようとは……と感慨深いです。定期券に関してはICカードに一本化、それも関東自動車発行の「totra(トトラ)」にしか載せられないという制限がありますが、普通運賃での利用ならばtotraのほか全国10種のICカードにて相互利用が可能となっています。これは余談になりますが、写真の通り乗車時のカードリーダーが腰下の低い位置にあるために、一度ポケットに入れていたスマホ内のモバイルICOCAが反応して入場扱いになっていたということがありました。降車時のカードリーダーが別の高い位置にあるので意図せず運賃が引き去られることはないですが、こんなこともあるよということで。

現金使用の際の整理券発行機は、車内ではなく各停留場のホーム上(先頭に近い方)に設置されています。

“正規”の座席の他、運転台直後に腰掛けるには丁度良い高さの剥き出しの機器収容箱(ヒーター?)があり、座席がそれなりに埋まっている時から混雑時にかけ、こちらがしばしば補助席代わりに使われていました。何しろただの金属の箱なので、お尻には決して優しくはないのですが。
最初の乗車区間は2駅だけなのでかくいう私もその箱に腰掛け(準かぶりつき席も兼ねているので)、9時10分発の電車で宇都宮駅東口を出発。ググッと左へ曲がり(下1枚目の写真)、とある理由で全国のテツの間で有名になってしまった交差点を越えると、大通りの鬼怒通りへ入ります(同2枚目)。乗り心地については言及するまでもないとは思いますが、新設の軌道(ロングレール)に最新型のLRVですから極上の一言。僅かにヨーイングは感じるものの、最高速度が現状では併用軌道区間・専用軌道区間双方で40km/hに抑えられていることもあり、気になるほどではありません。優先信号こそ無いながらも交差点で頻繁に足止めされることなくスイスイと駆けていますが、黄色矢印でも速度MAXで突っ切るのではなく、他車の動きを警戒しながら若干速度を落として通過していきます。


2つ目の「駅東公園前」で下車。電停の写真はこの後に貼りますが、まずはここまで持ち越していた朝食を摂りに、南東方向へ歩いて6分ほどの場所にある『ペニーレイン 宿郷店』へ向かいます。こちらは那須発祥の人気ベーカリーが運営しているベーカリーカフェ&パティスリー。ペニーレインと聞くとアレしか思いつかないのですが、ストレートにそれが正解で、オーナーがビートルズの大ファンなのだそうです。店舗は元漫画カフェの建物を英国のティールーム風に改装したもの。敷地へ入った瞬間に、焼き立てのパンのいい香りが鼻腔をくすぐります。



久喜で下車してからまた2時間近く経過しており漸く休息を取れるのがまず嬉しいですが、このすぐ後に軽く1時間以上歩く予定があるため、それに備えてガッツリと「モーニングプレート」(税込1,100円)をオーダーします。
・ホットコーヒー(おかわり自由)
・ミネストローネ
・厚切りトースト1枚
・バターといちごジャム
・ソーセージ(プレーンとカレー風味各1本)とマスタード
・ベーコン2枚
・スクランブルエッグ
・サラダ
・ジャム入りヨーグルト
というラインナップで、ここはイングリッシュではなくアメリカンスタイルの模様。そういえば「イギリスで美味しいものが食べたければ3食朝食を食べろ」なんてジョークもありましたっけね。ボリュームはかなりのものですし、ふわふわトーストを筆頭にその辺のビジホの朝食バイキングは相手にならないハイレベルな味で、量・質ともに大満足でした。朝7時から開いているため、ホテルは素泊まりにして朝食はここでというのもお薦め。ただカトラリーが足りない、具体的にはバターナイフとヨーグルトに使う小さめのスプーンが用意されていなかったのはBADなポイントでしたが、それ以外はほぼパーフェクトです。

ホットコーヒー(これも美味しかった)を二度おかわりしつつ、約1時間の滞在。すこぶる居心地が良かったので予定時間を超えてしまいましたが、宇都宮での滞在時間は約11時間とライトライン完乗だけならば充分すぎるため、これも楽しい寄り道の一つということで何ら問題なし。すっかり満腹になってしまったため、ブランチということにして昼食は抜きになりそうです。
駅東公園前停留場へ戻ってきました。宇都宮駅からも一応徒歩圏内になりますが、北東方向にある『ブレックスアリーナ宇都宮』がB.LEAGUEのチーム「宇都宮ブレックス」のホームアリーナとなっており、東口のペデストリアンデッキには宇都宮ブレックスとJリーグのチーム「栃木SC」の旗がズラリとかかっていました(下3枚目の写真)。栃木SCのホームスタジアムも後ほど訪れる「グリーンスタジアム前」停留場が最寄りで、ライトラインがこれらへのアクセスルートとして機能しています。



ホームは狭いながらも、上屋・防風ガラススクリーン・ベンチを完備しています。ベンチはバータイプと椅子タイプがあり、椅子タイプの台座は宇都宮を代表する産物である大谷石。車両のボックスシート区画の床敷物もこの柄になっていました。

寄付プログラムの一環として、椅子の座面に取り付けられたメッセージプレート。

発車標。到着時には10分間隔で運行されていましたが、今の時間はデータイムの標準時隔である12分間隔になっています。なお、こちらのLCDのほか、音声での案内もあります(どちらも日本語と英語の二言語対応)。

宇都宮駅東口方向(下1枚目の写真)と、芳賀・高根沢工業団地方向(同2枚目)。後者はすぐ先で国道4号宇都宮バイパスをオーバーパスします。ストリートビューによると鬼怒通りは歩道や車線の幅員を狭めたり中央分離帯を撤去したりで車線数を大方維持したまま複線分の軌道敷を捻出できたようですが、この跨道橋のみは片側2車線から1車線に半減しています。車線数縮小後にここが新たにボトルネックになった…というわけではないようですが。


10時38分発の電車に乗車しましたが、前記のように優先信号は無いので、始発から2駅目にして1分ほどの遅延。とはいえ先程と同様に走りそのものはスムーズです。市街地内とて停留場の間隔が長めなのも、旧来の路面電車とは違うところ。
宇都宮大学陽東キャンパス停留場を過ぎてしばらく進むと、鬼怒通りから外れて最初の専用軌道区間へ。正確に述べると「電車のみが通る宇都宮市道で、法律上はここも併用軌道」となり(もちろん建設費の調達に有利という理由です)、高架橋にあの板状のものではなく道路と同仕様の欄干が設置されているのがちょっと不思議な光景です。線路と交わる部分では暗渠になっていますが山下川という小さな川が流れており、ここが市街地と市街化調整区域の境界になっているため、車窓の方も劇的に変化するポイントです。



ライトラインの車両基地がある平石。大多数の電車が宇都宮駅東口~芳賀・高根沢工業団地間全線の通し運転ではあるものの、路線長14.6kmという「大物」だけあり、平石やグリーンスタジアム前始発・終着の区間運転の電車が少なからず設定されているのも特徴となっています。



平石から少し進むと平石中央小学校前です。夕方近くに実際に下車してみましたが、まぁ…なんて辺鄙な…という場所。もう少し北側にこの一帯、平石地区の中心地があり、当初はそこを通るルートで計画されていましたが、鬼怒通りの車線数を縮小して交差点の進路も複雑化するとなるとここがボトルネックになると想定されたために、現行のルートに変更されたとのことです。地図を見ていると鬼怒川左岸(東岸)・芳賀町方面からやって来た県道が市の大動脈である宇都宮環状道路、通称「宮環」に接続する手前にこの計画ルートが重なっていたため、確かにこれは影響が大きそうですね。

平石中央小学校前を過ぎればいよいよライトラインのハイライト、鬼怒川をまたぐ橋梁へと差し掛かります。次駅の飛山城跡の向こうまで約2キロという長い直線が続くため、日常ユーザーならば40km/hと言わず70km/hくらいでかっ飛ばして欲しいものでしょうが、ゲストにとっては遊覧するのに程よい速度で有難いもの。折角の一日乗車券、往復で二度渡るだけでは勿体なかったので…という話もまた後のエントリーにて。


左岸へ渡ると飛山城跡に到着。きょう唯一の観光スポット訪問として停留場名になっている『飛山城史跡公園』に立ち寄るべく、ここで下車します。ホームにて、乗ってきた標準塗色の電車をお見送り(下2枚目の写真)。このアングルだとライトラインのシンボルマークになっている先頭の「L」を模ったカラーリングが分かります。こちらのHU300形、卓越したデザイン性から個人的にはストラスブールでトラムを目にした時以来の衝撃を受けており、それ位のエポックメーキングな車両であると信じて疑いません。手始めに鉄道友の会の2024年度ローレル賞を受賞しており、当然の結果とはいえまずはおめでとうございます。


次回へ続きます。
(2024.05.14)
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