宇都宮ライトレール その2【飛山城跡→かしの森公園前】
周囲を農地が取り巻き、ライトライン第1期開業区間における全19の停留場のうち、群を抜いて長閑な飛山城跡(とびやまじょうあと)停留場。神戸出身者なので、嘗ての神戸市営地下鉄伊川谷駅とイメージが重なります──この景色でこの高頻度運転?という共通点でもってですが。そのぶん付帯施設の整備には都合が良いともいえ、P&R用の駐車場は現時点でかなりの収容台数(下6枚目の写真)。駐輪場も20台分用意されていますが(同7枚目)、こちらも全然足りていないという利用状況となっていました。
下り電車を待っている間に対向ホームに到着した、「プロスポーツのまち宇都宮」PRのラッピング車両。下の写真は栃木SCバージョンです。他にライトラインのラッピング車両の第1号である宇都宮ブレックスver.、そして3月24日からはプロサイクルロードレースチームの『宇都宮ブリッツェン』ver.が加わっています。
12時54分発の電車で再出発。この電車も1~2分程度遅れて到着したうえ、現金利用での降車客が複数人居てやや精算に手間取り、遅延が上積みとなってしまいました。HU300形のローレル賞受賞時のリリースにも
IC乗車券用の乗降読取機が車両側に設備されていることは評価できるが、実際の運用で、IC乗車券を持たない乗客の乗降に時間を要して遅れが生じる事態が発生した。駅等の地上側設備や乗車券システム全体の改良など、信用乗車の今後に向けた検討が望まれる。と異例の提言がありましたが、換言すれば現状で交通系ICカードの全国相互利用に参加しているので栃木県外からの訪問客を含めて一枚も所持していないというケースは多くないでしょうし、新たに発行するにしても全ドアでの乗降が可能という十分なベネフィットがあるわけなので、これはICカードの利用促進を図っていくしかないのでしょう──オープンループで事足りるのならば、最早新規発行の手続きすら不要になりますが。欧州(イギリスは除く)のLRTでも抜き打ちの検札が実施されると全ての乗客のチェックが終わるまで次の停留場に到着してもドアが開かず、結果的にこれが遅延に繋がったりしますからね。鉄道友の会の見解とは裏腹に、この件に限ってもスタート時点で既に完成度の高いシステムが構築されていると私は考えています。
鬼怒川を挟んだ両岸、平石地区および清原地区を走る車窓は田畑やビニールハウスが基調。現地では何故か気付きませんでしたが、両地区ではビールの原料となる二条大麦(※栃木県の生産量が全国第2位)の収穫期である「麦秋」を迎えています。初夏なのに。小春日和の如く、聞き慣れない身には相当違和感を覚える表現ではありますが。
段丘を駆け上がると、右岸から続いてきた2キロの長い直線区間は終わり。このポイントは超望遠レンズで男体山・日光白根山と電車を交えた構図を狙えるという、ライトラインの定番の撮影地になっているのだそうです。
①中心部から続く市街地→②鬼怒川両岸の農村地帯と来て、電車は③宇都宮清原工業団地エリアへ。最初の停留場の清陵高校前から末端側は、快速も各駅に停車していきます。宇都宮駅西側の市中心部まで路線が達していない現在は、2つの工業団地と沿線の学校への通勤・通学輸送が主な使命。そのため、朝は下り方向・夕方は上り方向がラッシュの本流になっているのが最大の特徴です。ライトライン開業に伴い沿線のバス路線の再編が行われたほか、芳賀工業団地にあるホンダの事業所が宇都宮駅を起終点に走らせていた従業員用の通勤バスの運行を取りやめてライトラインでの輸送に切り替えたため(※バス廃止時点で一日1200人の利用)、いわば「初期パラメーターが高い」状態でのスタートだというのも、ライトライン独自の特異な環境となっています。
宇都宮清原工業団地内の区間は分類上は併用軌道となりますが、清原地区市民センター停留場東側の交差点以外は道路と分離されたサイドリザベーションなので、事実上は平石手前から専用軌道が連続しているといえます。次の④ゆいの杜エリアへの橋渡しは文字通りの橋。国道408号線と県道宇都宮向田線(※鬼怒通りは同県道の宇都宮市東宿郷~道場宿町間に付与された愛称)が交差する野高谷町(のごやまち)交差点の南東の角上空を跨道橋で通過し、県道の上下線の間へ下りていきます。ここは交通が集中する渋滞の名所とのことで、道路側も南北に走る国道の立体化工事が進捗中(下の写真)。マクロ的には紛れもなき交通状況の改善ではあっても、ライトライン視点では痛し痒し…でしょうか。
ここから終点の芳賀・高根沢工業団地までは、名実共に併用軌道区間に戻ります。宇都宮テクノポリスセンター地区のニュータウン・ゆいの杜には、計画的な街区に合わせてゆいの杜西・ゆいの杜中央・ゆいの杜東の3停留場を等間隔で設置。私もこのエリアにランチを予定していた店があるので下車するつもりだったのですが、ブランチ・夕食の2食に変更となったために今日のところは5つのエリア中唯一下車停留場のない場所になってしまいました。すまぬ。
ゆいの杜東と芳賀台の中間にて、宇都宮市と芳賀町(はがまち)の市町境を越えます。宇都宮芳賀ライトレール線を名乗るこの路線、芳賀町内の路線は全長14.6km中2.5kmに過ぎないものの、上述のホンダの事業所を発着する輸送のボリュームが大きいため(*注)、最末端ながらも第1期開業区間の要と呼んでも過言ではない区間です。車両の形式名に至ってはHU300形と、UtsunomiyaのUよりもHagaのHの方が先に来ていますし。
*注:宇都宮ライトレール公式サイト内、〔お知らせ>開業半年間のご利用状況について〕を参照(→https://www.miyarail.co.jp/info/1839)。平日平均の乗降客数で芳賀・高根沢工業団地は宇都宮駅東口に次ぐ2位、かしの森公園前は4位。
⑤芳賀工業団地へ入ったのち、そのまま終点まで乗り通す予定でしたが、一つ手前の「かしの森公園前」到着直前に通過した区間を今すぐ路上から眺めてみたくなったので、こちらで急遽下車です。時刻は13時19分と、定刻よりも3分遅れでした。
▲(2枚)島式ホームのかしの森公園前停留場
こちら↓がそのお目当て。約600メートルの間に急勾配でのアップダウンを行う谷のような地形です。垂直方向にせよ急カーブにせよ、この手のレイアウトの自由度は如何にもLRTといったところ。
停留場名になっているかしの森公園へもご挨拶。地元では桜の名所として知られているのだとか。
間に合えば12分後の電車に乗車するつもりでしたが、やっぱりというか横断歩道の信号待ちの間に行ってしまわれました。とはいえ予習でここから芳賀・高根沢工業団地停留場までは大した距離はないのを知っていたので(因みに営業キロは0.7km)、待つくらいなら…ということで線路沿いを歩いて向かうことにします。どうせ復路で乗車するので、完乗には影響がないですし。
左手(の前半)はかしの森公園、右手は本田技研工業の大規模施設。施設の向こう側にはこれまた大規模なテストコースが広がっています。ここは桜の並木道だったのですが、ライトラインの軌道敷を確保するために切り倒されてしまったのだそうです。本連載では個別に取り上げませんが、ストリートビューで軌道敷設前と敷設後の沿道の変化を見比べてみるのも一興かと思います。
かしの森公園の北端。工業団地に変貌するまでの緑豊かな景観を否が応でも想像してしまいますね……というか、このすぐ裏側(西側)が未開発区域なので、これは想像するまでもなさそう。
シーサスクロッシングと折り返し準備中の電車を横目に、10分ほどで芳賀・高根沢工業団地へ到着。停留場の様子は次回のエントリーに譲ります。(続く)
(2024.05.14)
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