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2024.06.05

宇都宮ライトレール編 Epilogue【宇都宮→大宮→大阪】

 ギュウギュウとまではいかずとも、再び混雑した電車に揺られて宇都宮駅東口へ帰ってきました。一日乗車券を首から外して、今日のライトラインの乗り歩きはおしまい。“儲け”に関しては計算するまでもないと思いますので省きます(よく乗った!)。下り電車は立ち客こそポツリポツリと居るものの、上りほど混んではいないのが一般的な路線の18~19時台とは異なるところです。


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 まだ少し持ち時間があるので、もう一つ気になるポイントを見に行ってみます。第2回でもチラッと触れましたが、ダイワロイネットホテル宇都宮/ホテルマイステイズ宇都宮前の交差点(下2枚の写真)。ライトライン開業以来、現在までに電車と自動車が接触する事故が6回発生しているのですが、こちらは訪問4日前に二度目の、つまり同一箇所で複数回発生した唯一のケースの現場です。これはきっと何かしらの原因があるはずと考えて観察してみたのですが…… うーん、特に何も…… 信号に従っていれば絶対に進路が錯綜することはありませんし、仮に交差ポイントの前後が渋滞していたとしても電車の運転士が間違いなく気付くわけなので。あれだ、「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛んだらニュースになる」式の、客観的に見ればありふれた交通事故の話ですよね。個人的には「一次元的に」「規則的な動きしかしない」電車に「ブレーキが間に合わないタイミングで直前へ飛び出す」というのは、意図的ではないにせよ未必の故意の“当たり屋”では…?なんて思ってしまったりも。ただ、こういう事故を過失割合や運転適性がどうのという視点で読み解くのはピントがずれており、自己責任が適用される主な2つの要件、①完全に自由意思で選択ができる(強制力が働かない)・②選択の材料となるリスクが十分に開示されている、のうちの①を満たさないにも拘らず、少なからぬ人が様々な形で望まぬ運転を強いられているという車社会の罪過こそ追及されるべきなのですが…。これもまた、民主主義の貫徹が招いた不幸な話のひとつなのでした──少なくとも今日(こんにち)までは。


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 駅東口はコンベンションセンターの「ライトキューブ宇都宮」を核とした再開発地区。前回訪れた時には後に予定地となる更地に餃子の店と駐車場があっただけなので足を向けすらしなかったのですが、LRTにしろこちらにしろ、9年というのはプロジェクトが動き出して形になるまでは十分すぎる歳月です。


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 最後に実見を終えての雑感。公共交通を日常的に利用するという習慣がビルトインされていない、利用するにしても精々高校3年間だけというのも珍しくない地方においては、幾らLRTの利点を説いたところでまずそういったシーンを想像すること自体が途轍もなく高いハードルだということが想像に難くないだけに、こうして実現に漕ぎ着けた関係者各位の努力には誠に頭が下がる思いです。下工作なしで民意に諮ったところで現状維持となる可能性が極めて高いのは火を見るよりも明らかですし、多少の強引さ(市長が再選されてすぐに整備費の増加が公表される、など)もリーダーシップのうちと考えるのはテツの欲目でしょうかね。宇都宮駅西側への延伸も現時点では決定事項ではありませんが、効果に懐疑的、或いは明確に反対という意見も当然あるとして、先行開通区間の有用性が認知されていくという「実績」でもって、次のステップの難易度はぐっと下がるはずです。宇都宮の場合は路線の両端に極がある双方向輸送という特殊ケースなので他都市のリファレンスとなるかどうかは一考の余地があるものの、これまでは文化や都市構造の異なる国外にロールモデルを求めるしかなかったところに富山・宇都宮、そう遠くない時期にはここに岡山が加わり、少なくとも議論に関しては弾みがつくのではと楽観的に期待しています。それにしても惨憺たるBRT界隈とは対照的に宇都宮が真面目に・本気でLRT整備に取り組んでいるというのは前々から仄聞していたものの、ローンチ段階からここまで高水準のシステムに仕上げてくるとは只々感心しきり。有り体に申せば最後発のLRTとしてデザイン関連を除けば何も目新しい要素は無いのですが、その“猿真似”すら敵わないのがこれまでの本邦だったわけで。もし松下幸之助が存命ならば、「ええもんつくりはりましたなぁ」と称賛していたことでしょう(知らんけど!)。一番のサプライズは諸外国のセオリーをあっさりと飛び越え、ここまで利用者を信用しきった信用乗車方式でもって運用されていることでしょうね。地域交通の維持・発展は行政/オペレーター/市民の協働なくして成り立ちませんが、互いにリスペクトを欠かさない、幸福な関係を末永く築いていけるよう願っております。さ、ライトラインだけでなく旅そのものも実に楽しかったので、気分良く帰りましょう。また10時間以上掛けてね(笑)。三度目こそはオリオン通りと二荒山神社と大谷資料館に立ち寄りたいものです。




 19時28分発の電車にも間に合いましたが、予定通りに19時37分発の上野東京ライン普通小田原行きに乗車。往路と同じ2号車に陣取りますが、先行列車の露払いのお蔭か下車駅の大宮までボックス独占という閑散ぶりで、車内環境の点ではまずは快適でした。E233系ということでシートの座面が柔らかくなってはいるものの、やはり基本はE231系と同様の何かとやかましい安普請です。この輸送クオリティの分際でまた運賃を値上げですってよ奥さん。通路を隔てた隣のボックスには、乗り慣れたおじさんが500ml缶のビールを2本持ち込んで着席。小山あたりで入れ替わったおじさんもまた500ml缶のビールを持ち込んでおり、これは様式美なのでしょうか。車両は代替わりしても、ここらではまだまだ汽車→列車文化が息づいているのかもしれませんね。


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 小金井で10両→15両への増結のために5分停車しましたが、その時間を引けば大宮までの79.2kmを1時間15分、表定速度は63.4km/hと、各駅停車ながらも「列車」らしくなかなかの俊足。因みに新幹線ならば25~30分ですが、速達性のその前に宇都宮線が平常運転でなければこちらに乗り換えられるという安心感がまず第一にあります。というか、バックアップルートがなければ輸送障害が頻発する首都圏の電車なんて怖くて乗ってられないという。例えスケジュール通りに動いていたとしても、やはり桁が違う人の流れ(おまけに目が死んでいる)や殺す気満々のスピードでホームへ飛び込んでくる電車など、関西人が偶に乗るこちらの電車は何かと心拍数を上げる要素が満載です。


 二度のてっぱく訪問で馴染みのある大宮駅は、今日のところは通り過ぎるのみ。ここでは夜行バスを降りたことはあるものの、乗り込むのは今夜が初めてです。電車との乗り換えはコンパクトな久喜駅の方が楽ではありますね。乗車便は21時35分発、「JAMJAMライナー」JX281便。ブランド名ですがバス停やバス車体のイラストによれば、パンに塗るやつではなく音楽の即興演奏の方から来ているようです。


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 今度のバスはトイレつきの4列足元ゆったりタイプ。始発時点でそれなりの乗車率だったので、車内の写真はありません。前後間隔は3列タイプに準じるものの横方向の占有幅が狭いということになりますが、座席周りの設備に関しては素足用フットレスト・レッグレストを筆頭に目隠しカーテン以外は3列タイプと同等のものを装備。恐らくリクライニング角度も同じと思われ、往路には無かった可動式の枕もこちらにはちゃんと付いていました。もちろん居住性まで同等というわけにはいかないものの、運賃が3,200円(※変動制)と往路の3列シート車の7割なので、余程ソフト面で酷い目に遭わぬ限りは許容できない理由がないという水準です。シートポケットにはアメニティのアイマスク・使い捨てスリッパも。当便も座席の事前リクエストは不可で、自動的に前方右窓側の3Dへアサイン。夜行なので窓側のメリットは何もありませんが、真後ろがトイレで座席のリクライニングが自由というのは嬉しいですね。隣席は始発の大宮から埋まりましたが、気配りをしてくれる方なのでこちらも助かりました。今回は販売価格が格安だったので若くはないのに4列シート車を選んでみたものの、飛行機のプレエコには並ぶであろうとはいえやはり3列シートとは歴然とした差があるので、夜行ではこれが最後かなと。


 出発後、東京駅丸ノ内鍛冶橋駐車場(22時40分発)を過ぎるまでは順調に来ましたが、首都高羽田線上で渋滞に巻き込まれ、次の横浜駅東口スカイビル(YCAT)前(23時40分発;関東側最後の停車地)へは約30分遅れての到着となりました。午後5時45分頃に川崎市内の首都高湾岸線で「また」死亡事故があり、通行止めとなっているためにこちらへトラフィックが集中した影響というわけです。今朝の首都高池袋線の件といい、私にとっては幸福な一日であった傍ら、こちら方面は呪われた日になってしまったようでして。合掌……


 横浜を出てしばらくすると消灯となります。シートは枕有り・全面モケット張りなので滑らない・腰の痛みは今回は無し、とここまではいいのですが、やっぱりブランケットは必需品。というより外気温が夜になって下がっているにも拘らず暖房ではなく冷房がかかっていて、特に足の方が寒くて寝付けない…… 体感は人それぞれとはいえ流石にこれは非常識に片足を突っ込んでいるでしょうし、乗務員に訴えるべきだったのだろうか?と今になって思い返しています。ともかく横になっている間に帰れるのだしと、我を苛むものは違えど往路と同じようなことを一晩中考えておりました。


 トイレつき車両ということでSAでの休憩を一部削ったため、南草津(5時45分着)到着時には時間通りに。そして下車地の梅田プラザモータープールにも7時00分の定刻に到着しました。ここは下車したらすぐに敷地外への退出を促されるために、バスの近くで撮影など以ての外です。やれやれ。なお、バスはこのまま難波とUSJへ向かいます。


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▲ちょっと離れて。中央が乗ってきたバスです


 朝の阪急宝塚線下り急行で風呂が待つ我が家へ。別にこの土地に大して愛着など無いとはいえ、やはり関東は遊びに行くところで住むところではないなぁと、たおやかに走る関西の電車の中でまた一つその思いが強まるのでありました。

14日の歩数カウント:20,182歩

<完>

(2024.05.14~15)

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