24/10/18 (4)観光特急あをによし その1【エクステリア・インテリア編】
発車30分前に京都駅の改札を通ってホームへ。この時点で2番ホームの先発列車はもう16時20分発の「あをによし」になっています。同乗するお客さんも少なからず到着しており、2番ホームのベンチは既にいっぱい。最早意外性は無いものの、インバウンド客が過半数に達しようかという割合です。私はスタンダードに近鉄公式のオンライン予約サイトにて購入したのですが、彼らはどういった販売チャネルを用いているのでしょうね。列車名は漢字交じりでは「青丹よし」と表記する古文の枕詞ですが(例:青丹よし奈良の都)、小説・ドラマで「鹿男あをによし」という作品もありましたし、一般的にもかなり浸透しているワードかと思います。


チケットレス特急券の画像はこちら↓。近鉄の観光特急の例に漏れずアフォーダブルなのですが、やはりハードルとなるのが入手難度です。京都~近鉄奈良間(約35分)で完結する運用に関しては一日3往復設定されているのでこちらはそれほどでもないものの、1時間以上ガッツリ楽しめる大阪難波~近鉄奈良~京都間の列車は1往復しかなく、難易度は段違い。運行開始から2年半経っているので、乗車日1か月前の10時30分打ちならばすんなり取れる雰囲気ではあるものの、遠隔地ならばともかくこんな近場では1か月も待つ気にはならないし… 今回は「Japan Railway Journal」で特集されていたのを観たのがきっかけでふと思い立ち予約サイトをチェックしたところ、5日後の大阪難波行き列車のツインシートにキャンセルで1セット(※2席セットで販売)のみ空きが出ており、かつスケジュールも塞がっていなかったので即ポチした次第です。特急料金の内訳ですが、大阪難波~京都間の営業キロは63.0kmなので41-80km・920円(大人料金)の区分に含まれるものの、近鉄奈良をまたいでの乗車の場合は「京阪奈あをによし割引」が適用され、790円に。「あをによし」には一人用のシートは設置されていないので小児料金を追加で支払ってツインシートをシングルユースする形式になり、大人1人・小児1人分の特急料金1,190円+デラックスシート料金320円で合計1,510円というお勘定になります。後述しますがレギュラーシート4席分のスペースを独占できるうえ、当然ながら運賃は大人1人分でOKですので、JR・三セク系の観光列車と比較すれば遥かに納得感のあるお値段かと感じました。

16時05分、近鉄奈良始発の第7便が到着。特急券の入手自体もハードルですが、一番のそれはやはり輸送障害でしょうね。先刻のPRiVACE初乗りと同様、運転見合わせならば迂回ルートで…とはいかないもので。この時間は大阪線の上り線で遅延が発生していたものの、乗車列車の経路上は平常運転。無事に姿を見せた車両に安堵です。この後は僅か15分の折り返し時間のあいだに車内整備を実施。(近鉄流の)ラグジュアリー・トレインではありますが、その一方で運用についてはLCCの機材を彷彿とさせる馬車馬っぷりです。


南大阪線・吉野線の観光特急「青の交響曲」はオールロングシートかつロートルな通勤型電車を全車デラックスカーに生まれ変わらせた魔改造ぶりが注目されましたが、こちらは同様の方針ながらも種車はあくまで特急型電車。形式は「あをによし」への改造に際して12200系から19200系へ変更されています。4両全体での定員は84名(車いす席は除く)。1・3・4号車の窓や折り戸は種車のものを引き続き使っていますが、非貫通化された先頭車・超大型化された2号車サロンシートの窓や移設されたドアの引き戸など、パッと見ただけでも変更点は少なくありません。デザインは来年で落成50周年を迎える古い車両をよくここまで…と驚嘆に値する、相変わらずの一級品。青の交響曲と同じく初乗車イコール初見なのですが、その前に駅で偶然目にしたならば、これは絶対に乗りたくなりますね。
エンブレムは「吉祥文様 花喰鳥(きっしょうもんよう はなくいどり)」。
めでたいことが起こる前兆とされる鳥、瑞鳥(ずいちょう)が花枝などをくわえたあしらいで、
正倉院御物や種々の工芸品にも縁起のよい文様として使われています。
車両は「奈良の和」の美しさ、尊さを表現したデザイン。
内外装には、正倉院宝物にも使われていた、天平文様をイメージした柄や色使いをふんだんに使用。
外装のカラーは天平時代に高貴な色とされた紫色をあしらっています。
(近鉄「あをによし」公式サイトから引用)









16時12分、乗車開始。まだ誰も居ない車内を素早くカメラに収めておきます。まずはこれからの1時間余りを過ごす3号車の全景から。変則的なレイアウトながら、近鉄特急最上位クラスである「しまかぜ」「ひのとり」のプレミアムシートすら及ばない、1+1の2アブレストで座席が設置されています。床はもちろん全面ふわふわのカーペット敷き。これからの季節は静電気にご用心。


片側はオーソドックスに2席を向かい合わせに配置した区画。

そして今回確保した4C・4D席は、同じ向かい合わせでも窓側へ45度傾けてカウンター状に配置している区画。当然ながらこちらの方が人気が高く、空いていた2席がこちら側というのも幸運のうちでした。シートピッチの平均はレギュラーシート(普通席)と同一ながらも8席分のスペースに4席しか配置していないので、単位面積当たりの定員は半分。更にシングルユースの場合はレギュラーシート4席分を占拠できるため、920円(※京阪奈あをによし割引非適用と仮定)の1.6倍で得られるバリューとしてはひとまず鬼コスパでしょう。肝心のシートの座り心地についてはその2・行程編にて。




自席に着いてしばらくすると、「この列車の特急券はすべて売り切れとなっております」と車内放送が。以前に「青の交響曲」で吉野から帰る際、満席にも拘らず使えない席が出てラウンジに避難させられるという“悲劇”に見舞われた乗客がいたっけな、とまたしても思い返していました(→当時の記事)。……いや、実際のところ、斯様に思い出話だけで終わればまだいいものを……(下の写真)

悲劇ふたたび。それも自席と通路を挟んで隣の4A・4Bが。一見するとこぼした飲み物で座席がびっしょりという感じではないようでしたが、かといって他に原因も思い浮かばないですしね。流石に3回中2回も遭遇すればレアケースとは思えなくなりますし、当記事をご覧の皆様も晴れてご乗車の折には、一種の「義務」として不幸の連鎖の防止にご協力を! しかし当列車には青の交響曲のようなラウンジスペースはないわけで、この席のヌシはどうなったのか…?
京阪間はともかくとして短い京奈間の乗車ではスマホをつっついている暇なんてありませんが、テーブルの下にはモバイル機器用コンセントも用意されていました。

天井周り。客室の隅々まで天平スタイルで一切の隙がありません。それだけに阪急PRiVACEの残念さが際立つわけですが。


また、客室端には大型荷物置き場も設置されており、インバウンド客の比率が高いために有効活用されていました。
こちら↓は隣の2号車にある販売カウンターです。基本の乗車時間が約35分と短いためにフード・スイーツメニューは青の交響曲よりも更に簡略化されており、一押し商品は定期的にフレーバーの変わるシェラトン都ホテル大阪製造のバターサンド。本日最終便の第8便、しかも要冷蔵品ということでひょっとして売り切れているのでは…?という可能性も考えていたのですが。杞憂も杞憂、紫芋のモンブランと共に冷蔵ケース内にぎっしりと並んでいるのでありました(写真左端)。結果としてはこうなりましたが、今回はこちらはアテにせずに前エントリーで書いた京都北山マールブランシュのスイーツを持ち込んでいますので、冷やかしもといアテンダントさんのスマイル0円のみで販売カウンターを後にしました。なおラウンジスペースは設置されていないので、飲食は必ず自席で行う形。というよりもアコモデーションからして編成そのものがラウンジという印象でした。

ミニマリストゆえ蒐集趣味はないものの、こちらで配布しているポストカードサイズの記念乗車証(切手を貼って葉書としても使えます)は抜かりなくゲットです。

その他、2号車の半室には3~4名用のサロンシート、反対側の4号車運転室側車端にはライブラリースペースがあるのですが、満席なので前者の写真撮影は憚られますし、そもそも必要以上に車内を徘徊するのは他のお客さんの静粛を乱すわけなので、今回の行動範囲は3号車のトイレ~販売カウンターのみとなりました。ちなみにサロンシートはセミコンパートメントタイプで、ツインシートよりも更に一人あたりの占有スペースが広くなっています。これでも料金はツインシートと同額。JR・三セク系の観光列車ならばナンボ取られることやら…?
その行動範囲のもう一方の端。デッキ・洗面所はともかくトイレの個室なんて普段は態々撮影しないのですが、まあトイレに立ったついでということで。海外の列車のレビューをYouTubeで視聴していると、この綺麗さが決して当たり前ではないということがよく分かるわけですが……設備というよりも乗客の使い方の問題で。




車両全体の印象をまとめたところで、続きは行程編へ譲ります。
〔関連記事〕
観光特急青の交響曲 その1・その2・その3・その4
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