24/10/28 (4)万葉線・往路1of2【高岡駅→米島口】
まずは射水(いみず)市新湊エリアの散策のスタート地点でもある万葉線の終点・越ノ潟(こしのかた)まで一気に乗り潰してしまいます。線名および運営会社名の由来は万葉集の編纂者として知られる大伴家持が746(天平18)年に越中守として赴任し、その国府所在地が沿線の伏木だったために沿線一帯の地名・風景が万葉集に多く詠まれており万葉の里と称されていることからですが、この万葉線という名称は加越能鉄道から三セク方式として経営を引き継ぐ2002年の遙か以前、1980年には既に愛称として制定されていたとのことです。
駅のある地上階へ下りて駅前広場越しに線路の先を見渡すと、乗車する電車が向かってくるところ。ここからしばらくは意外にも単線区間となっています。富山港線も併用軌道区間を含めてほぼ全線が単線ではあるものの、こちらは中心市街地(現状では“元”付きかもしれませんが…)を貫く区間ですのでね。長距離移動の間に一旦は降り止んでいた雨は本格的ではないもののまた戻ってきていますが、天気予報によるとこれから回復傾向とのことなので、あまりがっかりすることなく鷹揚に構えることにしましょう。
以前は駅前広場の一角にのりばを構えていましたが、2014年に新築のステーションビル内へと移設され、その際に停留場名が高岡駅前から高岡駅へ改称されています。うーん、キレイな駅ビルではあるんですが……というモヤっとしたお話は5年前の記事にて触れた通り。
万葉線は朝晩を除けば15分間隔の全線通し運転が基本。予定通りに9時30分発の電車に乗ることが出来ましたが、通常ならば「ドラえもんトラム」(*注)で運行される便(水曜は一般車両で代走)ながらも本日は点検期間中のためにお休みとなっています。観光ではオフシーズンの真っ只中ですので仕方がないですよね。お蔭できょう一日は何処へ行っても本当に人が少なかったので、その方がずっと有難いです。
*注:高岡市は藤子・F・不二雄こと藤本弘氏の出身地。
ドラえもんトラムではありませんがセミクロスシートのMLRV1000形「アイトラム」ですので、車窓重視の乗り鉄としては文句なしの満点。なお、こちらのアイも元JR線の三セクと同様にあいの風から採られているそうです。春から夏にかけて海から吹く穏やかな風のことらしいですね、名門列車の愛称として有名な南仏のミストラルは暴風だそうですが。
車内はこちら。同時期に投入されたポートラムの兄弟車と呼んで差し支えないでしょう。富山地方鉄道発行のecomyca(えこまいか)は万葉線では非対応ですが、9月28日に交通系ICカード(全国相互利用対応)が導入されたばかりで、全線均一の富山港線と異なり運賃は200円~400円の5段階制のために乗車扉横にはカードリーダーと整理券発行機が並んでいるのが特徴です。ICカードの利用促進キャンペーンとして、2025年3月31日まではICカードで運賃を支払うと10%引き(端数切り上げ)に。万葉線では一日乗車券も発売されていますが、今回は折角のキャンペーンなのでこれに合わせてやや歩行距離は長くなるものの2区間の乗車で済む周遊コースを作成してきているため、ICOCAで乗車することにします。この界隈、10カード系が普及する一方かと思いきや熊本に代表されるように逆行する例が出現するわ、世界の潮流としてオープンループが参戦してくるわで、情勢はなかなか複雑です。カードへのチャージはJR・あいの風とやま鉄道の駅やコンビニでお願いしますとのことですが(車内の運賃箱では不可?)、コンビニのほかにもセブン銀行・ローソン銀行のATMはそこら中にありますし、今後シェアが増えるであろうモバイル版のICOCA(やSuica・PASMO)ならばオンラインチャージを使えばいいだけなので、機器投資と利便性のバランスに関してはそれを見越しての対応と理解できます。
路線図です。高岡市と旧新湊市(2005年に周辺4町村と合併して現在は射水市の一地区)を結ぶインターアーバン型の路線で、全25駅・12.9kmという規模は宇都宮ライトレール(現行の営業区間で14.6km)に匹敵するほど。ネーミングライツを導入している駅・停留所が多いために長い名前が目立ち、縮小写真では文字がつぶれてしまっていますが。
データイムに入った時間帯の下り電車というわけで、各ボックスに一人いるかどうか位の乗り具合で高岡駅を出発。前記の通り、5つ先の広小路停留場までは単線区間となります。高岡市内で今日訪れたのはここから北にある町並み保存地区の山町筋・金屋町のみで中心市街地を歩く時間は取れませんでしたが、車窓から眺めるだけで様子はざっくり掴めそうでしたね。あまりポジティブではない意味で。
片原町停留場の手前で右折。ここからは3.7km先の米島口まで大通りを道なりに進んでいきます。この片原町にて最初の列車交換。安全地帯のない、地面に水色でペイントしただけの作りでした。この構造の停留場、令和の時代になっても岡山や広島など未だメジャーな路線にも残存していますが、やはり見慣れないだけあって毎回ギョッとさせられます。
広小路~米島口間は複線区間となり、原則15分間隔とそれなりの高頻度運転ということもあって路面電車そのものの風景に。信号に引っ掛からなければ最高速度40km/hで快走できるとはいえ、他車の動きには相当神経を使って進んでいる模様でした。沿道の施設へ軌道を横切って入る右折車は勿論ですが、どうやら交差点でも路面電車の直進と自動車の右折が分離されていない信号が多いようで。いちドライバーとして心労お察しいたします…。
9時53分、2分ほど遅れて米島口に到着です。万葉線本社と車庫が置かれており、ここを境に市街地の密度が大きく変わるために路線の性格も連動して変化。始発駅の時点でゆとりのある(ゆとりだらけの)乗車率だったとはいえ、全体の3分の2を残して車内は一気に閑散としてしまいました。
今年の5・6月、軌道線の新設路線としては国内では75年ぶりに開業(開業日は2023年8月26日)した宇都宮ライトレール(ライトライン)の乗車レポートをアップしましたが、誰しも気になるそれまでは「最新」だった路線は何処かというと正にいま乗車している、1948年の開業当時は富山地方鉄道が運営していた地鉄高岡(現在の高岡駅)~伏木港間を結ぶ高岡軌道線がそれ(※現在も正式名称はこちら)。開通の3年後に米島口から同線の支線として現有の路線の一部をなす区間が分岐するようになり、1971年には米島口~伏木港間が廃止に。この時点で現在の一本道の路線形態となっています。しかし75年て。既設路線の延伸分はカウントされていないとはいえ、モータリゼーションも到来していない頃からそこまで滞るものですかね…。
ここで一旦分割し、往路編の後半へ続きます。
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