24/10/29 (6)富山地方鉄道本線 その4/立山線 その1【新魚津→寺田→立山】
新魚津13時25分発の普通電鉄富山行きに乗車。富山地鉄の一番の面白さは固定運用の便でない限り種別に関わらず全ての所属車両が使われる可能性のあるランダム性というわけで、元東急車が来ないことをお祈りしながら3回目の抽選に臨みます。その結果は──
もしかすると全候補の中で最も意外だったかもしれない、10030形第2編成。朝に電鉄富山から宇奈月温泉まで乗車した編成です。あれから電鉄富山まで往復してまた上り列車として戻って来られるほどの時間は無いはずなので時刻表から推測してみたところ、宇奈月温泉到着後は特急くろべ号として小金を稼ぎつつ電鉄黒部まで往復し、そのあとこの便になった模様。
というわけで機嫌よく往路とは逆の窓側席へ着席。下1枚目の写真はこれも立山連峰から下ってくる川のうちの一本である早月川を渡るところです。写真には撮っていませんが中加積(なかかづみ)駅付近から東を遠望するとなだらかな丘に田畑が広がりそこへ家が点在するという風景があり、上からは富山湾を背景に札幌の羊ヶ丘展望台を更にダイナミックにしたような展望が楽しめるっぽいです。一度訪ねてみたいものですが、ここは流石に車がないと無理でしょうね。
14時02分、寺田着。アルペンルート開通期間中の土日祝日のみ、宇奈月温泉から立山へ直通する特急アルペン号が運転されていますが、基本的には当駅で乗り継ぎとなります。電鉄富山方面から来るとV字型に分岐した先に本線・立山線の各ホームが設置されており、宇奈月温泉方面⇔立山方面を直通する列車は構内電鉄富山方の本線上にてスイッチバックを行うという形になります。今回の接続時間は7分。観光利用(といっても私だけ)の他に高齢者のみですが日常利用での乗り継ぎも数名ありました。駅施設は半世紀以上、下手すれば1世紀近く前から時間を止めたかのような迫力に息を呑むほどで、短い接続時間はほぼ全てを写真撮影に費やすことに。タイムカプセルみたいと無邪気に喜ぶか、高い運賃を徴収しながら設備更新が滞っている現状に心中穏やかならぬものがあるか…… 立場によって心情は180度に近いほどの違いがありそうです。
駅構内は立山線のみ右側通行という変則的な配線。入線してきた14時09分発の普通立山行きは「富山もようトレイン」仕様の14760形2両編成(14769+14770)でした。アルペンルートへ向かうにはもう遅すぎる時間帯のために観光客の方は多くはないですが、それでもそれなりに居るのは少々想定外。車内の写真はまた後ほど貼ります。
ポツポツ主要駅のある本線に対し、こちらは生活路線としては立山町の中心部に位置する五百石(ごひゃくこく;特急停車駅)がまとまった数で、加えてその南隣の榎町(えのきまち)及び不二越・上滝線の分岐駅でもある岩峅寺(いわくらじ)の利用が一定数ある程度。車窓も平野部に関しては見どころには乏しいものの、寺田~岩峅寺間は立山からの帰りには通過しないので真面目に眺めておきます。
岩峅寺の次、横江を過ぎた辺りからは常願寺川の渓谷へ。急曲線と急勾配を交えながら約10kmの区間を20分余りかけてそろそろと進む、本格的な山岳区間となります。勾配については検索一発では出てこなかったので(AIも出鱈目な回答をよく寄こしますし)、2012年1月に立山駅構内にて発生した列車火災事故の運輸安全委員会による報告書から引用してみると、25~30パーミル程度とのことです。川とは絡み合うとは言わないまでも、途中には2ヶ所の橋梁が。そのうちの一つが前々回のエントリーにて言及した千垣~有峰口間に架かるアーチ橋・千垣橋梁で、超望遠レンズで電車と立山連峰を同時に収める構図と並ぶ、富山地鉄のハイライトシーンになっています。
常願寺川は標高約3000mの源流から河口まで僅か56kmで一気に流れ落ちる、四万十川とは対極ともいえる国内はもとより世界でも屈指の急流。治水・砂防事業には現在に至るまで莫大なリソースが注がれ続けており、その土木関連施設は車窓にも度々現れます。
上記の通り電車のスピードは上がりませんが、こちらの路線にもJR西日本681系がデビューから間もない頃に<スーパー雷鳥立山(サンダーバード)>名義にて入線したという履歴が。極端な勾配区間でこそないものの、最高160km/hの高速走行にフォーカスした性能だけに無理の大きい乗り入れだったようです。この急カーブが連続する区間ながらも先頭車の車長は21mを超えていますし(※富山地鉄鉄道線の現有車両は19~20m級)、一度くらいは「無茶しやがって…」とか呟きながら車上の人になってみたかったもので。
芦峅寺地区への最寄り駅である千垣(この電車からも若年者の下車客あり)、立山町から富山市へ一時入って小見地区の中心駅かつ特急停車駅でもある有峰口、立山にもなるとというわけで山岳信仰の香りぷんぷんの本宮と経由し、二度目の常願寺川渡河と同時に立山町へ戻るとすぐに終点立山へ到着。時刻は14時54分、天候がかなり悪化してきたため、日没までまだ2時間を残して既に薄暗さも感じます。
3面2線の頭端式構造である立山駅ホーム。根元側は屋内にあり、山岳リゾートつながりでマッターホルン・ゴッタルド鉄道のツェルマット駅を狭くかつ陰気にしたような印象です。disる意図はないものの、興が削がれる感じは否めないところ。
階段を上がったところが立山ケーブルカーの乗り場。アルペンルートではこの区間が一番のボトルネックということで、乗車券は時間予約制になっています。繁忙期にはケーブルカーをスキップして直接立山有料道路へ出入りするバスが救援に入るほどで、輸送能力に関してはやはり連結運転が可能なラックレール式の登山鉄道に分があるところ。高原の数ヶ所に設置されたライブカメラの映像を見てみると、意外にも山上は視界が良いみたいです。とはいえ山のセオリーとしては可能な限り午前中に訪れるべきですし、そうなると黒部宇奈月キャニオンルートを辿るのならば室堂へ早い時間に入れる立山IN・宇奈月温泉OUTがベストだろうなと、皮算用だけは周到に行っておくことにしましょう。交通路そのものに着目すると、今シーズン限りで室堂~大観峰間のトロリーバスが廃止になり(来シーズンからは電気バスへ置き換え;扇沢~黒部ダム間は2019年に置き換え済み)、同時に日本国内からトロリーバスの営業路線が消滅するという出来事がある特別な年でもあります。
駅前広場へ出てみれば、周囲は予想以上に垢抜けた雰囲気です。アルペンルートへの出入りの比率でいえば当然自家用車や観光バスが発着するこちらがメインエントランスで、地鉄の駅は勝手口。それならばあの陰気さにも納得? 標高は475mまで上がってきたため、先刻の宇奈月温泉と比べると心なしかですが紅葉も進んでいる模様です。インバウンド☆パラダイスであるのは黒部峡谷鉄道の宇奈月駅と同様。
歩いてすぐの場所にある『富山県 立山カルデラ砂防博物館』。いじらしくも立山へ爪痕を残すべくここで1時間弱の見学時間を取るつもりでいたのですが、復路の電車を一本前倒しにして5年前は未訪問だった富山市の繁華街・総曲輪(そうがわ)エリアをじっくり歩いてみるのもいいな、ということで予定を変更することに。帰りの新幹線が富山19時36分発なので、山を下りた後もそれほどゆとりがあるわけではないですから。
というわけで滞在時間33分で立山駅を後にすることに。雨もポツリポツリと来ているので、さっさと建物の中へ戻りましょう。(続く)
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